試算と感想

診療所の週間再診患者数と言っても診療科によって比率も数も位置付けもかなり異なるのですが、数に注目して試算をしてみます。

金額 100人 150人 200人 250人 300人 400人 500人
30円 3000円 4500円 6000円 7500円 9000円 12000円 15000円


私は小児科医なので小児科開業医の感覚を中心としての感想にしますが、試算以上の外来患者があれば関係ない話になると思われます。試算に入れた500人どころか300人でも関心は薄いかと考えるのですが、他の診療科の参考までにあげています。とりあえず試算では、
    1週間に3000円から最大15000円程度
もっと現実的には5000円から1万円までの時に考慮するかと思われます。この金額の代償は1週間が168時間で、そのうち30時間が診療時間としても残り138時間の拘束時間の代償です。5000円から1万円を時給に換算すると、
    1時間当たり36円23銭から72円46銭程度
これ以外に机上であれば計算できる収入として電話再診があります。しかしこれが実際上、患者にいかに請求しにくいものであるかはよくご存知かと思います。また初診であれば何もつきません。ここまでは収入面のお話です。


現在でもある程度の時間、時間外対応を行なっているところはあります。これもある程度であってオールタイムではありません。一種のボランティアで時間外診療を行なっている状態で、自らの体調都合によりコントロールしながら行なわれています。ここで重要なのは時間外診察を行なうのはあくまでもその医師の善意によるものです。

善意であり、必ずしもオールタイムでないので、患者側も対応してくれたらラッキーです。言い方を変えれば対応されなくとも「今日は仕方がない」になります。患者側にすれば時間外に対応してくれて感謝ですし、医師側にしても出来る範囲の対応をした事で医師としての満足感を覚える関係になります。ところが金銭の代償を伴う制度として成立すれば話は変わります。医師にとって対応するのは義務となり、患者にとっては権利となります。

つまりこれからは、

    「善意と感謝」の関係から「義務と権利」の関係に変わる
患者と医師の関係が権利と義務に代われば、これまでほぼオールタイムで対応していた医師も考え方が変わる可能性もあると思っています。「善意と感謝」の関係であればやりがいになりますが、「義務と権利」になるのであればモチベーションが保てなくなると言う事です。義務の代償は上記した通りです。

「タダより高いものはない」と言葉はあります。これは色んな意味で使われますが、今回であれば「善意と感謝」でタダであったものを、上記した金銭の代償で「義務と権利」にした事になります。これは高くつきそうな気がしてなりません。小児科開業医としても尊敬できる先達であるnuttycellist氏のコメントを引用させて頂きます。

地域医療貢献加算があるのだから、夜何時でも電話に出ろ、何時でも診るのが当然だとなりますね。

こうした診療報酬は受け取らない。従って、原則救急対応はしない、という立場もありでしょう。

今回の改訂は、真面目に小児医療・救急医療をしている診療所医師を打ちのめすにの十分な内容です。

開業医がこの代償で「義務と権利」を受け入れれば、やがては勤務医も同様の扱いになるんじゃないかとも心配します。以上感想でした。