医師の服装

かる〜い話題なんですが1/6付Asahi.comより、

「脱・白衣」広がる 子の緊張和らげ、清潔な服で診察

 医者のトレードマークとも言える白衣を診察室で着ない医師が、小児科や心療内科を中心に増えている。患者の緊張感を和らげる効果や動きやすさ、衛生面など狙いは様々。中には「患者中心の医療を阻む」として白衣を全廃した病院も。ポロシャツやワイシャツで診察する姿は、患者からも好評だ。

 東京都東村山市の西武東村山駅前に、昨年10月に開業したばかりの小児科「どんぐりキッズクリニック」。石井ちぐさ院長(41)はアンパンマンなどアニメのキャラクター入りのシャツで診療にあたる。

 約15年間の勤務医時代は白衣を愛用していた。だが、「白衣姿を見ただけで怖がる子どもさんが多かった。開業を機に、少しでもお子さんの心の負担を軽くしたいと思って白衣を脱いだ」。看護師と事務員もおそろいのキャラクター入りシャツを着用。柄は5種類あり、毎日替えて子どもたちを楽しませている。

 大阪市中央区心療内科「なかがわ中之島クリニック」の中川晶医師(57)がワイシャツで診察するのは、「白衣は医師と患者の間に壁を作る」と考えるからだ。

 白衣の医師の前では緊張して血圧が上がる「白衣高血圧症」という症状がある。中川さんは「心療内科では患者さんにリラックスしてもらい、話してもらうことが大事。医師と患者の壁は低ければ低い方がいい」と話す。

 「いけだこどもクリニック」(堺市北区)の池田和茂院長(47)が2006年10月の開業以来、「脱・白衣」路線を貫いてきた理由の一つは意外にも「衛生上の問題」だ。約20年間の病院勤務時代、週に2回程度しか白衣をクリーニングしてもらえず、衛生面で疑問に思ってきた。「今は私服だから毎日洗濯し、清潔な服で診察出来る」と話す。

この記事は2部形式なのですが、引用は前半だけにしております。私も開業医なんですが、他の開業医がどんな服装で診察されているかは存じません。理由は非常に単純で、他の開業医の診察風景を見ることが出来ないに尽きます。だいたい同じ時間帯に診察してますし、ノコノコ見学に行くわけにも行かないというところです。

ですから、あくまでも伝聞ですが小児科開業医はかなり前から白衣を着用しない医師は多かったような気がしています。多かったと言っても具体的にどれほどの割合かなんてデータはありませんが、そういう話はしばしば耳にする程度の根拠です。もうちょっと付け加えると、白衣を着用せずに診察する話を聞いても、「それもやり方」程度で違和感を感じるほどの話でもなかったと言う事です。

小児科開業医が白衣を着用しない理由としてポピュラーなのは、白衣では子どもに嫌われるというのが多かったと思います。正直なところどれ程の効果があるかは不明なのですが、開業医は自分で院内のルールを作れるのが特権ですから、「そうしたい」ないし「そう考えるから、そうする」はあくまでも裁量範囲ですから、個人の嗜好の問題と解釈しています。

ただ記事にある

    「今は私服だから毎日洗濯し、清潔な服で診察出来る」と話す。
これを衛生問題のための一例としていますが、少々笑いました。勤務医時代はそういう問題があったかもしれませんが、開業すればその程度の衛生問題はアッサリ解決するはずです。言ったら悪いですが白衣なんてさほど高価なものではありませんから、毎日洗濯して着替えるぐらいの数を用意するのはいとも簡単です。さらに費用はいわゆる経費で落ちます。


では「お前はどうなんだ」の質問が出てくると思います。私は一貫してケーシーです。年がら年中、半袖のケーシーで診察しています。これはケーシー(白衣)でなければならないというほどのポリシーではなく、私服じゃメンドクサイのが最大の理由です。

私服にするという事は服装の取り合わせを考える必要が出てきます。ところが私の服装の趣味は極端に狭くて、なおかつ服装への興味が非常に薄いというのがあります。極論すれば、同じ服を上下とも何着もそろえて、毎日同じ服装であっても全然気にならないと言う代物で、一種の制服状態です。制服状態と言ってもワイシャツなんて法事以外に来ませんし、背広も同様です。簡単に言うとオシャレとは縁遠い状態です。

外来の服装は診療所経営ではイメージ戦略の一環になります。患者は子どもですが、連れてくるのは母親が多いですから、服装もまた案外重要なポイントになります。女性の服装への執着は物凄いですからね。服装の評価のポイントは幾つもあるでしょうが、四季折々に応じて、それに合わせた服装と言うのも小さくないポイントと思っています。

そういう服装をそろえるのに非常に前向きな人種と、そうでない人種がいると思っています。私は残念ながら後者で、服を買いに行くという作業すら苦痛に感じるほうですから、芸の無い制服、つまり白衣で仕事をしている訳です。もうちょっと付け加えるとケーシーも嗜好が非常に狭くて、前に買った(奥様が選んだのですが・・・)のは趣味に合わなかったので、一度も着ずにゴミ箱に直行です。さすがに呆れられて、「こっちの方がオシャレなのに・・・」と絶句されたぐらいです。


診療所で白衣を着るか着ないかはたいした問題ではないと思うのですが、朝日記事の後半は病院での白衣も取り上げています。興味のある方は読んで頂ければ良いと思うのですが、病院の医療スタッフはさすがに白衣ないし制服であるほうが良いように思っています。理由は単純明快で、白衣や制服でも着ていないと見分けがつかないというのがあります。

見分けなんて名札をつければ解決するという意見もあるでしょうし、制服にこだわるのは単なる慣れの問題に過ぎないというのも一理あります。一理はありますが、一理の前提に私服であっても適切な服装を職員は常に行なうというのがあると思います。しかし必ずしもそうはならない面があると思っています。

私服にするのであれば、大雑把でも服装規定は設けられるとは考えています。そういう服装規定を守った上で、なおかつ不適切な服装が出現する可能性を心配します。現在でも服装に無頓着な医師はおり、かなり物凄い服装をしながらも、上に白衣が存在する事でなんとか格好がついている状態みたいな感じです。

そういう人物であれば、私服になっても白衣を禁止している訳ではありませんから、従来通り白衣着用にすれば事が済むとの考え方もありますが、得てしてそういう人物に限って、白衣が不要となれば、白衣さえ着ないなんて事がありがちです。なんか自分で書きながら、学校の風紀担当みたいな発想になっていますが、ある意味、生徒より社会人の方が問題になれば管理は厄介なものです。

それと医療機関により差は大きいのですが、病院の白衣着用は、白衣さえ着ていれば後は根こそぎ服装は自由と言うのもあります。白衣の下に何を着ようが基本は自由で、なおかつ前のボタンをしめる必要さえありませんから、上に羽織りさえすればno problem状態と言えばよいのでしょうか。さらにこれを状況に応じて脱ぎ捨てても、普通は何の問題にもなりません。



私のように服装にモノグサな人種には制服はとっても便利な存在なんですが、こればっかりは個人で考え方が大きく違うでしょうし、これからを考えると新しい意見とか考え方が出てくるとは思います。診療所はともかく、病院での白衣着用の将来を考えるとちょっと面白いかもしれません。白衣に限らず制服は外見上の統一美の観点と、個人の嗜好の抑圧と言う二面性があります。どちらに力点を置くかで考え方は大きく変わりますが、「脱・白衣」かすべて善と言う視点はちょっと狭いように感じます。