助産師会調査報告を頑張って分析してみます

昨日はコピペネタで逃避してしまいしたが、やはりやっておかないと寝覚めが悪いので書きます。これでしばらくホメパチ関連の新燃料が投下されない事を切に願います。ネタモトは日本助産師会平成22年9月7日付「ホメオパシーに関する調査結果の公表」です。


看板に偽りあり

まずは元ライダー様から指摘のあった点です。この調査の目的は、

    分娩を取り扱うすべての開業助産師について、ビタミンK2シロップ投与とホメオパシーの使用に関する実態調査
誰がどう読んでも調査の対象にしているのは、
  1. ビタミンK2シロップ投与の実態
  2. ホメオパシーの使用の実態
この2項目についての調査です。VitK不投与もホメパチの一部ですが、ここはそれ以外のホメパチ使用の実態調査も行うと書いてあるしか読めません。ところが、調査項目として挙げられているのは、

  1. ビタミンK2シロップ投与の有無について
  2. 過去2年以内にホメオパシーのレメディを投与してビタミンK2を投与しなかったケースを取り扱ったことの有無について

これはおもしろい調査項目の設定で、ごく素直に解釈すると、

調査項目 解釈
ビタミンK2シロップ投与の有無について ホメパチに関係なくVitKを投与していない助産所の調査
過去2年以内にホメオパシーのレメディを投与してビタミンK2を投与しなかったケースを取り扱ったことの有無について VitKを投与せずホメパチ砂糖粒を投与した助産所の調査


助産師会が考えるホメパチ使用の実態とは、
    VitKを投与せずホメパチ砂糖粒を投与する行為のみである
こうなる事になります。別にそれでも構わないのですが、それならタイトルの「ホメオパシーに関する調査結果」はやや誇大表示の感を抱きます。まるで助産師のすべてのホメパチ関与の実態を調べた調査のように書き、そういう風に本文で書きながら、実際はVitK投与のみに焦点を絞った調査である事がわかります。それなら、そういう風に説明しておくべきだと感じます。

あくまでも因みになんですが、新生児期から乳児の時期に関りそうなホメパチ砂糖粒の情報を京都の小児科医様から頂きました。

ホメオパシーは素人ですので・・使用方法もよくわかりませんが・・・

上記、ペリ・ネイタルケア誌から
レメディ
ソライナム(胎児のカルマをとる)
シミンフーガ(前回の出産のつらかった思いを癒す)
スッタフサグリア(義姉や実母の確執に対して)
コーロファイラム(出産のもつれないように)
アーニカ
ぺレス・ペレニス
カレンディラ
ハイ・ぺリカム
ケーライ・カーブ
ケーライ・フォス
ポーステリィア
スケリー
などなどなど・・・

私も何の事やらですが、非常に「幸い」な事に、助産師会の幹部や理事にはこういう事に非常に詳しい方々が数多くおられると聞きますから、ホメオパシーの実態をVitK問題以外でも調査項目に加える事はさしての難事ではないと思います。御協力は頂けなかったのでしょうか。


ビタミンK2シロップを投与しているかの基準

調査項目に対する調査結果も興味を掻き立てます。VitK投与しているかの質問に対し、すべての助産所が「投与している」と回答しています。この「投与している」ですが、過去2年間に1人でも投与していれば「投与している」になります。全例であっても1例であっても「投与している」です。付け加えれば「投与している」有無の基準は、

調査時点において、ビタミンK2シロップはすべての助産所で投与していた。

VitK問題が社会問題化し、助産師会が「VitK投与をせよ」の通達を出した後の実態報告ですから、ここで投与していない助産所があったら「本当に問題」でしょう。あえてこういう項目を大きく掲載しているのは「今は改善した」のアピールのためと考えていますが、こういう情勢でのアンケート調査の信憑性の問題だけは指摘しておいても悪くないと思います。


VitK不投与・ホメパチ砂糖粒投与ケースの実態

VitK投与をせずホメパチ砂糖粒を行った助産所も、1例なのか多数例(今は全例ではないという調査結果が示されています)なのかは不明です。この中にはカリスマと呼ばれ、さらに助産師会の理事を勤めている助産師のように積極的に不投与を推進している方もおられるでしょうし、不投与理由にある、

  1. 薬剤拒否の妊婦にどうしてもと頼まれてビタミンK2を投与しなかった。
  2. ホメオパシーを学んでいる妊婦からの希望があり、小児科医より危険性の説明を受け、小児科医了解のもとビタミンK2を投与しなかった。
こういう事情に押しきられてと言いたいところですが、ここもよくよく考えると妙なところです。あくまでも調査結果を素直に読んでの解釈ですが、
    過去2年以内にホメオパシーのレメディを投与してビタミンK2を投与しなかったケースを取り扱ったことの有無について
このホメパチ砂糖粒を投与した主語が誰かになります。私の読解力では主語は助産師にしか読めません。どういう事かと言えば、

家族がVitK投与を
明確に拒否
助産師の
ホメパチ砂糖粒投与
調査結果
ホメオパシーのレメディを投与してビタミンK2を投与しなかったケース
× 単にVitKを投与しなかったケース。


家族が拒否した上で助産師がホメパチ砂糖粒を投与すると言う事は、助産師がホメパチ砂糖粒を用意する必要があります。そういう事を思いつくにはホメパチ信者でないと通常は無理です。家族がホメパチ信者であるなら、VitK投与拒否の上で自前で調達して服用させると考えるのが自然です。また家族が薬剤拒否であれば、VitK内服の代わりに納豆などの食事療法を考えるのが筋で、ホメパチ信者でもないのに砂糖粒は発想できません。

ケースとしてホメパチ以外の信条で薬物拒否の家族が存在する可能性はあります。当然ですが薬剤拒否ならホメパチ砂糖粒も拒否してもおかしくありませんから、VitK不投与・ホメパチ砂糖粒不投与になり、VitK不投与・ホメパチ砂糖粒投与に該当しないだけではなく、この調査のどこにも結果は出ていないことになります。

ここも考えようによっては若干の不思議はあり、ホメパチ非信者の薬物拒否家族が何故にホメパチ砂糖粒をOKにしたのかの問題はあります。分けて理由として書いてあるぐらいですから、そういう家族に多大の努力を傾けてホメパチ砂糖粒を服用させたと考えるぐらいにしかありません。くどくど言いましたが、調査にある36ヶ所はすべてホメパチ助産師であるのは間違いありません。ただ好意的に考えると

  • VitKを投与した上で砂糖粒も与える助産
  • VitKと砂糖粒を選択として迫る助産
この2種類はいるようです。おそらく
  • 薬剤拒否の妊婦にどうしてもと頼まれてビタミンK2を投与しなかった。
  • ホメオパシーを学んでいる妊婦からの希望があり、小児科医より危険性の説明を受け、小児科医了解のもとビタミンK2を投与しなかった。

この二つのケースはVitK投与の上で砂糖粒を与えようとして、VitKを拒否されたケースと考えます。深く突っ込んだらキリがありませんが、そういう風に解釈します。
  • ビタミンK2シロップとホメオパシーのレメディと両方の説明を行い、妊婦の選択によりレメディのみの投与を行った。

このケースは二択を迫った助産師と解釈できます。


調査の数値情報の乏しさ

この調査は過去2年以内の調査となっています。2年にした理由はよくわかりませんが、2年以内なら情報が集めやすいはあると思います。にも関らず数値としての情報が非常に乏しいのに驚かされます。確認できるのは414ヶ所のうちホメパチ助産所が36ヶ所であり、その36ヶ所も全例がVitK不投与ではないと言うだけです。VitK投与例も「現在」ですから程度は不明です。

ここで誰もが知りたい情報は全部で何例にVitK不投与・砂糖粒投与を行ったかです。つうか、それを調べるのがこの調査の目的としてもおかしくありません。そしてVitK不投与・砂糖粒投与のうち、

  • 家族意志でVitK不投与・砂糖粒投与が何例か
  • 助産師が選択を迫ってVitK不投与・砂糖粒投与が何例か
ここまでぐらいの情報を集めるのが実態調査ではないでしょうか。36ヶ所ある事を発表したのだけでも助産師会感覚として「英断」かもしれませんが、これでは36ヶ所がそれぞれ過去2年間のうちで1例だけそういうケースがあったのか、それともほぼ全例に近いのかも不明です。

確か助産院は安全?様のどこかにあったかと思うのですが、助産所では医師で言う診療録を残さないそうです。御立派な事で、過去の事は「記憶にございません」で口をつぐむ事も可能です。家族から情報を聞こうとしても、山口の助産所のように「VitKは投与しています」と言われていれば、すべては闇の中に葬られる事になります。この辺はアンケート調査の限界があるとは言え、もどかしすぎるところです。


対応も「???」

対応も読めば読むほど味が出るもので、

    ホメオパシーのレメディを投与してビタミンK2を投与しないことのないよう
えらく持って回った言い方をしています。VitK問題を狭く捉えると、ホメパチ砂糖粒を与えたのが問題ではなく、VitKを投与していなかった事が問題です。若干誤解を招きそうな表現ですが、ホメパチの教理はVitKすら排斥するところに根本問題があり「砂糖粒投与 = VitK不投与」と見なされている面がありますが、これがVitK投与の上で砂糖粒投与であるならここまで問題視されなかったと言う意味です。

ですので優先すべき指示はVitK投与を必ず行うようにすることであり、ホメパチ砂糖粒投与は重要度が下がります。ところがこれだけもって回られる表現をされれば、こうとも解釈できることになります。

    ホメパチ砂糖粒さえ与えなければVitK不投与は認容される
ホメパチの教理には薬剤を始めとする人工加工物の忌避があります。ホメパチ教理をそれほど深く知っているわけではありませんが、ホメパチ的優先度から言えば、
  1. 最優先されるのは人工加工物であるVitK忌避
  2. その次として砂糖粒代用
こうなっている可能性は十分あります。そうなれば助産師会の対応ではVitK不投与に関する方針は不明瞭になり、ホメパチ信者にとって優先されるVitK不投与はさして不都合なく温存される危険性があります。ここの指示はもっと明確に、
  • VitK投与は必ず行うこと
  • VitK投与を行わず、その代用にホメパチ砂糖粒投与を行うのは言語道断である
ここまで言い切るべきところと考えます。対応は実に歯切れの悪い表現で、噛めば噛むほど味が出てくる思いがします。ちょっと面白いのは助産師会がVitK問題で動き出してからは、
    調査時点において、ビタミンK2シロップはすべての助産所で投与していた。
これは調査時点では
  • 薬剤拒否の妊婦にどうしてもと頼まれてビタミンK2を投与しなかった。
  • ホメオパシーを学んでいる妊婦からの希望があり、小児科医より危険性の説明を受け、小児科医了解のもとビタミンK2を投与しなかった。

こういう方々は幸いな事にいなかったのでしょうね。もしいれば、病院だってVitK投与は難しくなります。そうそう、こんな問題を小児科医である私に持ち込まれたら困惑しますが、説得しても無理だったら児童相談所に通報する事にしたいと思います。


まとめみたいなもの

アンケート調査では助産師のホメパチ実態を十分に調査できないのは理解しないといけません。これは見方・考え方ですが、ホメパチへの逆風がこれだけ吹いているのですから、アンケートの回答はお茶を濁す手もあるわけです。それが1割近くもVitK不投与・砂糖粒投与をした事があると答えているのは、開業助産師の中にどれだけ確信犯ホメパチが食い込んでいるかを明瞭に示しています。

ホメパチ問題はVitK問題だけに留まりません。VitK問題だけ臭いものに蓋をする様に対応してすむ問題ではありません。真に対応すべきはホメパチ思想の蔓延の抑止にあるはずです。助産師がホメパチ思想の伝道者にならないように助産師会は努力すべきだと考えています。理由は助産師会は既に日本学術会議の方針に賛同しているからです。

個々の助産師の信条は、医師にもホメパチ信者がいるように完全な排斥は不可能でしょうが、既に「荒唐無稽」の烙印を押されたホメパチですから、明確な姿勢として「助産現場からの排除」が求められると私は思います。残念ながらこの調査報告にはそういう姿勢が殆んど見られません。それだけホメパチの浸透が深刻だと見るべきなのかもしれません。