尖閣問題とマスコミ

10/2付CNNよりと言いたいのですが、英文なので私が拙い翻訳を付けておきます。

Anti-China protesters gathered Saturday in Tokyo and six other major cities in Japan to rally against what it calls an invasion of disputed islands that both claim are part of their territories.

    反中国のデモ参加者は、東京とその他の6大都市に土曜日に集まり、領有権の紛争の渦中にある島への侵入に対して抗議のデモを行いました。
Protesters held up Japanese flags and chanted, "We will not allow Communist China to invade our territory."
    デモ参加者は国旗を振りかざし、「我々は我々の領土への中国の侵入を許さない」とシュプレヒコールをあげました。
Beijing says the Diaoyu Islands and most of the South China Sea belong to China, disputing neighboring countries' claims. In Japan, the islands are known as the Senkaku.
    中国は南シナ海の大部分と釣魚島に対して領有権を近隣の国々に主張しています。日本では尖閣諸島として知られている島です。
The rally was organized by Toshio Tamogami, a former Japanese chief of staff for the Self Defense Force.Japan rejects China's demand for an apology
    日本は中国からの謝罪要求を拒否します。
"Senkaku Islands is Japan's traditional territory," Tamogami said. "If we don't protect it, China will make action to take it."
    尖閣諸島は日本の固有領土です」と田母神氏は語ります。「もし我々が守らなければ、中国はこれを取り上げてしまうでしょう」
Tamogami called China a "thief" and vowed to protect the islands.
    田母神氏は中国を「泥棒」と呼び、島を守ると誓っています。
Beijing and Tokyo have been clashing over the arrest of a Chinese fishing captain by Japan off the disputed islands.
    北京と東京は紛争地の島での中国漁船の船長の逮捕について衝突しています。
The captain was accused of hitting two Japanese coast guard ships and obstructing public officers while they performed their duties
    中国漁船の船長は日本の巡視船に故意に衝突したとして逮捕されています。
"I am very angry with China," said student Shohei Fukumoto.
    学生のShohei Fukumotoは「中国に強い怒りがあると」話しています。
China should apologize and pay for the repair of the vessel because the captain was in Japan's territory when the accident happened, according to Fukumoto.
    Fukumotoによると事故が起こったのは日本の領海であり、船の修理代は中国が払うべきものであるとしています。
Japan has since freed the fishing captain, who returned to a hero's welcome in China.
    日本は漁船の船長を解放しましたが、船長は中国で英雄として迎えられています。
Yoko Sakamoto, 55, said Japan has been too easy on China.
    Yoko sakamoto(55)は、日本は中国に弱腰すぎるとしています。
"I 'd like to criticize Japanese government's weak attitude toward China and Senkaku Islands issue, rather than China itself," Sakamoto said. "We should get our national pride back."
    「私は中国政府より、中国と尖閣諸島問題に対する日本政府の態度の情けなさを批判します。」「私たちは日本の国としての誇りを取る戻すべきです」とSakamotoは言いました。
The captain's arrest prompted the suspension of diplomatic talks and canceled trips between the nations.
    船長逮捕は両国間の旅行や、外交交渉を停滞状態に追いこんでいます。
Beijing has sought an apology and compensation over the arrest, which Tokyo has rejected.
    北京は謝罪と賠償を要求していますが、東京はこれを拒絶しています。
Japan has also demanded compensation for damage done to coast guard ships.
    日本は逆に巡視船の損害賠償を要求しています。

訳の拙いところは適当に脳内補正してください。と思ったらCNN日本語版に日本語記事もありました。

尖閣諸島沖での中国漁船衝突事件をめぐり、日本では東京など7都市で2日、中国に対する抗議デモが行われた。

参加者らは日の丸を掲げ、「中国の領海侵犯を許さない」などと主張した。

デモを主催した田母神俊雄・元航空幕僚長は、尖閣諸島は日本固有の領土だとの立場から、日本が防衛しなければ中国はこれを取り上げる行動に出ると述べ、中国側を非難した。デモに参加したある男子学生は中国への強い怒りを示し、衝突で破損した日本の巡視船の修理費用は中国側が支払うべきだと語った。一方、55歳の女性参加者は、中国よりも日本政府の「弱腰」外交を批判したいと話し、「私たちは国としての誇りを取り戻すべきだ」と主張した。

事件では、日本が逮捕した中国人船長を釈放したが、中国側は日本に謝罪と補償を要求。日本側はこれを拒否している。日中関係の悪化は政府間外交や民間交流、観光の分野にも及んでいる。

でもってどの程度の規模のデモが行われたかですが、

早いもので動画もアップされていまして、

たぶん主催者側の発表だとは思うのですが、東京では渋谷で行われ、デモの参加者は2500人とも2600人ともなっています。主催者側発表の水増し分を差し引いても1000人以上は少なくとも参加したとは考えられます。


尖閣問題は有名なので解説も可能な限り簡潔にしますが、日本の領海に不法侵入し、なおかつ巡視船に体当たりを行った中国漁船に対し、海上保安庁は乗組員を逮捕します。これについて中国は尖閣諸島は中国領土であるから乗組員の即刻解放と、賠償と謝罪を傲然と要求します。民主党政権那覇地検が「勝手に釈放した」としてウヤムヤ決着を目指して奮闘中ぐらいの解説で十分と思います。

この件について、さすがに怒っている方は多数おられます。ごく素直にチンピラ・ヤクザの因縁つけとレベルが変わらないと感じるからだと思います。この調子では沖縄も恐喝されて取り上げらるの話までは置いとく(これも中国は主張中)としても、なかなか寛大に笑って許そうとはなりにくい問題であるのは確かです。

民衆レベルでも怒りがたまってますから、デモぐらい起きても不思議はありませんし、現実にデモがかなり大規模に起こっています。中国のチンピラ因縁つけ姿勢の解釈は様々にあるにせよ、尖閣問題は重要な問題ですから、このデモの報道価値は十分にあるとは思います。ところがですが、日本のマスコミは見事にほぼ黙殺されています。

これだけの大問題に対するこれほどの規模のデモをほぼ1社も報じない理由を考えると、

  1. 日本のマスコミは1社たりとも報道価値があるとは認めなかった
  2. 日本のマスコミに対し誰かが報道規制を要請した
a.であれば正直なところマスコミの見識も地にめり込んだ(地層処分レベルかな?)としても良いかと思います。デモ報道をどう論評するかは様々な見解も存在するかもしれませんが、デモのあった事実さえ報道の価値なしと判断するようであれば、もう何をかいわんや状態です。

b.であればどうかです。そんな芸当が出来る権力機関は日本では政府だけです。その要請を唯々諾々と受け入れた事になります。これもまた素晴らしい対応で、報道管制の存在を日本中にアナウンスしているのと同じです。つまり「我々、記者クラブのメンバーは御用報道機関であります」と。あくまでも個人的な見解ですが、足並みのそろい方の見事さから政府による報道管制の可能性の方が高そうに感じています。


ただなんですが国益を守るための外交であるなら、広い意味での報道管制もアリとは考えています。国益が濃厚に絡む外交は内政の具にしないのが議会政治の暗黙の原則とは聞いたことがあります。そこは理解するとして、それでも報道管制であるなら一種の超法規的措置です。平成の日本では自主的な報道協定(誘拐事件とか)はあっても、報道管制は存在しません。

ある種の禁じ手を用いるからには、それだけのメリットをもたらさないといけません。先ほど政治的には内政の具にしないとの暗黙の原則とはしましたが、世論レベルは暗黙の原則には従いません。例えとして悪いかもしれませんが、日露戦争の講和条件では焼き討ち事件まで起こる暴動が引き起こされています。議会的には野党は協力姿勢を示しても、民衆の怒りをコントロールするのは政府与党の役割になります。

デモ報道は確かに諸刃の劔の部分はあるとは思います。報道をテコに民衆の怒りを伝えるのも一つです。もちろんデモ報道に対して、中国がさらに反応して泥沼状態になる危険性もあります。その上での政治的判断が必要ですが、首都東京のど真ん中で起こった大規模デモを基本的に情報管制は不可能です。現に国内メディアは抑えても海外メディアが全世界に発信しています。

そういう頭隠して尻隠さずの報道管制にどれだけの意味があるのか疑問です。あくまでも個人的な感触ですが、政府は大きな外交方針というか外交戦略の一環として今回の報道管制を行ったとは思いにくいところがあります。もっと短期の狭い視野での「人の噂も75日作戦」の姑息的対応に見えて仕方ありません。


尖閣問題は「国辱」の言葉が違和感無く受け入れられるほどの大問題となっています。ダンマリでそのうち忘れてもらうのを待つ戦略が通用するのか、それよりもそういう戦略で今後の国益が守れるのかを問われている問題になっています。今日の時点で判断を下すのは早すぎると思いますが、幸か不幸か国会は始まったばかりです。

菅総理及び民主党政権がどういう目に見える方針を国民に示すのか注目しておきたいところです。