全国紙の産経新聞

インフルエンザも続き過ぎて食傷気味なので、今日は目先を変えてみます。

新聞の販売部数が減っていると良く言われますが、どれぐらい減っているかです。ただしこれも正確な数字の把握は困難で、まず公称部数があり、もうちょっとマシなのにABC協会部数もありますが、ABC協会でも「押し紙」の実態は十分には反映していないとされます。またABC協会の調査は会員以外には公表されていませんから、探すのも大変です。新聞も発売部数ぐらい「情報公開」しても良いと思うのですが、厄介な代物です。ですから私が狭い範囲で調べた部数もいろんな基準の部数が混じる面もあるとは思いますが、参考程度と言う事でよろしくお願いします。

まずは日本新聞協会のデータです。新聞協会による発行部数がどういう根拠の発行部数であるかが不明なのですが、全体の流れを見るぐらいの価値はあるかと思います。1998〜2008の変化がまとめられているのですが、ちょっと再計算も含めて表にして見ます。

セット販売数 朝刊単独部数 夕刊単独部数 総発行部数 朝刊総部数
1998 18739890 32952880 1977096 72409756 70432600
1999 18460759 33381465 1915057 72218040 70302983
2000 18187498 33702727 1818606 71896329 70077723
2001 18013395 33862600 1804758 71694148 69889390
2002 17616627 33900896 1680912 70815062 69134150
2003 17341993 33781260 1628771 70339887 68711116
2004 17464948 34066642 1613129 70363557 68750428
2005 17111533 33927821 1528678 69679565 68150887
2006 16789314 34047660 1473504 69099792 67626288
2007 16408728 34174558 1445358 68437399 66992014
2008 15715332 34403818 1372259 67206741 65834482
増減部数 302万4558 145万938 60万4837 520万3015 459万8178
増減率 16.14% 4.40% 30.59% 7.19% 6.53%


いろんな見方が出来るのですが、日本独自の宅配と言う観点からすると、セット部数(朝刊と夕刊がセットで販売される)はほぼ宅配によるものかと考えます。新聞の配達は世帯毎におこなわれますから、世帯数がどうなっているかといえば、1998年に4615万6796世帯であったのが、2008年に5232万4877世帯に実数で616万8081世帯、率にして13%増えています。この一方でセット販売数は16.1%減少しています。

非常に粗い概算ですが、1998年に世帯あたり0.41あったセット販売部数が2008年には0.30まで減少しています。新聞をセットで購入する世帯が約3/4に減ったと考えても良さそうです。それだけ新聞を取らない世帯が増えたとも言い換えられます。

セット部数、夕刊単独部数とも減っているのですが朝刊単独部数だけは増えています。これは朝夕刊セットで購入する世帯が減ったのと、朝刊だけは朝の通勤のついでに買う人数が増えたためでしょうか。ただ朝刊単独部数は増えてはいますが、セット部数の中の朝刊も含めての朝刊総部数は確実に減少しています。

この数字は月間発行部数で新聞協会は10月の数字をあげているようです。それと新聞社が発行部数と言うときには、どうもなんですが朝刊総部数で表現するようです。そうなると1998年から2008年の間の発行部数の減少は459万8178部になります。率にして6.53%ですが、部数にしてタブロイド紙1社分位の発行部数が減少したことになります。かなり大きな規模のように感じます。前年度比の発行部数の増減率をグラフにしてみると、

2004年度が増えた理由が分からないほど確実に減少しています。2008年度なんて100万部を越えていますから産経の半分ぐらいの部数が消えうせている事になります。

ここでなんですが、各新聞社の発行部数のデータも把握し難いところがあります。2007年7月号FACTAにどうやらABC協会に基づく都道府県毎の販売数があるので、ここから推測して見ます。

    読売:997万2864部
    朝日:805万9888部
    毎日:397万5422部
    日経:284万4838部
    産経:215万6584部
ここで毎日としているのは当時の毎日新聞社、現タブロイド紙のことです。2007年5月集計なので2年前のデータですが、おおよそこんなものでしょうか。改めてみると産経の小ささが良く分かります。各社の各県の販売部数ですが、例外の沖縄を別にすれば、読売、朝日、日経はそれなりに販売しています。タブロイド紙も北陸の富山、石川あたりが極端に少ないのですが、まあまあ全国紙の体面を保つ程度に販売はしているようです。読んで笑ったのは産経です。

山口の販売部数「ゼロ」と言うのも凄いですが、九州各県の販売部数も十分笑えます。

    福岡:1579部
    佐賀:183部
    長崎:449部
    熊本:489部
    大分:263部
    宮崎:175部
    鹿児島:305部
九州全体でも3438部しか販売しておりません。日経なんてあの沖縄でも4156部販売していますからまさに驚きの数字です。どれぐらい全国紙である産経の販売部数が「偏在」しているかを図にしてみると、
関東周辺と近畿と瀬戸内沿岸ではそれなりに部数を売り上げていますが、東北から北海道、中部北陸からとくに九州では悲惨なぐらい少ないのが分かってもらえるかと思います。ちなみに月間1000部と言っても、宅配ベースで考えると1日1部で1軒あたり30部ですから、30軒ほどの販売件数になります。人口の多寡を考慮に入れても「少ない」のは実感してもらえるかと思います。

もっとも考えようによっては未開拓県がそれだけあるので、販売が延びる余地があるという考え方も出来ますが、これも2009年5月号のFACTAですが、

産経新聞が苦境に立たされている。日本ABC協会の調査によれば、1月の部数が204万部と前年同月比で17万部(7.6%)減少したのに続き、2月は187万部と、実に前年同月より30万8千部(14.1%)も落ちたのだ。2月は前月比でも17万部(8.
3%)減となり、社内には「このペースが続けば年内に100万部割れ」(幹部)との悲壮感が漂っている。もはや、非常事態と言わざるを得ない。

未開拓県への販路拡大による反転攻勢と言うより、さらなるジリ貧の傾向にあるようです。しっかしどうして売れないのかな?「全国紙」の産経新聞。とっても、とっても不思議です。


■訂正

Ikegami様から指摘がありました。私はこのデータを月間の販売部数と解釈していましたが、月間の1日平均の部数と考えた方が正しそうです。謹んで訂正させて頂きます。