民主党も勉強したのかな

先日は影の厚労相山田正彦議員の発言でミソをつけた民主党「厚生労働部門会議」です。あんなにレベルが低いのかと落胆された医師も多かったと思いますし、私もちょっとガッカリしていたのですが、続報があり記事を読む限りかなり持ち直したようです。まさか私が「お勉強を」なんて書いたから奮起したなんて事はないでしょうが、11/7付けCBニュースより、

厚労省が「労基法違反を黙認」と追及―民主

 民主党の「厚生労働部門会議」が11月7日に開かれ、東京都内で妊婦が8病院に受け入れを断られた問題を取り上げた。同党の議員らは、医師不足の現実を直視して対応策を取っていれば、今回の問題は起きなかったとの認識を示し、「厚生労働省が、医療現場での労働基準法違反を黙認してきたせいだ」などと、厚労省の責任を厳しく追及した。

 東京都は8病院が受け入れを断った理由について、8病院から聞き取り調査した。それによると、当日の当直体制は2病院が1人、3病院が2人、3病院が3人だった。また、8病院のうち4病院のNICUと1病院のMFICUが満床だったという。NICUのベッド不足は以前から問題になっているが、増床すると小児科医と産科医も増員しなければならないため、増床は容易ではないとされている。

 同会議で厚労省の担当者は、「最終的な(受け入れ)病院に行くまでのシステム(救急医療情報システム)の問題が指摘されているので、改善していかなければならない」と述べた。これに対し、蓮舫参院議員らは「いくらシステムをつくっても、現場の情報を入力する人がいない」「受け入れる人(医師)も足りないし、(NICUが)ずっと満床だったら(この問題は)解消しようがない」などと追及した。

 山井和則衆院議員は、「医師の多くは労基法を守っていないが、患者に迷惑を掛けないようにと黙って隠し続けてきた」と述べ、多くの医師の「善意」によって医療現場が支えられている現状を訴えた。原口一博衆院議員は「厚労省は医療を管理する一方で、医療者を守るという責務もある」と強調し、医療現場で労基法の順守を徹底するよう求めた。

 足立信也参院議員は、多くの医療機関が建前では「宿直」と称して医師に「夜勤(時間外労働)」をさせている実態について取り上げた。足立議員によると、3年ほど前に多くの医療機関労働基準監督署が立ち入り、医師の宿直を「これは時間外勤務だ」と指摘し、過去にさかのぼって追徴課税した。追徴課税された病院は、医師の「夜勤」を黙認しておきながら、報酬も「宿直」の分しか払っていなかったという。

 会議の最後に、鈴木寛参院議員は「次回は労基法の担当者からヒアリングして、(医療者向けに)新しい(労働基準の)ガイドラインやスタンダードをつくることなども検討していきたい」と述べた。

会議は東京の事例についての物である事がわかります。厚労省の担当者が呼ばれており、まず厚労省のこの事件に対する姿勢と今後の対応について意見を求められています。ここは出席したからには必ず求められるものと考えます。内容は、

「最終的な(受け入れ)病院に行くまでのシステム(救急医療情報システム)の問題が指摘されているので、改善していかなければならない」と述べた

実際はもっとウジャウジャと長かったと思いますし、記事なのでエッセンスを切り取ったものと考えますがちょっと分かり難い回答になっています。分かり難いというのは厚労省担当者が「システムの改善」が必要と回答したのは確認できますが、具体的に「どこ」を改善するべきだと主張したのか分かり難いという意味です。おそらく複数以上のポイントを挙げて「改善」の回答をしたと考えます。

厚労省の回答の内容はこれに続く民主党議員の指摘から推測せざるを得ません。まずですが、

いくらシステムをつくっても

これから考えられる事は救急搬送の情報システムについて厚労省担当者が言及した事が推測されます。「たらい回し」問題が起こるたびに出てくる空床情報問題です。おそらくこれを充実させリアルタイム更新にする事を厚労省担当者は主張したと考えられます。ちなみにこれに対する民主党議員の指摘は、

  1. 現場の情報を入力する人がいない
  2. 受け入れる人(医師)も足りないし、(NICUが)ずっと満床だったら(この問題は)解消しようがない
ちょっと驚くような的確な内容で、ITシステムと言ってもデータベースを作るのはしょせん人力であり、現場の人手不足からデータを構築する余裕がない事をまず指摘しています。また重症患者を受け入れる応需能力がそもそも大幅に不足しており、情報システムだけでこれをカバーするのはそもそも無理があるとの指摘です。

続いて

医師の多くは労基法を守っていないが、患者に迷惑を掛けないようにと黙って隠し続けてきた

厚労省担当者が医師不足に対しどのような見解を述べたのかは記載されていませんが、この発言から推測されるのは「もっとガンバレ」的なものがあったとも推測されます。これに対し厚生労働部門会議の議論は驚嘆すべき事に労基法の問題に流れていきます。記事で取り上げられているのは2つで、

  1. 厚労省は医療を管理する一方で、医療者を守るという責務もある」と強調し、医療現場で労基法の順守を徹底するよう求めた
  2. 多くの医療機関が建前では「宿直」と称して医師に「夜勤(時間外労働)」をさせている実態について取り上げた。
他にも発言はあったと思うのですが、会議の締めくくりは、

「次回は労基法の担当者からヒアリングして、(医療者向けに)新しい(労働基準の)ガイドラインやスタンダードをつくることなども検討していきたい」と述べた。

正直なところ、医療ブログが長い間繰り返し主張してきた問題点がオンパレードのように並んでいるのを見て感心しています。記事情報だけなので割り引いて考える必要がありますが、前回の民主党「厚生労働部門会議」とは論議水準のレベルが一変しています。もちろんこれにも様々な見方があるでしょうが、とりあえずよく「お勉強」されたと褒めても罪はないと思っています。