久しぶりに銚子

ちょっとネタ詰まりでssd様のところで久しぶりに銚子市立総合病院の話題があったので、懐かしいので後追いします。ソースが閉院問題がブタとシジミ左右されたというスクープで勇名を馳せたタブロイド紙ですから、今日はその程度の話題と思って頂いて結構です。私もたまにはラクしたいのでよろしく。

銚子の病院問題は長年の地方政争の経緯があるようで、簡単にまとめると、

  1. どうやら前々市長時代から病院問題はあったらしい
  2. 前市長は病院存続を掲げて前々市長を破った
  3. 前市長も結局のところ病院廃止の方向に転換し、議会の承認を得た
  4. ところが閉院反対のリコール運動がおこり前市長は失職
  5. 出直し市長選で、前市長も含めて全員が病院再開を公約として立候補
  6. 当選したのは前々市長
なんのこっちゃらミカンやらの展開ですが、大学誘致で巨額の投資をして市の財政を傾けた前々市長が市民の信を得たようです。地方政治はどこでもそうですが、部外者には最後のところが理解しにくくなっています。市長選があったのが去年の5月ですが、さすがにリコール時の最大の焦点である病院再開は白紙にはしなかったようです。

そんな現市長がまずやったのが前市長の残党の追い出しです。これも複雑なんですが、前市長も議会の承認を経て閉院を断行したのに、その後に再開のために市立病院指定管理者選定委員会なるものを作っていたようです。委員長として伊藤恒敏東北大大学院教授が参加されていますが、石もて追われるように叩き出されています。これもまた銚子に粘着するタブロイド紙が2009.6.29付で伝えています。

 市側に結論を伝えた直後に会見した伊藤委員長は、リコール運動について「医療事情を知らないとしか思えない『公設公営』がスローガンだった」「選定作業を妨害された。(再開困難になるという)相当な代償を覚悟しなければならず、巻き添えを食う市民は誠に気の毒だ」などとうっ憤を爆発。野平市長についても「選定委の意義が消滅してしまったかのような言動は民主主義の手続きを無視し礼節を欠く」とこきおろした。

これも政治といえばそれまでですが、もうちょっとソフトに対応できなかったかと外野からは思います。とは言うもののなんとか再開しないと、再びの政争劇が再燃しかねません。どうやらそういう熱いお土地柄でもあるようだからです。ちなみに現市長の病院再開の選挙時の公約は、

全国規模で病院を運営する医療団体

もちろんこれを推進するために伊藤委員長を銚子から叩き出したはずなんですが、代わりに作ったのが

立派なお名前ですが、名称を読めばおわかりのように「全国規模で病院を運営する医療団体」とは関係なく、銚子市が独自で設立した機構のようです。いや、ここは突っ込んで調べなかったので、銚子市が独自に作ったかどうかは根拠が無いとしておきます。機構と契約したからと言って医師が急に集まってくるとは思いにくいのですが、機構の機能を解説した概念図がなかなか興味を惹きます。
わかりやすい図なんですが、とりあえず市はこの再生準備機構と契約します。契約した上で医療資源の確保を依頼する事になるようです。医療資源とは具体的に、
  • 医師
  • 看護師
  • 医療法人
これでもえらく漠然としていますが、再生準備機構のお仕事は、病院職員である医師・看護婦を「どこか」から探し出す仕事と、ついでに病院を経営してくれる医療法人を探し出すことみたいです。もちろんタダで働いてもらうわけではなく、まず着手金を支払い、医師と看護師を探し出し、医療法人を見つけ出すか、再生準備機構が自前で作れば成功報酬が支払われるわけです。

どうにもこうにも、市営の医療人材調達業者みたいな感じですが、これはたぶんですが、この再生準備機構に名を連ねる方々にも成功報酬とは別にお手当が支払われていると考えられます。委員は全部で6名で、中には

    H.7.11・・・司法試験合格
    H.8.4・・・・医師免許取得
こういう凄まじい経歴の持ち主もいますが、住所と年齢だけ表にしておくと、

住所 年齢 肩書き
横浜市旭区 67歳 弁護士
東京都江東区 41歳 医師兼弁護士
大阪府富田林市 74歳 病院顧問
長野県長野市 64歳 元地方公務員
滋賀県大津市 61歳 元勤務医
東京都中央区 62歳 会社社長


月に1回集まるだけでも交通費はバカにならないぐらいかかります。それと調査費も「実費」として別に支払われているようです。正直なところ何のためにこんなものが必要で、それよりどういう効果があるかの理解にやや苦しむのですが、ちゃんと議会の承認を経て去年の7月に発足しています。


これまでの経緯をまとめるだけで長くなりましたが、この市長ご自慢の再生準備機構がどれだけの成果を挙げたかを伝えるのがまたもやタブロイド紙です。2/25付記事より、

銚子市立病院:再生機構理事長に笠井氏が就任 /千葉

 銚子市は23日夜、医療法人・銚子市立病院再生機構の設立総会を開き、理事長には医師の笠井源吾・市参与が就任した。

 記者会見した笠井理事長らは、5月1日から「1人プラスα」の内科医で病院を再開する方針を表明。「公設民営」方式で5年後には10診療科、医師30人、200床の病院を再生し、黒字経営を目指す考えを示した。

 再生機構は必要な手続きを経た後、指定管理者として病院の運営に当たる。理事に白濱龍興・元自衛隊中央病院長ら5人▽監事に滑川利助・元千葉銀行支店長▽評議員に赤木靖春・千葉科学大副学長や間山春樹・市医師会長ら9人が就任した。野平匡邦市長は「市民の生命を守ることの責務を感じている」と語った。【新沼章】

この記事からわかる事は医療法人の獲得には成功しなかったようです。医療法人を獲得すれば概念図によれば指定管理者に指名されるはずですが、自らが指定管理者になるということは新たな医療法人を組み上げて、再生準備機構が指定管理者になると言う事です。医療法人が尻込みしたのは仕方ないとしても医師はどうだったかになりますが、

    5月1日から「1人プラスα」の内科医
おそらく理事長に就任された笠井源吾氏のみが現在確定している医師と考えられます。笠井氏の経歴が2010年1月号「広報ちょうし」にありますが、

 笠井氏は日本医科大学卒業後、内科医として、国立横須賀病院循環器科医長、済生会波崎済生病院院長、済生会神栖済生会病院院長などを歴任。平成20年10月には、神栖済生会病院名誉院長の称号を授与され、昨年4月からは、神栖済生会病院および済生会波崎診療所の顧問を務めています。

立派な経歴ですが71歳になられるようです。この71歳の医師に5/1から課せられた使命は、

    病院を再開する方針
細かな字句に絡むのも品が無いですが、記事には「病院」となっています。病院とは最低でも20床以上の入院病棟と、入院病棟を支える看護職員、さらには給食や薬剤、検査などの部門を抱える施設を意味します。さらに有床診療所と病院の違いとして当直の有無があります。病院であれば入院患者がいようがいまいが、医療法により必ず当直を置かなければなりません。

記事にある「プラスα」が新たな常勤が見つかればともかく、非常勤を数人確保した程度では、病院再開のために確保した入院のためのスタッフの活用が非常に難しくなります。それより、いくら当直バイトを雇おうと院長自らの当直がかなりの数になるのは避け難いところです。

まあ色んな便法はあるかと思いますから、病院と言いながら入院病棟を閉鎖したままで再開するのは可能だとは思いますが、外来は再開したからには連日開く必要はあるんじゃないかと思われます。医師は一人ですが、理事が5人、評議員が9人もいますから応援が期待できるのでしょうかねぇ。こんな状態ではだだっ広い診療所に過ぎないのですが、さらなる花火が上げられています。

    5年後には10診療科、医師30人、200床の病院を再生し、黒字経営を目指す
誰が頑張るのでしょうか。やはり71歳で連日外来に従事している理事長が先頭に立って、この目標に向かって驀進されるのでしょうか。舞鶴の再生計画でも確かそんな事が謳ってあったような気がします。なんつうても「理事長」ですからね。


銚子の再開に対し実のあるアドバイスは私如きでは不可能です。実のあるアドバイスはできませんが、ちょっとしたアドバイスぐらいならあります。とりあえず銚子に粘着している疫病神をなんとか追い払うべきかと思います。この疫病神に憑りつかれたままでは、どんな立派なプランを立てても実を結ぶとは思えません。

疫病神を追い払うのは、病院を5年後に完全復活するぐらい至難の業なんですが、千葉なら成田山ぐらいが一番御利益があるんじゃないかと思っています。他に適当なところは・・・ゴメンナサイ、千葉は行った事がないのでよくわかりません。