棚橋 vs 千葉 Part 2

棚橋 vs 千葉 Part 1の続きです。Part 1の最後部がPart 2につながるので、そこの部分を先に提示しておきます。

棚橋委員

    もう一点。鳩山さん、脱税したでしょう、違法献金等の疑惑、きちんとこれは起訴するんですか、お答え下さい。
千葉大
    えぇ、これにつきましては、捜査当局が厳正に、法に基いて、えぇ、必要があれば捜査をし、そしてまた起訴をするという事になるとであろうという事になると思います。それについては、捜査の具体的なことについては、私から申し上げる事はできません。

棚橋委員
    今、必要があれば捜査をするという事は、捜査してないんですか。
千葉大
    個別の捜査活動につきましては、私からお話を申し上げる事はできません。

棚橋委員
    でもいま、仰ったじゃないですか。必要とあれば捜査をする、必要とあらば捜査をしているものとして、必要とあらば捜査をするって事は、捜査をしていないって事でしょ。
千葉大
    必要であれば捜査をきちっとする事であろうと言うことです。それは今やっているのか、あるいはこれからやるのか、その事については具体的な捜査の活動でございますので、私からここで申し上げる事はできません。

この後が第3部(全部で6部)になります。どうも本来の目的である憲法75条問題に到着しそうです。

棚橋委員

    鳩山さん。脱税総理の不正献金疑惑等については、国民がきちんと明快な説明を求めているにもかかわらず、司法の場で明らかになると言う風に、そういう趣旨の事を鳩山総理は言っておられますが、では、そもそも総理大臣は、起訴されるんですか、起訴できるんですか。
議長
    棚橋君に申し上げます。決め付けるような表現がございましたけれど、あの〜、どうかと思いますので、後刻理事会において協議をさせて頂きたいと思います。棚橋君。
棚橋委員
    委員長に申し上げます。7200万円脱税していて、脱税でないと言うのなら、これは他にどういう用語を使ったら良いんでしょうか。わかりません。委員長、ちょっとその点を御指摘されるなら教えてください。
委員長
    棚橋君に申し上げます。決め付けるような発言がございましたものですから、この問題については後刻理事会において検討させて頂きます。棚橋君。
棚橋委員
    委員長。どうも民主党の諸君はマスコミも見てないし、テレビも見てないようですが、総理自身が7200万万円認めてるんですよ。修正申告したって言ってたでしょ。これ脱税じゃないんですか、何と言う用語なんですか。委員長、教えてください。そういう風に仰るならば。委員長自身が、あなたは公平中立なんですか。鳩山さんの弁護士なんですか。

    委員長、7200万円の脱税が決め付けるような言葉と言うのなら、7200万円の何と言ったら良いのか、お教えください。
委員長
    棚橋君に申し上げます。決め付けるような表現でございましたから、この問題の扱いについては理事会で協議しますと申し上げているわけであります。
棚橋委員
    委員長、公開された自由の議論の中での・・・
委員長
    私は現在棚橋君にご説明をさせていただいておりません。
棚橋委員
    では委員長。委員長、公開された議論の過程の中で、質疑者の発言を封じるような、中立公正でないやり方はやめてください。委員長お願いします、御答弁。・・・ちょっと委員長、時計止めてください。時間がもったいない。時計を止めてください。
・・・・・・速記停止のため、約2分間無音状態・・・・・・


棚橋委員

    脱税総理と言う言葉、使ってよろしいんですね。委員長。
委員長
    棚橋君に申し上げます。その表現については、理事会で検討させて頂きます。
棚橋委員
    大臣にご質問申し上げます。先ほど申し上げましたように鳩山さん、脱税総理はそもそも起訴できるんですか。
千葉大
    個別の捜査活動に対しては、発言は差し控えさしていただきます。

棚橋委員千葉大
    とくにそのような事は記載はございません。

棚橋委員
    ちょっと、秘書官、憲法75条をお見せしてください。ちょっと委員長、時計止めてください。今からわかりますから、時計止めて、時間がもったいない、余りにも今の答弁はひどい。時計止めてください、読まなきゃいけないですから。憲法読むのに時間かかるもん。お願いします。
千葉大
    あの、憲法の規定について私もチョット誤解をいたいしました。はい、記載はされております。

棚橋委員千葉大
    憲法の規定をそのまま適用すると、そういう解釈になるかと思います。

棚橋委員
    そうすると、脱税総理は、自分は起訴されない状況にありながら、一方で自分の違法献金に関しては、司法の場、捜査の場に委ねられているから一切説明しない。こういう事になるわけですね。7200万円脱税して、5000万円の違法性のある献金があると言っておきながら、要はマス・メディアも含め、国会でも一切、説明はしない、捜査中だ。

    一方で自分は絶対に起訴されないところに守られているわけですね。つまり鳩山由紀夫さんは、要は治外法権の人なんですね。大臣、お答え下さい。
委員長
    大臣の答弁の前に棚橋君に申し上げます。不適切な表現については、先ほど申しましたように、理事会で後刻協議をさせてもらいますので、それまで、なるべく差し控えて頂きたいと思います。
棚橋委員
    今先ほど委員長の仰った事と、今仰った事は違います。後刻理事会で協議しますと仰ったのだって、私が脱税総理と言う言葉を使う事に関して、控えろと言う言葉が先ほどございません。逆に言えば委員長は、この公正中立な委員会を民主党の鳩山総理にあたって、言論を封じるんですね、この委員会で脱税総理と言う言葉を使っちゃいけないと委員長の権限で命じるんですね。
委員長
    表現につきましても、理事会で協議をさせて頂きますので、出来るだけ誤解を招くような、紛らわしい表現は、控えて頂きたいというのが委員長の意見であります。(誰か女性議員?が近づいて「ボソボソ」)理事会で協議させて頂きます。(再び「ボソボソ」)私は不適切な表現だと思っております。
・・・・・・速記停止のため、約7分半無音状態・・・・・・

委員長

    ただいま、棚橋氏についての私の意見に付きましても、改めて後刻理事会で協議をいたしますとも、断定的な表現はなるべく避けて発言さして頂く様にお願い申し上げたい、と存じます。それでは先ほどの質問に対し、千葉大臣よろしくお願いいたします。
棚橋委員(おそらく不規則発言)
    脱税総理は起訴されないし、マスコミに釈明しなくても良い、つまりそういうことですね。
千葉大
    私の、法務大臣としての立場でお答えをすべきものではないと思います。

棚橋委員
    違います。総理は司法の場に議論が移っているからと言いながら、一方で憲法上総理は訴追されないと言う事で守られているわけですね。一方で捜査中だからと言って、説明を拒むわけですね。だから説明義務も負わない、起訴もされない、治外法権の人だと言っている訳です。
千葉大
    治外法権と言うのは、あの、私はそのような事は無いと思っております。訴追の権利を免れない、それは憲法上でも既定をされている事ではございます。また個別の事件については、え〜、個別の事件については私から申し上げる事は差し控えさせて頂きます。

棚橋委員
    訴追の権利を免れないという事は、在任中訴追されないという事と別ですよ。だから今申し上げているように、鳩山さんは、自分で自分の起訴を同意しない限りは、起訴されないんじゃないですか。そして一方で、捜査の場に動かされていると言ってますけれど、検察官は行政官でしょ。法務大臣の指揮下にある行政官でしょ。

    自分たちの部下が、捜査をしているから一切国会では説明しない。しかし、憲法上起訴はされない。これは普通の人間にありうることですか、と言うより治外法権じゃありませんか。大臣としては、まず第一に、この問題に関して、きとんと説明すべきではないか。あなたは訴追をされないんだから、そういう事を総理に進言するつもりはありませんか。


あった、あった、「棚橋 vs 千葉」で確認したかった憲法75条問答がようやく原典で確認できました、目標達成です。YouTubeをザラッと流し見ながらピック・アップしたら100倍ラクだったのですが、やはりどういう審議展開で憲法75条問題が質疑され、どういう状況下で千葉大臣があの答弁を行ったかを知るには、最初から出来るだけキチンと見る必要がある・・・なんて意気込んだのが苦労のタネになってしまいました。

これだけ苦労したので目的部分をもう一度提示します。目的の部分は3分30秒ぐらいから始まります。

棚橋委員

千葉大
    とくにそのような事は記載はございません。

質疑に躊躇なく反応され、非常にキッパリかつ簡潔に答弁され、大臣席に颯爽と舞い戻られております。どうしても嫌味に取られそうなのですが、千葉大臣の政界入りまでの経歴は、wikipediaに、

横浜国立大学学芸学部附属横浜中学校を経て東京学芸大学附属高等学校を卒業し、1971年(昭和46年)中央大学法学部を卒業する。1982年(昭和57年)弁護士登録。横浜弁護士会に所属。弁護士としては、厚木基地爆音訴訟、富士見産婦人科事件、宇都宮病院事件を担当する。

司法試験に合格され、現役の弁護士として有名事件も担当された事がわかります。もちろん弁護士であるから、いつでも憲法の各条文を空で言えなくてはならないとは思いませんが、動画で確認する限り、非常な確信をもって断言されたように見えます。

法務委員会ですから、六法全書ぐらいは常に備え付けられていると思いますし、記憶があやふやなら、秘書官に確認するのは決して恥で無いとも思うのですが、驚くほどお粗末な答弁であると思われます。棚橋委員もまさか千葉大臣が憲法75条の条文確認だけで、これだけの醜態を曝すとは予想外だったと思います。この質疑は後の質問の前提とか、前振り程度の基本的な事実の確認だからです。

指摘されれば即座に赤恥をかくような答弁ですが、指摘後の答弁もなかなかのものです。

    あの、憲法の規定について私もチョット誤解をいたいしました。はい、記載はされております。
これも嫌味になってしまいますが、千葉大臣の「チョット誤解」は、今の今までそう誤解していたと聞こえそうにもなります。あんまりやると揚げ足取りもやり過ぎだと言われそうなので、この程度にしておきます。私としては一次資料で確認できた事を喜びとしておきます。



のっけで失笑を買った憲法75条問答ですが、棚橋質問の狙いは、憲法75条をテコに展開されます。憲法75条を引用しておくと、

第75条

 国務大臣は、その在任中、内閣総理大臣の同意がなければ、訴追されない。但し、これがため、訴追の権利は、害されない。

話は鳩山総理の7500万円の脱税問題、棚橋質疑によれば5000万円以上の違法性を帯びた政治献金問題に展開します。捜査がどうなるか、どうなっているかについては、法務大臣が答弁しないのはもちろんなんですが、さすがにそこは攻めていません。攻め口としたのは、鳩山総理の説明責任にしたように思います。

ソースを探し出す気力が無いのですが、棚橋質問にもあるように、鳩山総理は疑惑の解明を司法の場、捜査の場に委ねるとの発言はあったかと思います。一般的に司法が介入した時に、そういう姿勢を取る事は間違っていないのですが、これが総理自身の疑惑となれば、普通とは扱いが異なる事を指摘しています。

一般的には

    警察捜査から送検 → 検察が起訴の判断 → 裁判所の判断
非常に大雑把な解釈として、
  1. 検察が起訴しない
  2. 裁判所で無罪を勝ち取る
どちらかの場合であれば疑惑は晴らされたとします。例外については煩雑になるので、ここでは伏せます。ところが総理を含む国務大臣が捜査を受けたときには様相が変わります。今回の総理の疑惑の場合は、東京地検の捜査のようですからマスコミ報道が重視する「送検段階」は既に終わっていると考えられので、
    地検が起訴の判断 → 総理が起訴に同意する → 裁判所の判断
ここで実際についてはわかりませんが、地検が起訴をするとマスコミ報道でもするのでしょうか。情報公開と言っても良いかもしれません。おそらく内密に総理の意向を窺って行動すると考えます。そうですね、もし総理以外の国務大臣であれば、起訴するにしても国務大臣のまま起訴させるような事態は、政権を転覆させる可能性が大ですから、圧力をかけて辞任させて、その後に起訴させる方式を取ると考えます。

ではでは、今回のように総理自身であればどうなるかです。この憲法75条問題を棚橋質問は指摘しています。地検自身の起訴判断は、おそらく永遠の闇の中に葬られると思います。つまり起訴されないときに、鳩山総理の疑惑が起訴に値しないものであったのか、それとも総理の意向で起訴に同意しなかったのかは誰にもわからないと言う事です。

もちろん鳩山総理も死ぬまで総理を続けているわけでは無いので、地検としてどうしても起訴したかったら、起訴の総理不同意の状態のまま鳩山氏が総理の座を降りるのを待ち、それから起訴するというのも机上では可能です。しかし現職の総理ですから、在任中に検察庁人事に大きな影響を及ぼし、辞任後も起訴されないように、不起訴の決定にしてしまうのも不可能で無いと考えます。なんと言っても総理ですからね。

クドクドと書きましたが、棚橋質問があぶりだしたかったのは、検察が捜査しようとも、事実上、総理が起訴されて、法廷の場で司法の解明を受ける事はありえない点かと思われます。総理起訴なんてなれば、民主政権が根こそぎ吹っ飛びますから、総理の言う司法の場、捜査の場での解明が実効性をまったく伴わない絵空事、遁辞の極みであるとしていると考えます。

つまり現役の総理なり他の国務大臣が起訴されることは事実上ありえず、もし起訴されるなら、辞任なり、罷免後でないと行なわれるはずがないとの指摘です。これは法制上の可能性と、現実の政治の成り立ちの2つの側面がありますが、法制上の可能性は「手続き上不可能ではない」以上の存在感は無いと言えます。

ですから司法の場の解明を国会で釈明しない理由に使うというのは、他の国会議員とでもまったく質の異なるものであると強調されているようです。チト複雑なレトリックなんですが、ユックリ読めば理解は十分に可能です。

もう一つ、こういう指摘をする事により、地検が本当に起訴するに値しないと判断しても、実は総理が不同意の特権を行使して、握りつぶしたのではないかの疑念が残ります。たとえ地検が起訴しないと公表しても、所詮出来レースの猿芝居ではないかの疑念が残るという政治的効果です。

これはこの問題を今後いかに責め立てても、おそらく千葉大臣は木で鼻を括ったように、

  1. 憲法75条にある「但し、これがため、訴追の権利は、害されない」を盾にひたすら突っぱねる
  2. 「個別の事件の内容については答えられない」の駆使
個別の事件について法務大臣が答えないのはそれで正しいのですが、棚橋委員はもう一つの訴追の権利を害されないにはかなり絡むと予想します。これもいくら絡んでも突っぱねるでしょうが、構図として千葉大臣が突っぱねれば、突っぱねるほど、「何か隠している」の疑惑が膨らむ算段です。

千葉大臣としては、総理を守るためにも、ここで巧妙な切り返しをしたいところでしょうが、さて論破するほどのレトリックを構築できるかになります。出来なければ、切り口上の答弁に終始せざるを得ませんし、そうなるのは棚橋委員の思う壺になります。時間が長くなれば、思わぬボロが出る危険性も高くなります。


さてとここまで色々思いをめぐらせれば、どうしても続きを見たくなります。憲法75条問答の個所が確認できれば、文字起こしをやめようと思ったのですが、こりゃ、どうしても続きを読まないといけません。国会論議なんて退屈で付き合いきれる代物ではないと長年思いこんでいましたが、必ずしもそうではないと新たな発見をした思いです。

難点は文字に起すのが極めてメンドクサイことです。。。続きの書き起こしが出来れば公開します。早く続きを知りたい方は、動画はYouTubeに公開されていますから、お手軽に御確認下さい。