昨日の続きなんですが、リベンジと言うかミスだらけだったので再計算です。それだけでは面白く無いので、インドア派様から、
計算が難しいのは同感ですが医学部の半数は女性、という大学もあり、正味のリタイア率はもっと高いのではないでしょうか?
これをエッセンスとして加えて行います。まず15年間に増える医師数ですが、
卒業年度 | 新規医師数 |
2011 | 7725 |
2012 | 7725 |
2013 | 7625 |
2014 | 7793 |
2015 | 8486 |
2016 | 8855 |
2017 | 8855 |
2018 | 8855 |
2019 | 8855 |
2020 | 8855 |
2021 | 8855 |
2022 | 8855 |
2023 | 8825 |
2024 | 8825 |
2025 | 8855 |
合計 | 127604 |
昨日の試算では2年分抜けていました。HERO様ありがとうございます。でもって15年間の増加分を12万7000人と仮定します。
次に女性医師のこのリタイア率と言うか男性医師に対してどれぐらいの比率で働けるかの評価は難しいところです。たとえば医師の需給に関する検討会報告書(2006)の長谷川レポートでは「1.0」とし、男性医師とまったく遜色なく働くとしています。しかし実際のところオールスクエアかと言えば、そうは言い切れないと考えています。
これは女性医師の能力が男性医師に劣るというわけではなく、どうしても性差によるハンデが存在すると言う評価の仕方です。あくまでもマスとしての評価ですから、個々の医師についての能力評価とはまったく別物とお考え頂きたいと思います。係数と言う事になるのですが、千葉大産婦人科の産科医療の現状と問題点 -大学病院の立場から-を参考にして見ます。
アメリカでは、女性医師(母性医師)の場合労働時間の0.3を出産や子育てに使うことを前提にしているという。したがって、マンパワーという面から見ると、女性医師のそれは男性の0.7ということになる。最近のわが国の統計では、女性医師の30%が、出産や育児を契機に離職していることから、0.7以下のマンパワーとなっていると思われる。周産や育児に対するサポートが不十分であることが大きな原因となっている。
異論もあるかもしれませんが、他に適当な参考値も無いのでアメリカの0.7を使う事にします。昨日は算数に大間違いをやらかして、何度も訂正を出す羽目になったのですが、とりあえず15年後の医師総数(検算しなおしました)の概数は、
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2010年:28万2000人
2025年:31万7000人
年齢 | 医師数 | 男性医師 | 女性医師 |
50〜59歳 | 60894 | 54056 | 6838 |
60〜69歳 | 30178 | 27341 | 2837 |
70歳以上 | 30194 | 28030 | 3164 |
50代医師の半分がリタイアするとして、ここは概算になりますが男性医師が8万2400人、女性医師が9420人に減少します。では15年の間に増える医師数の男女比ですが、これは30歳未満の医師の男女比が参考になります。
年度 | 総数 | 男性医師 | 女性医師 | 女性医師 の比率 |
1994 | 25803 | 19482 | 6321 | 24.5% |
1996 | 26906 | 19753 | 7156 | 26.6% |
1998 | 26487 | 18992 | 7495 | 28.3% |
2000 | 25285 | 17488 | 7797 | 30.8% |
2002 | 25846 | 17339 | 8507 | 32.9% |
2004 | 25605 | 16576 | 9029 | 35.3% |
2006 | 25695 | 16506 | 9189 | 35.8% |
2008 | 25738 | 16441 | 9297 | 36.1% |
女性医師の比率の増加は着実ですから、45歳までの女性医師の比率を、う〜ん、う〜ん、38%ぐらいにしましょうか。40%はちょっと多いかなぐらいの感覚です。15年後ですから現在30歳未満の医師は40歳代前半に達しています。この先頭集団が36%ぐらいで、15年後の30歳未満が40%を越えているかもしれませんが、ならすと40%弱ぐらいじゃないかぐらいの仮定です。
でもってどうなるかですが、2010年医師総数を長谷川レポートに準じて28万2000人とし女性医師比率を19.0%とします。そこから15年間のリタイア総数を9万2000人とします。さらに増加分を12万7000人とし、増加分の女性医師比率を38%とします。これで計算すると、
年齢 | 2010 | リタイア | 小計 | 増加分 | 2025 |
医師総数 | 282000 | 92000 | 190000 | 127000 | 317000 |
男性医師 | 228420 | 82800 | 145620 | 78740 | 224360 |
女性医師 | 53580 | 9200 | 47380 | 48260 | 95640 |
ちょっとだけ注意ですが、2010年の医師総数は生存しているすべての医師数で、2025年の医師数は70歳未満の医師総数です。誤差はいろいろ含みますが、あくまでもおおよそこれぐらいぐらいで御理解下さい。それでもって2010年の28.2万人の医師数のうち70歳以上の医師数を3万2000人(男女比を9:1)とします。つまり2010年の70歳未満の医師数は25万人と仮定します。2010年の女性医師の比率も19%と仮定すれば、
年度 | 分類 | 医師数 | 係数 | 小計 | 合計 |
2010 | 男性医師 | 202500 | 1.0 | 202500 | 235750 |
女性医師 | 47500 | 0.7 | 32350 | ||
2025 | 男性医師 | 224360 | 1.0 | 224360 | 291308 |
女性医師 | 95640 | 0.7 | 66948 |
おぉ、70歳未満の戦力は4万5000人ほど増えます。かなりの増加数なんですが、risyu様のコメントは気になります。
アメリカの係数がどのような前提かは全く知りませんが、少なくとも日本の勤務医を越える前提の労働の係数では無いでしょう。ひょっとしたら、アメリカの係数1は日本に来ると半分以下だったりするのではと思ったりします。という事は今後法を守った労働環境に近づけば近づく程、現在の労働係数1と将来の労働係数1は価値の違うもので、長谷川レポートは「年金これだけもらえますよ」のプロパガンダと同じ様なものでしかなくなるのかもしれません。
これは何を主張されているかと言えば、女性係数は0.7であったとしても、2010年時点の男性医師の労働が2025年と等しいかへの素朴な疑問です。同じ医師であっても労働係数の数え方が15年後では同じではないだろうの指摘です。医師1人の労働力は15年後に下がる要素はふんだんにありますが、上る要素が殆んど見あたら無いという事です。
これは今の医師が15年前の医師と較べても下がっていると考えるのと同じ事が起こるとも言えます。15年前の一回り上の世代の医師に較べて、現在の医師が同じ労働量かと言えば少々疑問符は付きます。そうなると下がると考える方が無難です。ちょっとシミュレーションをしてみると、
医師係数 | 2025換算 | 2010 |
1.0 | 291308 | 235750 |
0.9 | 262177 | |
0.8 | 233046 | |
0.7 | 203916 |
係数が0.8で2010年とほぼ同じ、0.7なら2010年より実戦力的に下回ることも予想されます。まあ、医師1人当たりの労働量が下がるなんて計算や予想は公式予測ではまずしないでしょうが、現場的には確実に起こると考えられます。これが幾らになるかは、その時のお楽しみと言うか、なってからの医療状況が示すと思われます。
今日はたぶん合っていると思います。検算は昨日より念入りにやったのですが・・・。
なんか誤解を招きそうなのでもう一度補足しておきます。女性医師が男性医師に対して労働量の係数が小さくなるのは、千葉大の説明にもあるように、妊娠・出産・育児に必然的に男性医師より時間を多く取られる点の評価です。つまり医師生活全体での総労働量の評価と考えて頂きたいと思います。医師としての能力、また現場の現実の労働について劣るとかでは決してありません。
男性の育児参加がこの先どうかの問題はありますが、男性が育児に参加すれば男女の係数の差は小さくなりますが、今度は全体の係数がそれ以前に較べて小さくなります。別に難しいことを書いているわけではなく、育児に参加する男性医師の総労働量が低下するからです。ミクロとマクロの問題の混同は無いとは思いますが念のためです。
もう一つ世代間の労働係数の差も医師が怠けているとはニュアンスが全然違います。例えば今より二世代ぐらい上になると、そこそこの病院でも1人医長は珍しくも何もありませんでした。今でも残っていますが、産科医が1人で300分娩以上も取り扱いながら、さらに婦人科入院、婦人科手術までやっているなんてのもありふれた話でした。
その1人でやっているのを2人でやれば労働量は激減します。さらに3人になればさらに減ります。患者数と言うか労働量とのバランスになりますが、2人になったから労働量が純粋に2倍になることは殆んど無く、2倍以下に収束します。そのためトータルとして労働量は減少することになるという考え方です。
小児科でも私の親世代ならば、外来300人と入院を1人医長でこなすみたいな時代が確実にあったわけです。そういう時代に較べると労働係数は確実に下がると言うわけです。ここで昔と今の労働の質が違うの意見も出てくるのですが、そこまでの勘案は個人的には無理なので御容赦頂きたいと思います。私が持ち出した世代間の労働係数の差は「こなせる」と言うか「カバーできる」患者の数とか範囲の比較ぐらいで解釈して頂ければ幸いです。
至極単純には1000人の患者に対して何人の医師でカバーできたかみたいな比較の係数です。医療の質が変わり、かつて1人で十分だったのが2人、3人必要になった点は評価が難しいために目を瞑っています。目を瞑っているというか、個人の努力で評価基準を作成するのが不可能とさせて頂いたほうが正確かもしれません。