ヒブワクチン配給の怪

去年の12月にスタートしたヒブワクチンですが、12月に第一三共のMRを呼んで商品説明会を行った時には、接種開始にあたって「今年は20万本用意した」と話していた気がします。この記憶が怪しくて「20万人分」だったかもしれない(それなら60万本相当になる)のですが、たぶん20万本だったと思います。微妙な量だと思っていたのですが、初めてでもあり需要予測が難しいので、その時には「そんなものか」以上には感じませんでした。

だから本数の記憶に怪しいですし、零細診療所の医師が文句を言ったところで何も変わらないからです。

ヒブワクチンの購入は全国共通窓口で、Faxで希望者の名前と必要本数を発注すると、指定の問屋から配給されるシステムになっています。裏口があるかどうかは聞いていないのですが、たぶん無いと思っています。12月発売時からソコソコの本数の発注があったとは12月の時点でMRが語っていました。当院にもボツボツと接種希望があり、発注Faxを送っていたのですが、12月の終わりには、これからの新規発注のワクチン納入は2月以降になると連絡が入りました。

ヒブワクチンは接種時期も問題ですから、あんまり遅れたら困ると思っていたら、1月には

    1ヶ月に付き医療機関3件分のワクチン配給とし、その上で余裕があれば配給する
こういう趣旨の情報が入りました。患者からの接種希望の予約の最前線の看護師は悲鳴を上げていましたが、全国的に需要予想を上回っているのだろうと考えていましたし、さらに2月には第一三共から正式の文書で、
    1ヶ月につき病院が10件分、診療所が3件分にします
これを読んで、近所の小児科の無い病院にダミー発注を頼もうかみたいな冗談が出ましたが、希望36人で1年待ちみたいな状況が出現した事になります。ワクチンなんてそんなに急に生産量がどうにか出来るものではありませんから、需要が予測を上回れば必然的にそうなりますし、今年はこんな調子になるのはもうどしようもないと考えざるを得ませんでした。


ところが、ところがです。昨日はビックリ仰天の事態が発生しました。これまでの発注分が一挙に送られてくるとの連絡が入ったのです。その数なんと100本以上。ワクチンが手に入って希望者に早期に接種できるのに不満は無いのですが、零細診療所として困るのは、

  1. ワクチン購入代金の一挙の支払い
  2. ワクチン保管場所の確保
  3. 多量の在庫を抱えるデメリット
たしかに接種すれば代金は回収できますが、順調に接種して3ヶ月は必要です。そのうえ神戸では公費の4ヶ月検診があり、その時にBCG接種を行う上に、5月にポリオ接種もあります。ワクチンの接種スケジュールを考えると在庫期間は長くなる可能性が出てきます。一番困っているのはワクチン代金のキャッシュ確保です。予定外の大出費ですから、年度末を迎えて少々頭が痛いところです。


それでも希望者はおられるので接種すれば代金回収は可能なんですが、もっと大きな問題と言うか疑問が出ています。2月時点であれだけ逼迫していたワクチン事情が3月に急に解消するとは思えません。なんらかの事情で受注分に対して大量配給を行なったと推測していますが、供給量を確保した上での大量配給かと言われればひたすら疑問符が付きます。

100本分を接種していけば、また口コミで希望者は増えるかと思います。そういう新たな希望者に「いつ接種できるか」の返答を前線の医療機関は求められます。「いつ」が正直なところ皆目検討が付かないのです。第一三共のMRを捕まえようにも同じような疑問や不満を持つ医療機関の説明に追われているらしく、なかなか末端の当院までお越し願えないようで情報不足で困っています。

この先どうなるか不安が一杯のヒブワクチンでした。