まず7/17付産経新聞より、
鳥取大に2億円賠償命令 治療ミスで乳児に脳障害
鳥取大医学部付属病院(鳥取県米子市)で治療を受けた際に病院のミスで重い障害が残ったとして、島根県の男児(8)と家族が鳥取大を相手取り、約2億3000万円の損害賠償を求めた訴訟の判決が17日、鳥取地裁米子支部であった。村田龍平裁判官は病院側の過失を認め、約2億円の支払いを命じた。
判決によると、男児は生後9カ月だった平成14年2月、急性細気管支炎で緊急入院。容体を監視する装置をつけていたが、心肺停止状態になっても警報が鳴らず、巡回の看護師が気づくまで13分間かかり、重い脳障害などが残った。
病院側は警報が鳴らないことは予見できず過失はないと主張していたが、村田裁判官は「装置は病院の責任で導入、使用しており、警報が鳴らないことも想定した監視を怠っていた」と過失を認めた。
同病院の豊島良太院長は「判決の内容を見ていないので、現時点ではコメントできない」としている。
9ヶ月の男児が急性細気管支炎の治療中に脳障害を負ったと言う痛ましい事故で、これに対する損害賠償の判決が下されたとの記事です。ただ、どうにも情報が乏しい記事で、賠償額約2億円である事と、裁判官のお言葉の、
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村田裁判官は「装置は病院の責任で導入、使用しており、警報が鳴らないことも想定した監視を怠っていた」と過失を認めた。
- 9ヶ月の男児であった
- 急性細気管支炎で入院していた
- 心肺停止になっても容体を監視する装置の警報音が鳴らず、発見まで13分かかった
- 重い脳障害が残った
そこで他の情報を探してみると、7/18付NHk鳥取(casch)があり、
鳥大病院のミスを認める
7年前、鳥取県米子市の鳥取大学医学部附属病院で、治療を受けていた赤ちゃんが脳などに重い障害を負ったのは病院側の監視体制の不備によるものだとして、裁判所は、17日、病院側の過失を認め、およそ2億500万円の損害賠償などを鳥取大学に命じる判決を言い渡しました。
この裁判は、平成14年2月、鳥取大学医学部附属病院に入院していた当時、生後9か月の男の赤ちゃんが脳などに重い障害が残ったのは、担当医師らの過失が原因だとして両親ら5人が鳥取大学を相手取りあわせておよそ2億3千万円の損害賠償を求めていたものです。
赤ちゃんは気管支炎で入院し、人工呼吸器で治療を受けていて、およそ13分間にわたって心臓停止状態になりましたが、病院側は、担当医師らが気づくのが遅れたのは、体内の酸素の量の低下を知らせるモニターの警報音が鳴らなかったためで、過失はないと主張していました。
17日の裁判で鳥取地方裁判所米子支部の村田龍平裁判官は、「警報音が鳴らなかったとしても大学病院側は鳴らなくなることを想定した監視措置をとっていなかった過失がある」と指摘し、鳥取大学にあわせておよそ2億500万円の損害賠償を命じる判決を言い渡しました。
ここでは賠償額が約2億円ではなく約2億500万円である事が確認できるのと、元の請求額が2億3000万円である事がわかります。もう一つ新たな事実として、
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人工呼吸器で治療を受けていて
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体内の酸素の量の低下を知らせるモニター
それと今のシステムは進歩しているかもしれませんが、7年前にサチュレーション・モニターが看護詰所で把握できるシステムが、鳥取大学病院とは言えあったかの疑問です。心拍モニターの集中管理装置は7年までもあったかもしれませんが、サチュレーション・モニターまであったかは自信がもてません。だからこそ併用が一般的ではないかと考えます。もちろんモニタリングを2系統にする意味合いもあります。
それとどうもかなり重症そうですから、患児がどこの病室で治療されていたかも情報が欲しいところです。一般病室であったのか、それともICU的な病室であったのかです。そこで、もう少しググってみると、医療情報PickUpの情報が見つかりました。
鳥取大学医学部付属病院(鳥取県米子市、三原基之病院長)で今年2月、島根県内の生後9カ月の男児が心停止状態になったのに医師らが気付かず、約13分放置されていたことが27日、わかつた。容体監視モニターの警報音を切っていた不手際などで気付くのが遅れた。男児は快復しているが、重度の障害が残る可能性もあるという。
男児には、心拍呼吸モニターと血液中の酸素濃度を測るモニターがつけられ、異変の際はナースステーションに警報音で知らせるようになっていた。しかし、病院によると、心拍呼吸モニターの警報音は、別の患者の関係者から「うるさい」と苦情があり切っていた。酸素濃度モニターの音は鳴ったと見られるが、医師や看護師は気付かなかったという。
これはどうやら事件発生時の報道記事のようです。ここではさらに確認できる事があります。まずモニターの情報ですが、
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心拍呼吸モニターと血液中の酸素濃度を測るモニターがつけられ
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心拍呼吸モニターの警報音は、別の患者の関係者から「うるさい」と苦情があり切っていた
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酸素濃度モニターの音は鳴ったと見られるが、医師や看護師は気付かなかったという
と言うのは、鳥取大学病院のシステムは存じませんが、一般病室への入院であれば患者への付き添いが行なわれると考えられるからです。とくに9ヶ月の男児の緊急入院であれば、両親ないし非常に近い親族が付き添いしていても不思議ありません。事故が起こった時刻は明記されていませんが、発見まで13分とありますから、もし鳴っていれば、付き添いの親族は13分間も警報音を聞いていた事になり誠に不自然です。
ついで言えば『別の患者の関係者から「うるさい」』と言われ、心拍呼吸モニターを切るぐらいですから、13分間も警報音が鳴れば、別の患者の関係者から抗議の一つも出そうなものです。
ちょっと事件の全貌が見えてきました。抜けているパズルはありますが、
- 9ヶ月の男児が細気管支炎で入院した
- 強い呼吸障害があり呼吸器管理を必要とした
- 治療は一般病室で行なわれていた(それも大部屋らしい)
- モニターとして心拍呼吸モニターとサチュレーション・モニターを装着していた
- 同室の患者の関係者から「うるさい」の抗議があり、心拍呼吸モニターは切られていた
- なんらかの原因で心肺停止が起こったが、サチュレーション・モニターの警報音が鳴らなかった
- 看護師が発見したのは13分後だった
前回の喀痰吸引終了時から、ちょうど13分後に看護師が訪れていたら心肺停止に気が付いたと言う推測です。その間のいつかの特定は不可能ですから、事実確認できる前回吸引終了時からの「13分」です。ただそうなると、非常に急激な症状の悪化が起こったことになります。13分前の吸引時にはそれなりに安定している事を確認していたはずなのに、わずか13分の間に心肺停止が起こったことになります。これは喀痰吸引時でなくとも前回のバイタルチェックが13分前でもかまいません。
確認できる情報を拾い集めると、最大の問題点は、
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心拍呼吸モニターの警報音は、別の患者の関係者から「うるさい」と苦情があり切っていた
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警報音が鳴らなかったとしても大学病院側は鳴らなくなることを想定した監視措置をとっていなかった過失がある
情報が限定されるため限界があり、私ではこの辺りまでが精一杯です。新たな情報がもし入ればまた考えましょう。