8/1に高松市民病院が労基署の是正勧告を受けた話を取り上げましたが、その時の7/30付四国新聞にある病院事務局のコメントにあきれたものです。
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「はっきりしないが、医師は徳島大などから数年単位の派遣が多く、協定の必要はないと勘違いしていた可能性がある」
同市立の香川、塩江の両病院でも、市民病院と同様に医師と残業に関する労使協定を結んでおらず、今後締結する方針という。
てな事がボロボロと零れるわけです。さらに続報が出まして、8/1付四国新聞より、
坂出市立病院も結ばず/残業の労使協定
高松市民病院が労使協定を結ばず医師に残業させていた問題で、坂出市立病院(香川県坂出市文京町、砂川正彦院長)でも、医師を含む全職員と残業に関する協定を結んでいなかったことが31日、市立病院への取材で分かった。残業代は支払われており、市立病院庶務課は「公務員であるため、協定自体が免除されると思っていた。認識不足。早急に対応したい」としている。
市立病院によると、2月に坂出労働基準監督署から指摘を受けて判明。過重労働回避のため労働基準法で必要とされている残業の労使協定を、医師をはじめ、看護師や事務員、医療技術員らすべての職員が結んでいなかった。
協定の対象となるのは162人。市立病院の2007年度決算統計によると、年間で計約1万9千時間の残業が発生し、およそ5890万円の残業代を支払っている。1人当たりの平均残業時間は医師や事務員が月15時間程度、看護師が同9時間程度という。
同監督署からの指摘を受け、残業上限を月45時間以内などとする協定の素案は策定しており、8月中に協定締結に向けた組合交渉を予定している。
一方、三豊観音寺市医師会が指定管理者として運営している西香川病院(高瀬町)も協定を結んでいなかったことが判明。同病院は「夜間の急患対応なども少なく、日直や宿直で対応できる」としている。
この記事では坂出市立病院と西香川病院も労使協定を結んでいない事が報じられているのですが、ここの病院側のコメントも極めて平和です。
坂出市立病院庶務課
「公務員であるため、協定自体が免除されると思っていた。認識不足。早急に対応したい」
西香川病院「夜間の急患対応なども少なく、日直や宿直で対応できる」
まるで化石のような人々が妄言を平然と撒き散らしてふんぞり返っているのが目に見えるようです。香川の公立病院経営者はにとって、滋賀県立成人病センターの話も、県立奈良病院産婦人科医時間外訴訟のお話も、文字通り「対岸の火事」であり、見えもしないし、聞こえもしない異国のお伽噺なのでしょう。
ここで坂出市立病院のHPを見ると非常に興味深い記事が掲載されています。坂出市立病院名誉院長塩谷泰一氏(院長:平成3年9月〜平成16年12月)による『新たな日常性の構築「かわらなきゃ」』です。恥ずかしながら塩谷氏の事はまったく存じ上げなかったのですが、傾いていた坂出市立病院の経営を立て直したカリスマ的人物である事がわかります。少々アクが強そうな気がするので、私は敬遠したいタイプの人物にも思いますが、業績としては敬意を表すだけのものを残されていそうです。
素晴らしい経営手腕は敬意を表しますが、労務管理は完全にお留守であった事は明らかに示されています。エピソードを一つだけ拾いますが、
救急患者を断わるのは日常茶飯事、なぜ夜遅く搬送してきたかと救急隊員や患者にまで怒鳴る始末で、良質な医療とは無縁の、まさに無法地帯であった。
おそらく叱咤激励して救急患者を受け入れる様にしたのでしょうが、どれほどの数であるかの情報が病院HPにはありません。参考になるようなソースとして宝塚市平成19年第 5回定例会−12月04日-02号にこんな一節があります。
市立坂出病院では、再建策の中で救急医療に力を入れて搬送率を70%に高めた
では坂出市の救急搬送数ですが、香川県宇多津市の広報誌に
坂出市消防本部での救急搬送件数は増加の一途をたどっています。平成15年からは、3,000件を越え、平成19年は3,516件と6年前に比べて1,000件も増加しています。
これらの資料から類推すると少なくとも年間2000件以上の救急受入を行っていると考えられ、単純平均で1日6件ぐらいと思われます。しかし四国新聞記事にある
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1人当たりの平均残業時間は医師や事務員が月15時間程度
ここで坂出病院庶務課のコメントから考えて、極めて低レベルの反論は予想されます。たとえば、
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救急応需は当直医が当直業務として行なっており時間外手当の支給は不要である
塩谷氏が掲げた「こんな勤務医はいらない」とした8か条があります。
- 人間としての基本的マナーに乏しい
- 時間・規則を守れない
- 協調性にかける
- 患者に対して誠実でない
- 技術・知識の向上への意欲がない
- 総合的に患者を診れない
- 反省心がなく謙虚でない
- 医療保険制度を理解せず経営に貢献しない
塩谷氏と現在の院長に贈る「こんな院長はいらない」としては、
- 院長として責任感に乏しい
- 時間・規則を御都合により歪曲する
- 独善性が強い
- 職員の正当な要望に対し誠実でない
- 急速に変わる勤務医の意識への情報収集の意欲がない
- 総合的に経営を見ず、帳簿上の収支にのみ関心を向ける
- 反省心がなく謙虚でない
- 労基法に目を瞑り、職員に違法労働を課して平然としている
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「公務員であるため、協定自体が免除されると思っていた。認識不足。早急に対応したい」
現院長の「あいさつ」にこういう下りがあります。
平成18年度も17年度と同様、市立病院事業への地方交付税からの繰入金はゼロのままで、黒字決算を達成いたしました。ちなみに、医療費削減政策の影響で、全国の病院の経営状態が悪化しているなか、繰入金ゼロで黒字を達成しているのは、約1000ある自治体の中で、当院を含めて2つだけとなっています。
もちろん誇れるだけの立派な成績ですが、平成21年度は「正しい労務管理」による正当な「時間外手当」をきっちり支払って「黒字」を達成される様に、鋭意努力を続けられる事を願っております。こういう問題が持ち上がったのは、カリスマの前院長が名誉院長に退かれて、求心力がやや落ちた部分と、時代の流れの情報収集を怠った事が原因とは思います。
ここで前院長が本当にカリスマ的人物なら、この不祥事からの建て直しに最後の活躍を見せる時かと思います。どこかの病院の様に、ウルサそうな連中を反乱分子として病院から追い出して、姑息に事を収めようとしたりは「決して」行なわず、正面から「正しい」労務管理を行なわれる事だと深く信じております。前院長は「次の世代への贈り物」として、こうとも書かれています。
日常性に埋没した前の世代の病院首脳陣と職員が我々に残してくれたものは、約25億円の累積赤字と古い体質、そして築後40年の老朽化した病院という三拍子そろった誠に見事なものであった。必然的にもたらされた医療レベルの低下は、市民生活にまで悪影響を及ぼし、坂出市全体の沈滞化へつながっていった。同じことを次の世代の市民や病院職員に遺して良いわけがない。
「古い体質」のなかには旧態依然の医師の労務管理も当然含まれます。時代はその改善を求めていますし、それが出来ない病院は次の時代に生き残れないと考えられています。次世代に坂出市立病院を残すための御健闘をお祈りします。