不良記事量産警報発令中

ロハス・メディカル川口氏の斜陽から適宜引用させて頂きエントリーにします。

アメリ金融危機は全世界的な規模で不況を巻き起こし、ちょっと出口の見えない状況です。株価が下がると言っても私のように持っていない人間には実感が薄いのですが、持っている人間には深刻な影響が出ます。大雑把な理解で申し訳ないのですが、今回の場合の株は金券みたいな物で、金額が株式市場で決められます。株式市場で1万円なら1万円の価値ですが、5000円となれば5000円の価値に下がってしまいます。

大企業の資産のかなり大きな部分は金券としての株として保有していますが、その額面が半分になれば資産価値もまた半分になります。何にもしていないのに株価が下がった分だけ損失を蒙る事になります。この損失は何で穴埋めされるかといえば、実業で穴埋めされます。つまり実業であげた収益が株価が下がった分で食い尽くされると言う訳です。えらく単純な理解ですが企業会計には素人なので目を瞑ってください。

企業は株が下がるのも実業で収益を上げるのも一体として計算されますから、当然のように業績不振に陥る事になります。企業本体が倒れたら何にもなりませんから、企業はサイバイバルのために何をするかといえば、経費節約と賃金カットです。賃金カットについての影響は置いておいて、経費節約には広告料の節減も入ってきます。

企業にとって広告は必要なんですが、総予算はやはり減らざるを得なくなります。担当者は減らされた予算で「従来より効果的な広告活動をセヨ」なんて無茶な要求をされるのですが、それも置いといて、広告費全体の削減はマスコミ業界に深刻な影響をもたらす事になります。マスコミ業界は企業の広告費に大きく依存している部分があり、減った分だけ業界のパイは確実に小さくなります。それでどうなるかですが、

媒体が減ると、メディア内の人口(フリーライター、フリー編集者など)が過剰になります。

わかりやすい話で、業界のパイが小さくなると抱えられる就業人口が小さくなります。小さくなった時にどこから切られていくかと言うと、周辺部分から切り落とされます。周辺部分はどこになるかと言うと、

「フリー」と言えばいかにも格好よく聞こえますが、実態は大手メディアの下請けに過ぎず、大手メディアのパイが小さくなれば下請けまで回す仕事がなくなり、仕事にあぶれる事になります。あんまり実情には詳しくないのですが、切られる時には非常にドライと聞いた事があります。もちろん下請けと言っても大小さまざまありますが、一番周辺部の日雇い労働者クラスが真っ先に切り捨てられるだろう事はどの業界も同じでしょう。

切り捨てられて仕事にあぶれた「フリー」はどうなるかも川口氏は書かれています。

    他へ転職できるようなスキルの身につく業界ではないし(身につくのはコネだけ)
    世の中もこう不景気になると転職もままならないので
    大抵は何とか業界内で生き残ろうとするはずです。

現在の不況はマスコミだけに限定された不況ではなく、ほぼ全業種に及ぶものですから、「フリー」がダメなら転職と言うわけにはいかないのはどこも同じです。またそれでも転職するには買われるだけのスキルが求められます。異業種への転職が成功するには、元の業種のスキルが転職した業種にとって貴重なものの時に有効です。そういう条件があれば「フリー」にもあれば良いのですが、どうも「フリー」をやっている方には無いと考えたほうがよさそうです。

仕事は無くなる、転職もままならないとなれば、やはりぐるっと回って、元の業界内でのサバイバルを考え出すのが「フリー」であると川口氏は語られています。ごくごく自然な流れかと思います。しかし仕事は減っていますから、通常の手段では仕事なぞ回ってきません。そこで行なわれる手法が、

    行儀よくしていても仕事はもらえませんから
    たとえムリ筋の話であってもイチかバチか書きたいということになります。

具体的にどんな行いが「ムリ筋」かまでは川口氏は解説していませんが、「フリー」の仕事の形態として「請負」と「売り込み」があると聞きます。請負は大手メディアに依頼されてのものと素直に解釈しますが、「売り込み」は大手メディアが買いたくなるような記事を作り出す事かと考えます。売り込みと言ってもパイは小さくなっていますから「お行儀よく」の記事では鼻も引っ掛けられません。買う側が手を出さざるを得ないような強烈な刺激の内容が必要になります。

請負も出版社自体の経営も傾くでしょうから、無からでも強烈な企画を作り上げ、それに応える「フリー」を要求していくと考えます。机上の企画であって本来は無謀としか言いようがなくとも、それに強引の極致を使ってでも応えるものが生き残る寸法です。そこには良心と言う倫理は消えうせ、もっと原初的な「食うため」に悪魔に魂を売り渡すような行為が当然のように求められると考えます。

強烈な刺激と言っても良い意味も悪い意味もあります。良い意味は俗に言う超特ダネ記事の発掘です。ただしそう簡単に次々と超特ダネ記事が発掘できるほど世の中は甘くありません。そうなるとやる事は、元々平凡なネタをどう極彩色に彩らせて買い手の興味を引かせるかになります。おそらく川口氏が「イチかバチか」と表現されているのは、それこそ捏造スレスレ、名誉毀損スレスレ、時にはそのスレスレラインを踏み破っての強烈な内容を書くと理解するのが妥当かと考えます。

その世界が展開されるとどうなるかですが、

    よって
    ムチャクチャな記事が一時的に(今後数年?)増えると思われます。
    喰いつめる人が増えると犯罪も増えるような因果関係です。

売り込みだけではなく一発勝負で本として出版する者もいるかもしれません。通常、そう簡単に本など出版してくれないのですが、そこはコネだけは豊富に持っていますので、ツテツテを頼み込んで一冊ぐらいなら「フリー」でも出せるかもしれません。売り込み記事でも強烈な内容でしょうが、これが本ともなれば是が非の度合いが違いますから、まさしく「ここまでやれば犯罪」をラクラクとクリアする内容であってもおかしくありません。煽情的内容の極致みたいな代物です。

どうかんがえても強烈な毒をもった内容にしかならないのですが、毒とは誰かを攻撃する内容になる可能性が大です。叩きまくって貶める内容で読者を惹きつけようとするのが常套的な手法です。叩いて貶める相手は、読者として少数派に属し、なおかつ後で反撃があんまり怖くない対象が選ばれます。医師なんて格好の標的にされそうで嫌な感じです。

あんまり歓迎したくない世界ですが、川口氏はマスコミ業界に属する人間ですから、おそらくこれまでの不況でも繰り返し行なわれてきた行為なのだと考えます。しかしこれまでと違うところが一つあります。マスコミのうち、とくに紙媒体事業はネットの隆盛に伴い逆風が強く吹いています。これまでの不況なら、景気さえ回復すれば紙媒体マスコミのパイは再び膨らみ、元に戻っていましたが、今回のパイの収縮は元通りになるかどうかは非常に不安と考えられます。

そういう状況下で従来の不況時の不良記事量産を行なえば、

    そして、そのようなヨタ記事を量産することで
    ますます紙媒体は信頼を失っていくのだろう、と。。。

つまり最悪自滅行為につながっていく危険性があるということです。綺麗事かもしれませんし、そんな甘い考えでは生きていけないとの指摘も受けるかもしれませんが、最終的に王道を歩むものが最後の勝利者になると考えています。あくどい刺激記事で気を引いても、刺激には人間はすぐに慣れてしまいます。つまり果てしなく刺激を強烈にしていく必要がこの路線には必要です。とは言え無限に刺激を強く出来るわけではなく、限界に達すると鼻について見捨てられます。

さらにと言えばネット時代です。猛毒性の刺激記事の噂も速やかに広がりますし、最初は喜んでもやがて2chでも唾棄されます。ゴミだめのように評される事もある2chですが、あそこの良識の最後の線からの反発は感心するほど的確です。そうなった時にどうなるかの余計な心配をしてしまいます。2chはわかりやすい喩えに引っ張り出しましたが、ネット世論全般に言える事かと考えています。

こういう時代への対策ですが、

    対策といっても大したものはなくて
    景気がよくなるまで、受け手の側で
    今まで以上に眉に唾して「記事」を読む必要があるだろうと思います。

不良記事は飛びつかせるために書いてあるのですから、医師批判・医療批判の記事でも反応するかどうかの見極めが非常に大切になるかと考えています。医師ネット世論が憤激して騒げば「フリー」に取って大成功で、新たな仕事の種とする事が出来ます。ですから余りの不良記事には黙殺でもって報いる事も必要になります。言うは易しですが、難しい対応が必要になる時代になっていくようです。