ブログの寿命

タイトルにしたようなお話がブログお休み中に妙に気になっています。まずDr.I様のピックアップブログ(4回目)ですが、その中に、

    この前の記事が「大淀病院」の話だったけど。
    その頃、約3年前って、医師ブログの
    全盛期だったねー、そういえば。

    いろんな医師ブログが乱立したけど。
    結局、その頃から今まで生き残っている
    医師ブログってどのくらいあるんでしょうかね。

    医者って基本的に忙しい人が多いから、
    ほとんどの人は辞めちゃってますよね、きっと。

これは言われてみれば同感で、どうも医療系ブログは減っているように思います。減っているというのがこれまた微妙で、本当のところとして増えているのか減っているのかもハッキリしません。減っていると感じるのは、あくまでも私の巡回範囲のブログがこの3年のうちで結構休止や休眠状態になっているところが多そうだぐらいの実感です。

一説には1000あると言われている医療系ブログをすべて巡回している訳じゃありませんから、私の知らない範囲で新たな医療系ブログが台頭し人気を博しているのかもしれませんが、それでも減っている方が多そうな感じはしています。この話は某所であったのですが、ある有名医療系ブロガーは「ここ3年で新たに人気が出たブログはない」とまで言い切っておられました。

「ない」は言い過ぎと思うのですが、頑張って考えてもぐり研ブログぐらいしか思いつきませんでした。他もきっとあるはずなんですが、見ようによっては狭い世界ですから、私でも目にする機会ぐらいはあるはずです。至極簡単には、

    登場ブログ < 退場ブログ
これぐらいの関係は成立しそうな感じはしています。まあツィッターも台頭していますから、そちらに流れている可能性も十分あります。


さて話は少々飛ぶのですが、新規参入したブログがどれほど生き残っていくかです。雑な把握ですが日本には約2000万のブログがあり、このうち活動性が高いブログは約200万とされています。もっとも活動性が高いの定義が「月に1回以上更新している」ですから、実感的な意味で活動的なブログは10万ぐらいかもしれません。

新規参入は今でも多いみたいですが、それがどうなっているかを調べたレポートがdh memoranda様のブロガーの平均寿命にあります。ちょっと引用しておくと、

  • 平均寿命: 38.2日
  • 平均投稿間隔: 3.6日
  • 三日坊主率: 47%
  • 60日を超えたブログは25%
新規参入ブログのうち、三日坊主を潜り抜けるのが約半分、さらに2ヶ月を越えて生き残るのが1/4ぐらいと言う事になります。これが多いと考えるのか、少ないと考えるのかは何とも言えない所で、正直なところ案外生き残り率は高いようにも感じます。もう少し見方を変えた調査として吹風日記様のブログはいつ死ぬのか、ウェブの噂も75日、光もともに運ばれて行くでは、

  • 24時間以内に更新された日記の死亡率は、約1.3%。
  • 1週間放置された日記の死亡率は、約16%
  • 2週間放置された日記の死亡率は、約32%
  • 1ヶ月放置された日記の死亡率は、約52%
  • 3ヶ月放置された日記の死亡率は、約90%

当たり前と言えばそれまでなんですが、更新間隔が長くなるほどブログをやめてしまう率は高くなっていきます。この事を吹雪日記様は、

このことは、ある期間(だいたい100日)を過ぎると、ブログが再び更新されることはない、と考えることで説明がつきます。つまり、毎日一定の数、死んでゆくブログがあるのではないか、という仮説です。

この仮説がかなり妥当であることが、別のデータから分かります。

まず、はてなダイアリーの日記数は、ここ1年、ほぼ毎日一定のペースで伸びています。ところが、はてなのアクティブユーザー(1ヶ月以内に更新をした人)の数は、この1年間ほとんど変化していません。ブログファンによる、2005年11月〜2006年6月のデータと、2006年4月〜9月のデータにリンクしておきます。なお、ユーザー数の伸び悩みは、FC2ブログを除く、すべてのブログサービス共通の現象です。

日記数自体は一定のペースで増えているのに、アクティブユーザー数が変化していない。これは、死んでいくブログの数が毎日一定数ある、と考えるのが最も自然な説明です。

はてなダイアリーの数は、去年の10月5日から今年の10月5日の1年間で94681増えました。これを365で割ると、259.4です。つまり、1日約260。さきほどグラフに引いた横線は、この「1日260日記」のところに引いたのでした。

以上のことから、はてなでは、毎日260の日記が死んでいく、と考えるのが妥当です。

たぶんそうであろうと言う事をデータで裏付けておられます。


さて最初の2ヶ月ないし3ヶ月程度を潜り抜けたブログがどうなるかです。徐々に脱落していくのでしょうが、軌道に乗った人気ブログと呼ばれるところでも永遠に続くわけではなさそうです。チト古いのですが、ARTIFACT@ハテナ系様のブログの寿命に各種の説を取り上げておられますが、大体3年ぐらいが一つの寿命ではないかとしています。

人気ブログが休止する理由も幾つかあるでしょうが、思いつくままにあげてみると、

  1. 下手うって炎上消滅
  2. 荒らしや粘着系に憑りつかれて衰退消滅
  3. ブロガー自身のモチベーション低下(くたびれた、仕事環境が変わり書く間がなくなるなど)
1.と2.はともかく、3.が3年説としては説得力があります。これはブログの広い意味の発達史とも関連があります。初期のブログ指南では「テーマをあまり絞らずに」がありました。大した根拠ではないのですが、私がブログを始める時に「ブログとはなんぞや」で情報を集めた時の記憶です。あんまり偏ったテーマで書くとネタに詰まって書けなくるとのアドバイスです。

このアドバイスは基本的に今も生きているとは思います。ブログは更新してこそ値打ちがありますから、ネタが無いと更新できません。ネタの収集範囲を狭くすると恐怖のネタ切れに直面しやすくなります。ブログを長く続けるためには、ネタの収集範囲を少しでも広くしている方が有利なのは間違いありません。

長く続ける観点からすれば「テーマをあまり絞らずに」は正解なんですが、ブログは長く続けるだけでは面白くありません。書いているからには人気も出て欲しいの願望は絶対に出てきます。広く収集しながら人気が出れば理想なんですが、どうしても分野によっては得手不得手があるのと、人気を集めるためにはテーマを絞った方が有利と言うのがあります。

絞ったテーマで書いている方が、読者にとっても「あそこはアレを書いている」として集まりやすくなります。いわゆる専門ブログの台頭になります。ブロガーも長く続けるのと、人気が出るのを天秤にかけると人気の方を取りたくなるのが人情です。一方で専門化はネタの収集範囲が狭いですから、3年もすれば何を書いても二番煎じ、三番煎じになり煮詰まっていく寸法になります。

ここら辺をまとめると、

    テーマを広く取る・・・長く続けやすいが人気が上がりにくい
    テーマを狭く取る・・・人気を集めやすいがネタ切れが早く来る
さて医療ブログの話にここで戻りますが、Dr.I様の指摘通り、医療ブログが爆発的に増えたのは、大野事件さらには大淀事件の衝撃がキッカケになったものが多いと思います。私もこれらの事件の前は雑食系の何でもアリの代わりに、人気の出ないブログを書いていました。それがほぼ一斉に医療崩壊系に雪崩れ込んだと考えています。

医療崩壊ネタは確かに豊富でしたが、さすがに3年もすればネタ切れになってきます。医療崩壊自体は止まったわけでもなく、改善されているわけでもないのですが、ブログ内の言説はドンドン進みますから、目新しい事を段々書けなくなります。初期はマスコミ記事一つ叩けば大受けでしたが、3年も4年も叩いていると書く方も、読む方も「またか」になって関心が低下します。

新規参入ブロガーが同じ路線を取ろうとしても、何を書いても既に誰かが書いている主張にダブり、なかなか新味が出せず、人気が出るところまで辿りつかないんじゃないかと考えられます。人気が出ないと言うのもブログが消滅する理由になります。

もともとブログの人気の偏りは壮絶で、2年ほど前のデータではありますが、平均アクセス数は300とされますが、300あれば上位5%に入り、1000あれば上位1%に入ります。5000を越えると0.3%ぐらいになるぐらい偏っています。偏りは検索の上位に来るかどうかにも影響し、アクセスの高いブログの方が検索により新たな読者をより獲得しやすい循環にもなります。

タダでも人気ブログになるのが難しく、さらに医療系では飽きられかけている医療崩壊ネタを扱わざるを得ず、医療崩壊ネタ自体が医師ネット世論ではかなり煮詰まっているとなれば、新規台頭ブログが目に付き難いのも仕方がないかもしれません。


私も同じ問題に嵌っているのですが、では対策はどうすれば良いかになります。困難さを別にすれば新たなジャンルを切り開くと言う事になります。医療崩壊系も3年前ぐらいに新たに切り開かれたジャンルであり、このジャンル自体が衰退傾向を示しているのですから、この分野に進出しても成功は容易ではないと言う事です。

ただ言うは易しの典型で、そんな簡単に医療崩壊系に匹敵する新ジャンルを切り開ければ誰も苦労はしません。お休み中に色々考えたのですが、考えたぐらいですぐに思いつくぐらいなら、誰かが先に手を出しているはずです。

結局のところ出た結論は平凡至極で、医療崩壊は大事な事なので、これからも取り上げていくのを基本とし、他の話題を今までより広く扱いながら情勢の変化を見ようです。今までと殆んど変わらないのですが、比重を微調整(と言うか必然的に)ぐらいの結論です。

つう事でこれからもよろしく。