必要医師数実態調査

とりあえず必要医師数実態調査記入要領からなんですが、まず「調査の目的」です。

 本調査の目的は、全国統一的な方法により各医療機関が必要と考えている医師数の調査を行うことで、地域別・診療科別必要医師数の実態、求人理由や求人方法の傾向、求人しているにもかかわらず充足しない理由、短時間正規雇用の導入状況等を把握することにより、医師確保対策を一層効果的に推進していくことにあります。なお、本調査の結果を医療法第25条第1項の規定に基づく立入検査(いわゆる医療監視)のために使用することはありません。

あえて抜き出せば、

    医療機関が必要と考えている医師数の調査
ここを付け足すと「医療機関の経営者が経営状況も考えて必要としている医師数の調査」として良いでしょう。さらに暗黙の前提として「現在の各医療機関の勤務状況のままで」と付け加えても良さそうです。ただ個人的にはここをポイントとはしましたが、分量的に全体を見回せばニュアンスはチト変わるところもあります。私流に言い換えれば、
    医療機関が医師を求人しているのに「なぜ」集まらないかの実態調査である
なんとなく話の結論を官製医局に誘導するための調査と見えます。次に必要医師数の定義なんですが、

 「必要医師数」は、地域医療において、現在、貴施設が担うべき診療機能を維持するために確保しなければならない医師数と定義します。病床数の増などの事業展開は行わないことを前提とします。ただし、医師が確保できないためやむなく診療科を休診、病棟を閉鎖している場合で、当該診療科、当該病棟を再開するための医師については、必要医師数として計上してください。

ここも読めば簡明ですが、医療機関の経営者が必要な医師数と定義されています。この必要医師数をさらに二つに分類しています。

  1. 必要求人医師数


      地域医療において、現在、貴施設が担うべき診療機能を維持するために確保しなければならない医師数のうち、調査時点において、求人しているにもかかわらず充足されていない医師数


  2. 必要非求人医師数


      地域医療において、現在、貴施設が担うべき診療機能を維持するために確保しなければならない医師数のうち、調査時点において、求人していない医師数

解釈すれば求人するほど切羽詰っている医師数と、求人するほどでもないが必要と考えている医師数を分けて調査しているようです。調査の前提はこんなもののようです。さて平成22年9月29日付「病院等における必要医師数実態調査の概要」として速報値が報告されているのですが、統計調査ですからサンプルがどうなっているかを示します。

分類 調査対象数 回答数 回答率
病院 8683 7687 88.5%
分娩取扱い診療所 1579 1011 64.0%


確認はしていませんが、調査対象ほぼ全数調査に近そうな感じです。調査の用語がややこしいので、これも示しておきます。

雇用分類 定義
正規雇用 フルタイムの常勤
短時間正規雇用 フルタイムでない常勤
非常勤 正規でも短時間正規でもないもの。(延べ勤務時間数を40時間で除して常勤換算)
現員医師数 正規、短時間正規、常勤換算正規人数の合計(前期研修医は除く)


でもってどんな結果になったですが、これは全体の集計なのですが、

区分 現医師数 求人医師数 倍率 求人医師数

非求人医師数
倍率
正規雇用 132937 16488 1.12 21588 1.16
短時間正規雇用 3532 617 1.17 817 1.23
非常勤 30594 1183 1.04 1628 1.05
現員医師数 167063 18288 1.11 24033 1.14


現員医師数と言う新たな定義が導入されているのでちょっと読み取り難いのですが、医療機関が必要としている医師数は、現在の雇用医師数に対して15%程度であると解釈できそうなデータです。もう一つ「分娩取扱い医師」が分けて集計されています。これは診療所分と考えているのですが、

区分 現医師数 求人医師数 倍率 求人医師数

非求人医師数
倍率
正規雇用 5988 683 1.11 944 1.16
短時間正規雇用 201 41 1.20 64 1.32
非常勤 1123 72 1.06 116 1.10
現員医師数 7312 796 1.11 1124 1.15


これも医療機関が必要な医師数が現在の15%増程度で足りる事を示している様に思われます。都道府県別の調査もあって、これも興味深いのですが、時間が無いので後日分析してみます。さてこの調査では15%程度の医師の供給があり、均等に供給されれば医師不足は解消することを示している事になります。実際問題として徹底した完全な配給制度は現在では不可能なので、マージンを取って2割と考えます。

平成20年「医師・歯科医師・薬剤師調査の概況」によりますと、病院勤務医の合計数は、17万4266人となっています。これの2割増しの医師を必要としていますから、単純計算で病院勤務医が20万9119人(丸めて21万人)になる、ないしは3万4853人増えれば良いことになります。これは未回答の1割ほどの病院も同じ比率で医師が必要としていると見なしています。

不足分を満たす医師数にいつなるかですが、簡単に試算するために医師総数に占める勤務医の比率から考えてみます。

医師総数 病院勤務医 勤務医比率
1990 211797 128765 60.1%
1992 219704 135845 61.8%
1994 230519 143412 62.3%
1996 240908 148119 61.5%
1998 248611 153100 61.6%
2000 255792 154588 60.4%
2002 262687 159131 60.6%
2004 270371 163683 60.5%
2006 277927 168327 60.6%
2008 286699 174266 60.8%


ここ20年ばかりほぼ6割程度で推移しています。もっと長期で俯瞰すると勤務医の比率は増加傾向なんですが、最近はこの程度です。この先どうなるかの予想は非常に難しいのですが、現在より増えると仮定して65%にしてみます。そうなれば21万人の病院勤務医の時の医師総数は32万3000人になります。医師総数の予測は先日やりましたが、2025年で31万7000人です。

そういう調査結果だったようです。