医師供給数の試算前提

昨日は本業の方が開院以来最高の数だったので、今日の準備がゼロでロクなものが書けないことを先に白状しておきます。下書きを書く時間が無かったのも痛かったのですが、構想を練る時間と言うか、構想を考える気力も残っていなかったので悪しからず御了承ください。言い訳は先にしておいて、お茶濁しの軽いネタなんですが、国の医師供給数の試算の前提がちょっとだけおもしろかったので軽くまとめてみます。医師抑制に転じてから行なわれた検討会は、

  1. 1986年:「将来の医師需給に関する検討委員会」
  2. 1994年:「医師需給の見直し等に関する検討委員会」
  3. 1998年:「医師の需給に関する検討委員会」
  4. 2006年:「医師の需給に関する検討委員会」
「医師需給の見直し等に関する検討委員会」の報告書も探してみたらあったので、各検討委員会の医師供給数の試算方法がわかることになります。順番に見てみます。

まず「将来の医師需給に関する検討委員会」の試算法は2種類です。

  1. S1:国立公衆衛生院(方波見)推計(入学定員に対する国家試験合格者の比率は、1.0176としている)
  2. S2:S1の推計に、70歳以上の医師は2000年から2020年までの間50%が、2020年以降はすべて引退するものとし、さらに女性医師集団の活動能力が対男性医師集団比0.8となることとした場合の医師数
S1試算の詳細がよく分からないのですが、推測すると2006年の長谷川試算の様に「医師の定年は無し」「医師の労働力に性差無し」ではないかと考えています。S2は女性医師の労働係数を0.8としているはまあ良いのですが、
    70歳以上の医師は2000年から2020年までの間50%が、2020年以降はすべて引退する
書き直せば
  1. 70〜90歳の医師の半分は現役の戦力として数える
  2. 2020年から90歳以上は引退とする
  3. なおかつ上記二つの現象は2000年から突然始まる
2000年から突然始まると言う表現は妙と思われるかもしれませんが、本当にそういう変化としており資料のグラフにも明記されています。
とくに2020年に90歳以上の医師が引退する影響は大きく、2020年に医師数は人口10万人対で261人→249人にガタンと減ります。


次に「医師需給の見直し等に関する検討委員会」はもう少し詳しい試算法の前提が掲載されています。

  1. 入学定員は平成7(1995)年までに定員が7520人となり、以降一定で推移すると仮定
  2. 推計の基準となる医師数は平成2(1990)年の推計医師数(医師届け出数を届け出率で除した数)
  3. 国家試験合格率は0.9780(昭和54〜61年の入学定員に対する各々6年後の国試合格者数の比率の平均)
  4. 高齢医師の活動能力


    年齢階級 2000年 2020年 2040年
    65-69 1.00 0.95 0.90
    70-74 0.95 0.80 0.60
    75-79 0.90 0.60 0.30
    80-84 0.70 0.35 0.00
    85-89 0.50 0.00 0.00
    90-00 0.00 0.00 0.00


  5. 女医の活動能力は平成12(2000)年まで0.8とし、その後徐々に増加し、平成33(2021)年以降0.9で一定
  6. 女医(女子学生)の割合の推移予測は大学入学者に占める女性の割合が平成27(2015)年までに50%に達し、以降一定
かなり詳細に分析しているのがわかります。それでもおもしろいところは幾つかあって、高齢医師の活動能力が年代が下るにつれて落ちていくことにしているのがなかなかです。75-79歳の活動係数は2000年では現役にほぼ近い0.9あるとしているのに2040年には1/3に減少し、80-84歳の活動能力は2000年では0.7あるのに2040年にはゼロになります。どういう資料が基になっているかは興味深いところです。女性医師の労働係数も2000年までは0.8としていますが、以後は高くなるとし2021年以降は0.9まで伸びて安定するとしています。


「医師の需給に関する検討会(1998)」は手許に資料が無いのですが、「医師の需給に関する検討会(2006)」から推測すると、

  1. 入学定員は7705人
  2. 2010年から70歳定年を設ける
  3. 女性医師の労働係数を0.7とする
「医師需給の見直し等に関する検討委員会」で採用されていた高齢医師の能力係数は廃止された可能性が高いと考えます。


「医師の需給に関する検討会(2006)」は有名ですが、

  1. 入学定員は7700人
  2. 国試合格率は1.0
  3. 医師定年制は撤廃
  4. 女性の労働係数は1.0
こうやって並べてみるとおもしろいと思いませんか。個人的には「医師需給の見直し等に関する検討委員会」が一番まじめに試算前提を考えたようにも見えますが、まだ報告書全体を読んでいないのでこの程度にしておきます。