町田市民病院

1/27付Asahi.com My Town多摩より、

市長推すトップ、波紋呼ぶ 町田市民病院

 経営改善を目指して4月から新たな管理体制になる町田市の市立町田市民病院が、トップ人事を巡って揺れている。石阪丈一市長が病院トップの事業管理者に医療や病院経営の経験がほとんどない人物の登用を進めているのに対し、病院内外から反発や疑問の声が上がっているからだ。この問題を契機に地域医療の中核を担う市民病院のあり方を問い直す動きも広がっており、三つの市民団体などは「混乱を招く恐れが強い」として、相次いで緊急集会を呼びかけている。(永沼仁)

 町田市民病院は、市内唯一の公立病院で、ベッド数は458床。赤字体質の改革に向け4月から地方公営企業法を全部適用(全適)し、病院トップの責任や権限を強化した「管理者」を新たに置くことが決まっている。

 焦点は管理者の人事だ。現在の病院トップの山口洋・総院長(74)は、任期が3月末で切れる。石阪市長は総院長のポストをなくし、管理者に元毎日新聞記者の四方洋氏(73)を起用する考えで、昨年10月には四方氏を非常勤特別職の「病院事業管理準備担当者」に就任させた。

 しかし、「全適」の移行時期や管理者の外部登用が病院幹部に示されたのは、議案が提出された9月市議会の始まる1カ月ほど前。一般職員への説明は議会開会の直前だった。現場からは市長の説明不足、病院経営の経験がない人物登用に疑問の声が上がった。

 さらに12月議会では、山口総院長が議会を侮辱する内容の文書を配ったとして、石阪市長が山口総院長に謝罪を求めるなど、市長と病院トップの「不和」が表面化。山口総院長が辞めた場合、他の医師が同調して引き揚げる事態につながる懸念などが問題視された。

 山口総院長は「市長が問題にした文書は、私の意見ではなく院内の声をまとめたもの」と反論。「市長から辞職を迫られたが、詳しい理由の説明はなかった」と語る。

 石阪市長はこれまで、人選について「病院を客観的に見て、経営の中身をきちんと説明できる人、組織間の調整ができる人」と説明する。医師の退職の懸念については「組織がしっかりしていれば混乱はしない」と言い切る。

 しかし、病院の医師や職員の間には困惑や動揺が続いている。医師不足から昨年9月に休止した小児科救急の対応などの課題もあり、「改革は時期尚早。今後の医師確保ができるのか」と疑問を口にする人もいる。

 自治体病院に詳しい伊関友伸・城西大准教授は「病院管理者は現場の医師や看護師の気持ちを理解できる人、医療経営に詳しい人でないと務まらない。専門家でない人でうまくいった例はあまりない。いきなり落下傘のような人が来たら、医師の大量退職につながるリスクがある」と指摘する。

 こうした現状について考えようと、市民団体などが相次ぎ集会を企画する動きが出てきた。

 一つは「理想の町田市民病院と地域医療をめざす会(仮称)」。2月8日午後2時から、市文化交流センターで、全国自治体病院協議会の辺見公雄会長が講演をする。問い合わせは田中さん(050・3492・6025)へ。

 「町田市民病院を支える会」では、同月13日午後6時半から、まちだ中央公民館で、病院経営に詳しい東京医科歯科大大学院の川渕孝一教授を招く。問い合わせは川島さん(042・728・1553)へ。

 また「市民のための市民病院を考える会(準備会)」は同月15日午後1時半から、町田市民文学館で、都福祉保健局職員を招いて学習会を開く。問い合わせは町田地区労(042・728・9134)へ。

話をまとめると町田市民病院(458床)の次期院長争いのようです。構図は任期の切れる現院長を追い落とし、後任に元毎日新聞記者の四方洋氏(73)を市長が強力に推しているようです。もっとも四方洋氏は医師ではありませんから院長職自体を廃止し管理者に変更しての事のようです。この四方洋氏ですが四方洋のコラム(NPOネイチャースクール理事長)と言うブログを持たれており、そこのプロフィールには、

京都大学卒。毎日新聞社に入り、社会部副部長、サンデー毎日編集長などを歴任。
東邦大学教授の他、(社)日本麺類業団体連合会発行「月刊めん」編集長を長く務めた。現在ジャーナリストとして取材、執筆のほかNPO「ネイチャースクール」NPO「知的ネツト」の理事長、東日本鉄道文化財団理事など、幅広く活躍中。

ざっとこんな経歴のようです。本も書かれているようでamazonには14冊が確認できます。本を書くぐらいですから、本にした部分はそれなりによく研究されたかと思います。ちなみにどんな本か列挙しておくと、

  1. ゆえに、高速道路は必要だ―ネットワーク日本、めざして
  2. 煙を星にかえた街―北九州市の挑戦
  3. 青春の小原台―防大一期の30年
  4. 宥座の器―グンゼ創業者 波多野鶴吉の生涯
  5. 離婚の構図 (1984年)
  6. 元気発信!―JR東日本駅ストリート
  7. がんばれ!―生きるing
  8. 離婚の構図 (講談社文庫)
  9. 駅と列車・メディアへの挑戦
  10. 「いのち」の開拓者 福祉現場の人間の記録
  11. 自立家族―個の時代のライフ・イメージ
  12. ハイウェイ・マイウェイ―道のロマンにかけた男たち
  13. 土着権力
  14. アメリカ・フィランソロピー紀行―日系企業の社会貢献活動
この中で医療に関係しそうなのは、「いのち」の開拓者 福祉現場の人間の記録ですが商品紹介には、

    出版社/著者からの内容紹介
    福祉の現場の現実と、不屈の情熱で障害者を支える「現代の志士」ともいうべき人びとの生きざまを描く。

    内容(「BOOK」データベースより)
    自ら選んだ困難な道に挑戦し続ける福祉の開拓者たちの姿を、たんねんに現場から描く感動のルポルタージュ

    内容(「MARC」データベースより)
    自然な思いから障害者と向かい合う世界に入り、障害者の行く末を案じる気持ちから事業を拡大してきた「志士」たち。自ら選んだ困難な道に挑戦し続ける福祉の開拓者たちの姿を、たんねんに現場から描いたルポルタージュ

本自体を読んでいないので何とも言えませんが、内容紹介から類推すると福祉現場の苦労と言うより、福祉事業を苦労して起した開拓者のお話のようです。また蕎麦にも蘊蓄が深いようで蕎麦文化協会なるHPにコラムを掲載しているようです。それから現在の肩書きで四方氏のブログにも書かれているNPOネイチャースクールですが、その約款の目的及び事業に、

この法人は、都市住民の参加する体験交流事業等を開催することにより、和田地域の豊かな自然と文化を守るとともに過疎化の進む地域を活性化し、地域の発展(まちづくり)に寄与するとともに社会教育の推進及び子供の健全育成を図ることを目的とする。

どうもかなり地域に密着した活動をする団体のようです。もう一つNPO「知的ネツト」と言うのも理事長となっていますが、ネットでは確認できませんでした。他にも東日本鉄道文化財団理事なんかも務めてられるようですが、73歳と言う年齢を考えると悠々自適の暮らしをされている状態かと思われます。ここで良く分からないのはそういう四方氏を何故担ぎ出したかです。

記事を読む限り石阪丈一市長が強力に推し進めているのがわかりますが、とりあえず石阪氏の経歴は、

どうも横浜市の職員として長年勤め上げ、生まれ故郷の町田市の市長になったような経歴です。2008年度版の施政方針もあり、無難な内容です。ただ市政運営において若干の波風が立った時期もはあったようで、石阪市長の辞職を要求する(声明)なるものが共産市議団から出されていた様子です。一部引用すると、

 石阪丈一市長は、8日、北薗前横浜市長室長とともに、横浜区検により横浜簡易裁判所政治資金規正法違反の罪で略式起訴された。石阪市長は、昨日の記者会見で、「消極的に関与していた」と、罪状を認める発言をした。いくら「消極的」といえども関与を認めたものであり、今後出される略式命令の罰金刑に応ずることになれば、政治資金規正法違反で有罪が確定することになる。41万市民を代表する町田市の市長が、このような事態を招いたことは、町田市政においてかつてない、きわめて重大な問題であり、市長の政治責任が鋭く問われている。

もっとも2006年の話なのでもう終わったことでしょう。


どうもググったぐらいでは石阪市長と四方氏の関係が見えて来ないのですが、記事を読む限り四方氏は市長の要請にOKを出していると考えて良さそうです。まさか四方氏に何の打診もせずに話を進めているとは思えないからです。現在でも四方氏は、

昨年10月には四方氏を非常勤特別職の「病院事業管理準備担当者」に就任させた

何かよくわからない担当ですが、町田市民病院の経営の一端に参加しており、石阪市長もその手腕に『驚倒』し事実上の院長である管理者に登用しようと判断したかと思います。

ここでなんですが、管理者に医師以外の者が就く事は構わないと思います。私もお世辞には詳しくないのですが、管理者は院長よりも経営管理に重きを置いた地位ではないかと考えています。ですから病院の赤字体質の改善のために新たな視点から経営を見直す手法はアリかと思います。また四方氏が管理者になっても、一から十まで経営改善の方法を編み出す必要もないかと思われます。具体的な手法については有能な経営コンサルタントをブレインに置けば十分ではないかと考えます。もちろん四方氏が全部取り仕切っても良いのですが、そうでなくとも管理職として経営改善に取り組めると言う事です。

四方氏に望まれるのは経営体質改善に当たり、考案された手法の取捨選択と、行なわれる改善案を行なわせる実行力です。それだけの能力があるかどうかです。市長は「ある」と判断して登用を推進していると考えますが、個人的には少々不安な点はあります。まず四方氏は経歴からして現場のジャーナリストではないかと考えます。それ自体は記者として恥ずべき事でも、何でもないのですが、経営経験というかセンスはどうであろうかと言うことです。

また四方氏も新聞社時代はそれなりの地位にあり、多くの部下を統率したかと思いますが、病院と言う分野では正直無名の人です。医療スタッフは四方氏の経歴に何の敬意も払わないと予想されますし、払わないどころか、医師どころか医療関係者でもないという点で軽く見られる可能性は非常に大きいと考えます。そうなると四方氏は部下を統率するのにかなりの手腕が要求されます。

どういう事かと言えば伊関氏のコメントが分かりやすいところです。

「病院管理者は現場の医師や看護師の気持ちを理解できる人、医療経営に詳しい人でないと務まらない。専門家でない人でうまくいった例はあまりない。いきなり落下傘のような人が来たら、医師の大量退職につながるリスクがある」

これも四方氏がどれほど理解されているかわかりませんが、医師が象徴的ですが現在の職場にこだわる気持ちが非常に薄いと言う点です。部下に対する求心力が低いとサッサと去って行くことです。さらに現在の医療情勢ではかつてと違い、大量離職など起ころうものなら、それに対する悪評が数日の内に全国の勤務医に伝達されてしまうリスクも生じ、町田市民病院の存亡に直結するほどの危険性があるということです。もちろん医師がやってもリスクはありますが、リスクから生じる損害の大きさは四方氏の方が高いように考えられます。

それでも市長は確信をもって四方氏の能力を高く買っているみたいですから、「やらせる」選択はありとは思います。もっとも病院が存亡の危機に陥った時に、市長が責任を取るぐらいで町田市民が納得すればです。つまり思わぬメリットが得られる可能性もある代わりに、破滅的な危険性も同時に存在すると言うことです。これぐらいは忠告しておいても差し支えないかと思います。


ところでですが、妙に気になった点です。

    現在の病院トップの山口洋・総院長(74)
    毎日新聞記者の四方洋氏(73)
どうもなんですが、町田市民病院院長には定年がないみたいなんです。院長などの管理職は一般職員より定年が長い事はありますが、74歳まで定年が延長するとは思えません。四方氏も現院長より1歳下みたいですからよいお歳です。個人的には、もう少し若い人材を登用する余地がないものかと思うのですが、如何なものでしょうか。病院は医師会と違いもっと若くて有能な人材を大胆に起用できるのがメリットだと思うのですが、ちょっと不思議な感じがします。