ワクチン接種回数みたいな雑談

先にお断りしておきますが、接種回数の医学的考察はまったくと言ってよいほどしていません。今日は真面目なお話ではなく、接種回数を巡る軽〜い与太話をかき集めた雑談です。出来の悪い日はそんな事もあると言う事でお目こぼしお願いします。


初回出荷分は59万人分だったそうです。これは2回接種を1人分と計算しており、118万回の接種分になります。現在これが足りなくて大騒動しているのですが、声として「希望者が多すぎた」と言うのがあります。しかしですが、当初計画でも医療関係者は100万人を見込んでいました。100万人は少なすぎるんじゃないかの評価も有りましたが、計画では100万人です。

もっとも2回接種の予定なら、計画通り100万人程度であるなら、2回の接種間隔は「4週間が望ましい」ですから、次回出荷分で間に合う計算であったかもしれません。しかし今の供給本数では厚労省の計画の100万人であっても、11月に医療関係者以外にワクチン接種を行うのは難しかった気がしています。もちろん第2回のワクチン供給がドド〜んと増えるのであれば話が変わりますが、残念ながら第2回の供給数に関する情報は存じません。

推測ですが現実の希望者はさらに多数となります。全国でどれぐらいの数になっているかのソースが見つからないのですが、のぢぎく県では、

    希望者13万6081名に対し、県への配布量が2万3700本
1mlと10mlバイアルが混在しているため何人分かは不明なのですが、実際に配られたワクチン数は、
  • 病院:1回接種分として10ml 3本を基本に配布
  • 診療所:1回接種分として1ml、2本を基本に配布
ちなみにのぢぎく県では病院、診療所の規模に関係なく一律で配布されたようです。50床程度の小病院でも中央市民病院でも10mlバイアルが3本と言うことのようです。ちなみに愛知では、

    10人未満の医療機関には希望人数分をそのまま割り当て
    10人以上50人以下の医療機関は一律10人分
    51人以上の場合は希望数の20%
    を原則としてそれぞれ割り当てる。

ミヤテツ様からの四国の某県の情報では、

当地の基幹病院に研修にこられている先生からの情報です。この先生は合併された元町立病院(現市立病院)に勤務されているのですが、1mlバイアルが7本(希望調査人数の約3分の一位の人数分)が唐突に送りつけられ、問い合わせをあれこれ(この数量はあっていますか、うちの希望は50数人分なんですが等々)しているうちに、県から7本送りましたというFAXがあったとのことです。7本の内訳は、いろいろ考えると、外来NS分+医師4人(ご他聞にもれず、医師不足です)というものだったそうです。

全国的にどこも似たり寄ったりのようで、おおよそ当初計画の2倍から3倍程度の接種希望者が出てきていると推測されます。簡単に言うと全然足り無いという事です。この配布の決定は都道府県医師会が行ったとされます。都道府県によって差はあり、勤務医冷遇の声も出てはいます。別に医師会の肩をもつわけではありませんが、医師会にも超特急の強力な要請が行われたと推測します。おそらくですが、

  1. すべての委託医療機関で接種が開始できるようにすべし
  2. 10/19に可能な限り開始すべし
推測に推測を重ねますが、都道府県への配給数もギリギリの段階なって通知されたと考えます。厚労省からの通知が10/16(金}夜であったとしても、さして不思議とは思えません。もっと遅かった可能性すら十分あります。のぢぎく県だけでも4232機関もあるわけですから、どこに重点を置いて配布するのかの検討時間さえほとんど無かったと考えられます。

バイアルも1mlバイアルだけならまだ融通も利くのですが、10mlバイアルとなると成人換算で10人分(20回分)となります。ドカッと混在して配給されたでしょうから、即座に配分量を決めるにもどうしようもなかったと推測されます。とくに「すべての委託医療機関で」が本当に条件にあれば、それだけで配布方法の選択が一遍に狭くなります。配布を巡っても時間不足で大混乱であったと思いますし、卸問屋も御苦労様です。


さてなんですが、接種回数問題は、医療関係者にもワクチンが全然足りないの情報を厚労省が把握した頃に突如浮上します。厚労官僚は輸入ワクチンの購入に積極的でなかったとのアングラ情報があります。厚労官僚が後ろ向きであったため、前厚労大臣が強行突破して購入の方向性を切り開いたとも言われています。あくまでもアングラ情報ですけどね。

国産ワクチン生産量は、当初2000万人分弱としていたのが、紆余曲折の末に2700万人分に何故か増えています。増えて悪いわけではありませんが、接種回数が1回にもしなれば5400万人分になります。厚労省の当初見込みは5000万人分を準備するであったはずですから、ほぼ国産ワクチンで足りる勘定です。海外産の4950万人分のかなりの部分が宙に浮く勘定です。

何故に土壇場で接種回数問題が浮上したかは一種の謎です。前向きに考えれば、「重症化の予防」のために、現時点では限られた数のワクチンを広く薄く使うという考え方はあります。それはそれで一つの考え方なんですが、結果としてさらに混乱に油を注ぐ結果になっています。10/19接種開始の大臣宣言を履行するために、都道府県も医師会も医療機関も無理に無理を重ねています。

この上で接種回数でまた変更があれば現場は「たまらん」と言うのも本音です。接種回数問題はドタン、ドタンともめた後、10/20付共同通信(47NEWS版)より、

厚生労働省足立信也政務官は20日、新型インフルエンザの国産ワクチンの接種回数について、最優先グループのうち20代から50代の健康な医療従事者は1回とし、妊婦、基礎疾患(持病)のある人、1歳未満の乳児の保護者らは当面2回接種とする方針を発表した。1歳から13歳未満の子どもについては2回接種が確定した。

ここで「確定した(医療機関には連絡なし)」接種回数は、

  1. 20代から50代の健康な医療従事者は1回
  2. 妊婦、基礎疾患(持病)のある人は2回
  3. 1歳から13歳未満の子どもは2回
  4. 1歳未満の乳児の保護者らは2回
この「確定した(医療機関には連絡なし)」も詳細が欲しいところで、医療従事者も60歳以上は2回と言う解釈で宜しいのでしょうか。医師会員の平均年齢は約60歳であり、約半数はこの記事内容なら2回です。さらに気になるのは「1歳未満の乳児の保護者」です。通常は「20代から50代の健康」な方が大部分を占めると思われますが、常にインフルエンザ治療の最前線に立つ医療従事者が1回で、乳児の保護者が2回と言うのも整合性にやや欠くような気がします。

乳児の保護者が2回接種する事に異論はありませんが、乳児の保護者が2回であるなら医療従事者も2回にするのが筋と思うのですが、どういう説明をすれば良いのか不明です。説明と言うのは、感染防御効果の面もありますが、乳児の保護者からすれば費用の問題もあります。「なぜに私たちは費用が多いのか」の質問ぐらいは出てくるような気もします。そういう人もいますからね。

ちょっと寄り道ですが、乳児の保護者への接種の目的は乳児への感染予防のはずです。しかし両親だけ防御しても他の兄弟姉妹、同居親族が無防備なら価値が下がると素直に思います。もっとも乳児の保護者への接種は来年の話ですから、ワクチンの余り方でまた方針は変わるのは確実でしょう。

それはともかくこの「確定した(医療機関には連絡なし)」も妊婦と中高生に関しては「当面」の条件付のようです。

 妊婦らのほか、中高校生、65歳以上の高齢者も当面2回接種が前提。11月中旬にまとまる健康な成人を対象とした臨床研究の最終報告などを踏まえ、その都度判断するとした。

 妊婦と中高生については、最大100人程度の規模の臨床研究も新たに実施。妊婦は11月中旬、中高生は11月下旬から研究に着手し、それぞれ1カ月後にまとまる結果を踏まえて接種回数を最終決定するという。足立政務官は「科学的な根拠というよりも(判断の)参考データとなる」との考えを示した。

 持病のある人は、全体の方針が1回接種に変更された場合でも、個別の判断で2回接種することが可能とした。

持病のある人の判断は医師及び患者の裁量と言うのは良いのですが、まだまだグルグル変わる要素がふんだんにあるようです。

  1. 65歳以上の高齢者:11月中旬にまとまる健康な成人を対象とした臨床研究の最終報告などを踏まえ、その都度判断
  2. 妊婦:12月中旬(11月中旬治験開始)の結果により、その都度判断
  3. 中高生:12月下旬(11月下旬治験開始)の結果により、その都度判断
高齢者や中高生は接種スケジュールからすると治験結果を踏まえる時間はありますが、妊婦は接種中にまたコロコロ接種回数が変わるかもしれません。皆々様要注意ですから、心しておいてください。


ここでなんですが、接種回数論議に微妙に影を落とす要因があります。医学とはまったく無関係なんですが、現時点ではワクチンは不足していますが、時期こそ遅れるものの日本のワクチン確保数は2回接種で1人分換算で、

    国産2700万人分、海外産4950万人分、あわせて7650万人分
1回接種の範囲が広がれば、人口を越える量のワクチンが溢れる可能性があります。これらは国が全量買い取ったとしていますから、大量に売れ残ればすべて国の負担になります。外国に転売するという選択もありますが、できる限り国内で消費して欲しいと考えているはずです。そうなるとになるのですが、どこかで接種回数の迷走が再び始まるかもしれません。

本音で言えば、現在の医療機関は季節性のインフルエンザ接種を行うだけでも目一杯の状態です。季節性の接種人数は今年は4000万人程度とされています。ここに季節性と同じぐらいか、それ以上の新型接種が圧し掛かればパンクしそうというところです。まさかと思いますが、新型が売れ残りそうになったらディスカウント・セールをやらかさないでしょうね。それも医療機関負担でなんてになると「たまらん」と言うところです。

ちなみに神戸市の季節性インフルエンザの接種価格は公定価格です。それが今年1000円引き下げられたのですが、引き下げられた説明を読んで、私も職員も大笑いしています。本当は引きつったのですが、引き下げられた1000円の解説して、

市の500円は公費負担ですからまあ良いとして、医療機関の負担とは初めて聞く表現です。負担も何も単に「値下げ」なんですが、値下げとせずに公費負担と同格の扱いにするセンスにギャグを感じた次第です。同じような調子で
    新型ワクチン接種を進め、希望者の経済的負担を軽減するために、医療機関が2000円負担するものとする
こんな事を突如宣言しないかも心配しておきます。今や何でもありですからね。