続町田市民病院

まず天漢日乗様の首都圏医療崩壊 小児科常勤医8人が適正規模の24時間対応二次救急をたった4人で回した末、1人が退職して昨秋小児救急から撤退した町田市民病院で病院経営の経験が不明な元毎日新聞記者(73)が市長の一押しで病院管理者になる件→耳鼻科・眼科撤退の噂から、2008.9.13付朝日新聞多摩版です。

小児二次救急休止へ 常勤医確保できず 町田市民病院 /東京都
2008.09.13

 町田市立町田市民病院(旭町2丁目、山口洋総院長)は12日、救急車の搬送や入院・手術が必要な患者を受け入れる「二次救急」の小児科の指定を、今月25日から休止すると発表した。夜間当直のできる常勤医の確保が難しくなったためで、「早急に再開したい」と話しているが、めどはたっていない。

 同病院の小児科は、入院のできる病棟を持つ市内で唯一の医療機関でベッド数は34。01年から、24時間態勢で患者を受け入れる二次救急の指定を都から受け、昨年度は時間外に4605人の患者を受け入れた。

 昨年までは常勤医4人体制だったが、女性医師が産休に入り減員。大学などの紹介で若手医師に当直に入ってもらったが、今夏、その医師の都合がつかなくなり4人体制の確保が難しくなったという。

 二次救急維持のための医師の適正数は8人とされており、同病院では「もともと4人では厳しかった。開業医に比べ常勤医が少ないという根本的な問題がある」と話している。

 地元医師会から協力の申し出もあるが、常勤医による安定的な当直態勢が確保できない場合、「再開は難しい」という。

 都救急災害医療課によると、公立病院小児科で二次救急が休止するのは03年の日野市立病院以来。40万都市で二次救急病院がなくなることについて「早急に指定要件を満たしてほしい」としている。

去年の9月に小児科医不足から小児二次救急を返上しています。まあ、34床を4人で支えてその上で、

01年から、24時間態勢で患者を受け入れる二次救急の指定を都から受け

救急輪番でも大変と思うのですが、「24時間体制」は

もともと4人では厳しかった。

4人で厳しいの現状認識は今さらですが正しいとして、それでも、

「早急に再開したい」

「このまま潰したい」と言うわけにもいかないでしょうか、こういうコメントになるとは思います。この記事が昨年9月であれから4ヶ月が経過しているのですが、町田市民病院小児科がどうなっているのかを病院HPで確認してみます。

  • 副院長 佐藤裕 (兼小児科部長・統括部長)
  • 小児科担当部長 山口克彦            
  • 新生児担当部長 依田卓
  • 担当医師 佐藤祐子、長山ハルナ、櫻井俊輔、松橋一彦、神谷太郎

うゎ〜お、なんと8人に増えているじゃないですか。これなら小児二次救急の再指定も可能そうですが、肩書きの内で「担当医師」と言うのが気になります。簡単に言えばすべてこの8人がすべて常勤かと言うことです。こういうのはなかなか分かり難いのですが、昭和大学小児科学教室のスタッフ紹介が非常に参考になります。ここの情報は感謝するほど詳しくて、大学勤務の医師と派遣病院の医師を綺麗に分けて紹介してくれています。まず派遣病院のうち町田市民病院のところを見ると、

    佐藤 裕(部長)
    山口克彦(兼任講師)
    佐藤祐子
    松橋一彦

この4名は常勤医として派遣されていると判断して良さそうです。新生児担当部長の依田卓氏も常勤でしょうから、そうなると残りは、長山ハルナ氏、櫻井俊輔氏、神谷太郎氏の3名になります。このうち昭和大医局所属として、

こうなっており非常勤と考えて良さそうです。残りは長山ハルナ氏になります。長山氏はおぐちこどもクリニックのスタッフ紹介に、

長山ハルナ(医師)

同様に若い小児科医ですが、すでに三人の子持ちです。子育て真っ最中ですので、若いお母さん方の良き相談相手になると思います。国立小児病院で小児の悪性腫瘍の勉強をしてきました。

長山氏が町田市民病院とおうじこどもクリニックのどちらの常勤(もしくはどちらも非常勤)かは判断しきれませんが、育児中と言う事で非常勤と考えるのが妥当と考えます。結局のところ町田市民病院の小児科常勤医は5名と考えられます。常勤医5名のうち4名が昭和大ですが、新生児担当部長の依田卓氏はどうかになります。これもググる第13回 母乳育児シンポジウム 記録集 目次と言うのがあり、

指定発言・大学病院での母乳育児・・・・・・・・・・・・・聖マリアンナ医科大学小児科学教室 依田 卓

依田氏は聖マリアンナ医大である事が確認できます。ところで小児二次救急の再指定は町田市民病院HPのトップを読む限りまだのようです。常勤5名+非常勤3名体制で再開するかどうかも大きな問題ですが、さらなる問題が出ているようです。1/30付産経ニュースに、

町田市民病院、地域周産期母子医療センターに認定

 東京都は30日、町田市民病院(町田市)を21日付で、リスクのある妊婦や新生児を24時間態勢で受け入れる「地域周産期母子医療センター」に認定すると発表した。

 新生児集中治療室(NICU)の病床数は新たに6床増える。都内でも多摩地区は産科施設が不足している地域。都では今回の認定で「妊婦の不安解消につながればいい」と話している。

地域周産期母子医療センターに指定されるようです。5人でどうするのかの疑問が出てくるのですが、これも町田市民病院のHPの町田市民病院周産期センター(新生児部門)常勤医・後期研修医募集にこんな記述があります。

町田市民病院周産期センター新生児科新設

 町田市民病院の周産期センターは、NICU、GCUが平成20年10月1日から地域周産期医療センターとしてスタートしました。

 前東京女子医科大学教授で母子総合医療センター所長を務めていた仁志田博司医師を当院センター長として迎え、6人の新生児科医が頑張って働いています。

ありゃりゃりゃ、どうも小児科の医師と別に新生児科チームが存在しているようです。それも6人もいるとなっています。6人の中に仁志田博司氏も入っているでしょうし、さらに元のNICUおよびGCU病床数が不明なんですが、

新生児集中治療室(NICU)の病床数は新たに6床増える

これでも6人で足りるかどうかは問題でしょうが、「前東京女子医科大学教授」の関係で東京女子医大からさらなる増員が期待できるのか、増員までいかなくとも非常勤で応援が期待できるのかもしれません。研修医の募集もやっているので合わせると運用可能と考えても良いかもしれません。

それと少し分かり難いのですが、

    NICU、GCUが平成20年10月1日から地域周産期医療センターとしてスタートしました。
去年の10/1から始まった「地域周産期センター」と、記事にある東京都が今年1/30に認定した「地域周産期母子医療センター」は違うんでしょうね、きっと。この手の名称は案外うるさいはずなのですが、ここだけで考えると新生児科だけの「地域周産期センター」が産科も含む「地域周産期母子医療センター」に格上げされたと考えるように思いますが、この辺は詳しくないので御存知の方は情報お願いします。

さらに気になるのは、小児科の新生児担当部長の依田卓氏と周産期センター長の仁志田博司氏の関係です。新生児科の他の医師の名前がわからないので推測なんですが、仁志田博司氏は「前東京女子医科大学教授」ですから新生児科の医師は東京女子医大系の可能性があります。つうかそのために招聘したと考えるのが妥当ですから、ちょっと良く分からない関係です。

最後に町田市民病院の産婦人科ですが、

  • 顧問:久志本 建
  • 産婦人科部長:長尾 充
  • 産婦人科担当医長:鈴木 啓太郎
  • 担当医師:北條 めぐみ、福田 貴則、小出 直哉、種元 英理子、橋本 朋子、内野 麻美子、西村 陽子、尾見 裕子、吉川 由利子

スタッフは全部で12名となっています。ただ小児科も8名のスタッフが書かれていて常勤5名でしたから、産婦人科の常勤が12名とは限りません。それでもそこそこの数の医師がいますから、地域周産期母子医療センターへの対応は可能なのかもしれません。

小児科、新生児科、産婦人科のスタッフ数を考えると、小児二次救急は返上しても地域周産期母子医療センターは可能であるという言う事になるのかもしれません。町田市民病院クラスで小児科と新生児科を分けて作ったら悪いとは言いませんが、どちらかと言うと珍しいケースのように感じます。さらに分けた上で小児科に新生児担当部長が存在すというのも奇妙といえば奇妙です。単に病院HPの更新が遅れているだけかもしれませんが、もし並立していれば非常に不思議な形態です。

もう少し蛇足を加えると、小児科の方が人手不足で小児二次救急を返上したのが昨年の9/25です。一方で新生児科が新設されたのは昨年の10/1です。新生児科が新設されるまでは小児科が新生児を担当していたのでしょうから、新生児担当部長も含めて現在の関係がどうなっているかが興味深いといえば興味深いところです。さらにこれもHP更新の遅れだけかもしれませんが、新生児科の外来表がありません。ひょっとすると小児科の新生児担当部長は、新生児科新設前のNICU退院後の患者を担当するためにだけ存在しているのかもしれません。

どうにも複雑な内情があると感じられるのですが、これぐらいしかわかりませんでした。


■追伸補足

エントリーを書き上げてから気がついたので、補足にさせて頂きます。周産期センター長になられた仁志田博司氏ですが、どこかでみた名前と思っていたら中間管理職様のところに情報がありました。

センター長が、女子医の仁志田先生のようですね。
(新生児に関係ない方に念のため言っとくと、新生児の世界ではまあ神様に近い存在ですw)

それほどの方だから6人の新生児科医を引き連れて来る事が出来たわけです。それと神様でなくとも前教授ですし、ましてや神様ならその処遇は工夫を凝らす必要があります。相場は院長待遇ですが、それに近いものとして周産期センター長にしたと考えられます。周産期センターは組織図では病院の一部門と言うより、半独立した形態になり、センター長は院長と横並びみたいな位置にある事が多いはずです。町田市民病院は「総院長」という肩書きがありますから、その下に町田市民病院院長と周産期センター長が横並びにあったとしても不思議ありません。それぐらいの処遇は必要です。

半独立の周産期センターですから、そこに所属する診療科が必要です。周産期センターに必要な診療科は新生児科と産科ですから、周産期センター設立と同時にこの2つの診療科は病院から周産期センターに移籍した形式になるはずです。まあ、新生児科は新設ですけどね。こういう事は院内にいても実質は変わらないのですが、組織図上はそうなるはずです。

それと小児科と新生児科の分離は人事上も絶対必要です。小児科はどう見ても昭和大系統ですし、新生児科はおそらく東京女子医大系統ですから、合わされば必ず主導権争いが起こります。一時的にも一緒になれば、前教授と現小児科部長の待遇問題が生じますから、最初から分離新設に絶対する必要性があるというわけです。医師なら分からなければならない問題でした、非常にお恥ずかしい次第です。

もう一つ中間管理職様のところの情報として、

NICU6/GCU15ならね。
でも、NICU12床にするんでしょ?ならGCUも増やさなきゃいけないですから(でないと、すぐに受け入れできなくなる)医師募集はまあ、ありかなぁ。

どうも現在がNICU6床、GCU15床のようです。これが地域周産期母子医療センターに認定するに当たりNICUが12床になるようです。NICU12床、GCU15床ではバランスが悪いですから、単純計算でGCUも30床ぐらいにする必要があります。つまり規模が倍増するわけです。これを6人で維持するのは戦力的にどうかとの疑問は確かにあります。仁志田博司氏は高名な方のようですが、東京女子医大からこれも単純計算で後6人も引き抜けるかと言われれば、さすがにどうかと思います。

小児科医の中でも新生児科医は数が少ないですから、あわせて12人も東京女子医大から引き抜けば東京女子医大の新生児科が半身不随になりそうな気がします。そうなると研修医から独自に養成するか、他の病院から引き抜く必要があります。その辺の医師の手配、看護師確保の目途の成算があるのかどうかは他人事ながら心配になるところです。

仁志田博司氏の手腕で新生児科は栄えるとしても、病院の小児科は今後どうなるかは興味深いところです。舵取りは現総院長か噂されている管理者に託されるわけですが、なにか難しそうな気がしないでもありません。