棚橋 vs 千葉 Part 4

Part 2Part 3と延々と千葉大臣の

  • 個別の捜査の案件には答えられません。
  • 仮定の質問には答えられません。
  • それぞれが適切に判断される。
これしか答弁は聞けていません。これは法務大臣の立場から致しかたないのでしょうが、もうちょっと気の利いた切り返しがあっても良さそうな感じは抱きました。もちろん棚橋委員もこの答弁を想定して質問を行なっているとは思いますが、これで押しきられたら、国会論戦的には千葉大臣が追及を交わしたと言う事になるのでしょうか。よくわからないところです。

「棚橋 vs 千葉」もいよいよ最終回です。押し問答に進展があるのか、千葉大臣が押しきってしまうのか、注目して見ましょう。

棚橋委員

    仮定の設定をしているわけじゃありません。現に鳩山さんがやっている事です。逆に言えば、この鳩山システムを使えば、脱税のほうもそうですが、鳩山システムを使えば、総理大臣は訴追されない、しかし説明義務も果たさなくていい。そういう事になっているんじゃありませんか。そう聞いているんです。なってるでしょう。
千葉大
    棚橋委員の、あの〜、そのような一つの設定をされてのご質問については、仮定の質問と言う事で、私から答弁は差し控えさせて頂きます。

棚橋委員
    いや、だからそうじゃないでしょうと。この鳩山システムは仮定じゃなくて、完全に動いているでしょう。要は、捜査が為されているから説明はしない。しかし自分は訴追されない。そういう事になってるじゃないですか。

    これ現実でしょ。世の中には、自分は今司法の場に委ねられてるから、説明しないと言っているわけでしょう。今裁判になっているわけでもないんですよ。あくまで、鳩山総理、あるいは内閣の指揮に服する、行政官である検察あるいは警察が動いている段階で一切説明しない。しかし本人は、憲法上の規定で絶対に起訴されない。これはおかしい鳩山システムではありませんか、と聞いているのです。
千葉大
    え〜、繰り返しになりますけれども、棚橋委員の設定された仮定の〜、質問につきましては、私からの答弁は差し控えさせて頂きます。

棚橋委員
    李下に冠を正さずという言葉がありますが、検察官、検事は、法務大臣の指揮権に服する、そういう立場ですか。そうでありませんか。
千葉大
    一般的に、お〜、法務大臣の指揮権の下にございます。

棚橋委員
    一般的にしかないんですか。
千葉大
    え〜、どのように行使をするかという事は、え〜、個別の捜査との関りでございますので、お答えは差し控えさせて頂きます。

棚橋委員
    答弁が違います。一般指揮権以外に、個別指揮権があるかどうか、ほら六法読んでください、六法読んでください。秘書官が出してますから、六法読んでください。・・・・一般指揮権以外に指揮権はないんですね。
千葉大
    そ、そのような事を申し上げたわけではございません。一般的に指揮権があるという事を、御答弁申し上げた、と言う事でございます。それぞれ、個別の事件については、え〜、今お答えをすべきものではないと思います。

棚橋委員(これは不規則発言)
    一般的指揮権以外に個別指揮権があるかどうか、きちんと答えさせてください。
棚橋委員
    答えてません。法律上、個別の指揮権以外に一般的な指揮権があるかどうか、法務大臣に聞いてるんです。基礎中の基礎ですよ。
千葉大
    それは検事総長を通して指揮権を行使をするという事は可能でございます。

棚橋委員
    すいませんがねぇ、大臣も法律勉強したんですよね。違ったんでしたっけ。それは、あの、基礎中の基礎ですよ。個別指揮権と一般的指揮権、あの戦後の政治史から考えても、法律の常識から考えても、基礎中の基礎ですよ。では、お伺いしますが、検事総長に個別的指揮権があるならば、あなたは鳩山総理の周辺に対する捜査に関して、厳格に捜査をすべきという、個別指揮をする気はありますか。
千葉大
    また同じになりますが、個別の、かつ問題につきましては、個別の捜査活動につきましては、発言は差し控えさせて頂きます。

棚橋委員
    個別指揮権を鳩山総理の問題に対して、指揮するつもりはあるかないかと聞いているんです。個別の捜査について聞いてるんじゃなく、指揮権を発動するつもりがあるのか、まったく無いのか聞いてるんです。指揮権を発動するのは法務大臣の権限です。
千葉大
    まさに個別の問題でございますので、私から捜査活動について、お答えは差し控えさせて頂きます。

棚橋委員
    個別指揮権を発動するつもりか全く無いのか、あるのかと聞いてるんです。この捜査の現状がどうなっているのかと、聞いてるんじゃないんですよ。お願いします。
千葉大
    個別の事件を想定したご質問には、捜査の活動について、私から答弁は差し控えさせて頂きます。

棚橋委員
    こういう、はぐらかし答弁やめて頂きたい。捜査の過程を聞いてるんじゃありません。指揮権を発動するつもりが、あるのか、ないのか。指揮権を発動するのはあなたの権限です。聞いてるんです。
千葉大
    これも、個別それぞれの、え〜、関る問題でございますので、今御答弁をする事は差し控えさせて頂きます。

棚橋委員
    そうすると、李下に冠を正すつもりはないんですね。じゃ、逆に鳩山総理の疑惑に関して、検事と接触する予定はありますか。
千葉大
    同じになりますが、はぁ、個別の問題について、答弁は差し控えさせて頂きます。

棚橋委員
    ちょっと待ってください。今なんて言いました。あの、当然私は、鳩山総理の問題に関して、検事と接触するつもりは無い、という答弁が来ると思っていたのですが、個別の案件だからお答えしないという事は、接触する可能性もあるわけですね。
千葉大
    個別の問題については、答弁を差し控えさせて頂きます。

棚橋委員
    今の御答弁、正直言って驚きました。私は個別の案件に関して、検事と接触するつもりはないと、当然かえってくるものと思ったら、個別の案件についておこたえするつもりは無いという事は、逆に言うと、その可能性があるという事を法務大臣は示唆してるんですよ。これは法務行政に対する、大きな信用失墜ですよ。

    なによりも、先ほど申し上げましたように、鳩山システムでは、訴追されないけれども、説明責任を果たさないという事が可能になります。これは御本人に聞かなければわかりません。各委員会で総理に出席を求めた事もございます。これまで、現職総理がここまで疑惑のオンパレードだった事はございません。

    委員長、是非、この委員会に鳩山総理の出席を求めましたが、鳩山総理の出席、委員長お願いいたします。
委員長
    ただいまの棚橋君の意見につきましても、後刻理事会で協議をさせて頂きます。
棚橋委員
    という事は、鳩山総理を、先ほど申し上げたように、捜査が及んでいるから一切答えないが、起訴はされないという鳩山システムを、新たにと言うか、作り上げた鳩山総理を、この委員会に呼ぶという事を、委員長は前向きに検討していただけるんですね。
委員長
    棚橋君に申し上げます。そういう事を申し上げているわけではございません。今の意見は意見として、理事会で協議をさせていただく、そういう風にもうしあげているわけでございます。
棚橋委員
    私が、脱税総理と言った時には、大変積極的に控えるようにと仰いましたけれども、鳩山総理を呼べと言った時には、まったくその熱意がないですね。大変残念な事に、なお前例ご存知無い方が多いようですから申し上げますが、各委員会に総理が出席した前例はたくさんございます。どうか勉強してください。

    それでは、法務大臣。もう一度最後に聞きますが、あなたは、起訴されない立場にある鳩山総理に、自らの疑惑は、国会ないし国民の前で、積極的に説明すべきだと、国務大臣ないし法務大臣としてです。個別の案件の捜査の話をしているわけじゃございません。政治家として進言するつもりは無いんですね。お答え下さい。
千葉大
    それぞれ的確に判断すべき問題だと思っております。

棚橋委員
    では総理は的確に判断してるんですね。
千葉大
    それぞれが的確に判断すべき問題だと思います。

棚橋委員

    大変見事な官僚答弁でございます。残念ながら、法務大臣に政治家として、もっと真摯な反省の態度。シン・ガンス(辛 光洙)の件にしろ、鳩山疑惑にしろ、思っていましたが、非常に残念であります。これからさらに、この問題を、この委員会で、追及させて頂きまして、法務大臣は、とくにシン・ガンス(辛 光洙)の問題については、この後また閣議があれば記者会見が行なわれます。それまでに、シン・ガンス(辛 光洙)の問題に関して、嘆願請求書を撤回するつもりはありますか。調査中と言う事でまだやりませんか。それを最後に聞かせて頂きます。
千葉大
    先ほど御答弁申し上げた通りでございます。

棚橋委員
    大臣どちらです、どちらです。次の閣議後の記者会見までに、嘆願書を撤回するつもりがあるのか、ないのか、イエス、ノーだけで答えてください。撤回するつもりは、ある、ない。
千葉大
    先ほど御答弁申し上げた通りでございます。

棚橋委員
    委員長
委員長
    次に「いなだともみ」君。

まずどうでも良い感想を一つ。棚橋委員が質疑を行なう画面の左上右上ぐらいに退屈そうにしておられる方がおられます。

国会の委員会室なんて見たこともないので確証はもてませんが、席の感じ、配置、その人の態度から委員、すなわち国会議員と思われます。その方が、そっくり返ってお眠り遊ばされている様子が延々と映されています。

その日の議題への関心、その方のその日の御体調の関係もあるのでしょうが、あまり快い風景ではありませんでした。昔と違い、質疑の様子は動画として繰り返し見れるように公開されていますから、今後は注意されたほうが良いように思います。固定アングルですから、どこまで映るかの確認は容易と思われますから、そこに映されて公開される方は、そういう事も意識されるほうが良いと思われます。あくまでも老婆心からのアドバイスです。


そんな事はともかく、この押し問答は国会論戦としては千葉大臣の逃げ切り勝ちなんでしょうか。途中から千葉大臣の答弁の文字を起すのが大変な苦痛になった事を感想としておきます。もうちょっと詳細に見れば、棚橋委員は千葉大臣の答弁のお蔭で、遮られる事無く、自説を思う存分開陳できたとは取る事が出来ます。それが最初からの狙いであれば、棚橋委員も戦略通りの質問が出来たとは言えます。

ただ自説の開陳だけではチト寂しいのですが、辛うじて指揮権問題で小さな有効程度は取ったと言えます。「個別の問題」で平押しする千葉答弁ですが、指揮権の発動するか否かは「個別の問題」でよいと思いますが、検事に会うかどうかも答えなかったのは、棚橋委員の指摘の通り、チト拙かったかもしれません。まあ、会うとは言ってませんから、小さな揚げ足程度の有効で、効果にもなってはいないと感じます。

指揮権問答も小さな有効かもしれませんが、これも有効と言うほどのものではないかもしれません。この程度は、憲法75条問答と同様に、試合場に上る前に勝手に転んで観客の失笑を買っている程度のレベルです。あまりにも程度が低すぎて、政治的にかえって影響が乏しくなる代物です。もっとも法務大臣の資質の問題ぐらいにはなるでしょうから、指揮権と憲法75条を合わせて辛うじて効果ぐらいかもしれません。


もう一つ、これも解釈が難しいのですが、棚橋委員がひたすら追及したのは、憲法75条の問題です。千葉大臣は法務大臣として、「個別の案件」として答弁を差し控えられましたが、起訴の同意をする当事者は法務大臣ではなく、総理大臣です。ひょっとすると、ここまで延々と成果の得られない質問をひたすら重ねたのは、法務大臣では答えられない問題である事の立証だったかもしれません。

これが総理大臣なら答弁はどう変るのでしょうか。総理大臣であっても「個別の問題」「仮定の質問」ではありますが、自らの問題でもあると言う側面があります。憲法75条の「同意」をするかどうかの質問に「個別や、仮定の問題である」として、答弁を差し控えることが出来るかどうかです。そこに導くための布石であれば、棚橋委員は必要な手を打ったような気もします。

棚橋質問の要点をまとめると、


鳩山疑惑の追及の場 追及する人 問題点
国会の場 国会議員 「捜査の場」「司法の場」での解明に委ねると総理は主張。
捜査の場 検察官 行政官である検察官に対して法務大臣は指揮権があり、法務大臣は内閣に属する。
司法の場 裁判所 裁判所に出るには、憲法75条により総理大臣の「同意」が必要。


最後の司法の場で追及する人を裁判所としましたが、実際に追及するのは起訴を行なった行政官である検察官になります。裁判所とは人ではなく場になります。裁判になれば内閣に所属する法務大臣の検察官への指揮権はどうなるんだろうの疑問がふと浮かびましたが、そこになると皆目見当がつきませんので、御存知の方はコメント頂ければ幸いです。

とりあえずこの3点を「鳩山システム」として執拗なぐらい棚橋委員は追及していましたから、これを踏まえた追及は論理として興味があります。法務委員会への総理出席は理事会で押し潰す事は出来ても、党首討論とか、別枠の集中審議が実現すれば、もう一度蒸し返す事は可能ですし、その時に答弁を求められるのは鳩山総理御本人になります。今国会で実現するかどうかは不透明ですが、関心が持たれるところです。

最後にもう一度、鳩山由紀夫氏が野党時代に国会で力説されたお言葉を紹介しておきます。

    疑惑を指摘された閣僚が、資料を整備し、説明責任を果たすのは、最低限の務めです。これが出来ない閣僚は、自ら職を辞すか、罷免すべき事も当然であります。
最後は千葉大臣の機械的答弁で尻すぼみになった感もありますが、これにて4回シリーズは終わらせて頂きます。少しは楽しんで頂けましたでしょうか。なにぶん話し言葉の聞き取りのために、細かな聞き間違い、打ち間違い、変換ミスはあるでしょうが、許容範囲で御容赦下さい。