明日は休載にします

明日は娘の運動会で休載にさせて頂きます。悪しからず御了承の程お願いします。明日は明日で休みにするのですが今日のネタに困っています。どうもネタ枯れで、こういう困った時の神頼みでssd様ところからまたも借用します。10/2付河北新報社より、

「死に目会えず精神的に苦痛」 遺族が東北大提訴

 東北大病院で死亡した仙台市の母親=当時(60)=の死に目に会えず、精神的苦痛を受けたと、大阪市の長女が1日までに、東北大に220万円の損害賠償を求める訴えを仙台地裁に起こした。

 訴えなどによると、母親は2006年7月12日夜、激しい腹痛で歩けなくなり、東北大病院に救急搬送された。その後、容体が急変し、翌13日朝に腹膜炎による呼吸困難で死亡した。

 当時は留守だったものの母親と同居していた父親を含む家族に、病院は搬送や急変の事実を知らせなかった。母親の死後、遺族側が問いただすと、病院側は責任を認めたという。

 長女の代理人は「病院側は急変を予測できなかったとしているが、家族らへの連絡が遅れたのは事実だ」と主張。病院側は「訴状の内容を検討し、適切な対応を考えたい」としている。

急死された故人の冥福をお祈りします。

短い記事なのですが事実関係は、

    2006.7.12 夜 腹痛にて東北大病院へ救急搬送
    2006.7.13 朝 容態急変し死亡
問題になっているのは、

父親を含む家族に、病院は搬送や急変の事実を知らせなかった。

家族のその時の状況は、

  1. 父親は同居していたが留守にしていた
  2. 長女は大阪に在住
その他にも家族がいるかどうかは記事からは不明です。他も何の情報も無いのですが、留守にしていた父親がこの夜に帰ってこれるような留守なのかそうでないのかも不明ですが、帰って来れるような留守なら連絡メモを残すなりは行なうかと考えます。腹痛は「激しい」となっていますが、そうしないと父親が驚きますし警察沙汰になります。この辺の詳細はまったく知りませんが、戸締りとか、伝言メモぐらいは救急隊も常識的には配慮するんじゃないかと考えます。

とにもかくにも救急搬送されて入院しているのですが、こういう時の家族への連絡は成人の場合どういう慣行で行なわれるのでしょうか。小児科では子供だけが家族にも知らされず単独で入院みたいな事態は通常まずありえないのですが、成人はしばしばありえるケースかと思います。独居の高齢者とか若年でも一人暮らしならあると考えます。交通事故なんかもそうでしょう。

成人の場合、時に入院の事実を伏せたいケースなんかもあるでしょうから、あくまでもケース・バイ・ケースでしょうが、やはり本人の意向を確認してになるかと考えられます。さらに言えば本人が連絡先を病院側に教えない限り連絡しようがありません。患者の持ち物から確認するという手法もありますが、意識不明の緊急状態ならともかく、そうでなければ非難される行為になるかと考えられます。

時間がはっきりしないのですが、夜に入院して朝に死亡ですから半日足らず、おそらく10時間以内の出来事かと考えます。記事情報の印象からですが、入院後一旦症状が落ち着いた時期があったと考えてよいと思われます。少なくとも緊急手術とかになればもう少し熱心に家族との連絡を取ろうと務めるはずだからです。あくまでも推測ですが、入院後ひと通りの診察、検査を行い、とりあえず明日まで経過観察ぐらいの状態ではなかったかと考えます。

私は天下の大学病院に勤務した事がないので、かの有名な大学看護師の仕事振りは実体験としてないのですが、救急外来から病棟に入るまでの間にこういう状態なら入院に必要な情報の収集を行ないます。最低限、名前、生年月日、住所、名前、連絡先の電話番号などです。大学看護師でなくとも研修医なりが行なうでしょう。保険証があれば聞かなくともわかる情報ばかりですが、連絡先の電話番号だけは患者本人から聞き取る必要があります。

結果として後で急変しますが、入院時の状況として推測されるのは、

  1. 患者には意識がしっかりあり、自分で判断は出来る状態であったであろう
  2. 症状は小康状態で緊急を要する状態と考えられなかったのであろう
ここで意識があれば次のような情報も入手していた可能性があります。
  1. 連絡先は家の電話番号であった
  2. 父親(夫)は今晩は留守である
父親も携帯電話を持っていた可能性は十分ありますが、その電話番号を暗記している可能性は低いと考えられます。また出先の連絡先も把握していたかどうか分かりませんし、あったとしても家においてきた可能性があります。ここで長女の電話番号を教え、連絡取るように頼んだかどうかの情報はありませんが、個人的に考える連絡手順は、
    父親 → 長女
このルートを考えるかと思います。父親の留守がどの程度続く予定だったのかの情報もありませんが、仮に入院翌日に帰宅予定であるなら、緊急を要さない状態であるなら明日に連絡を取れば十分と考えてもおかしくありません。長女にしても大阪在住ですから連絡を取ったところですぐには来院できませんし、生死に関るようなものでなければ急いで連絡する事も無いという判断も生じるように考えます。

入院時にどんなやり取りが患者と病院側の間で交わされたかも全く情報がありませんが、考えられそうな状況として「とりあえず緊急を要する状態では無いようなので、まず入院してもらい、明日から本格的な検査・治療を行ないます」ぐらいであったと考えてもおかしくありません。そういう話であれば患者も連絡は急がず、夜が明けてから父親に連絡を取れば十分と考えても不思議ありません。それぐらい状況としては緊迫感の無い状態であったと考えます。

もちろん患者が家族への連絡を希望してこれを病院側が断ったケースも考えられますが、患者は死亡しており、記事情報にも何もありませんからこれ以上はわかりません。ただ常識的に患者が希望してこれを断ると言う事があるのかは少々疑問です。医療機関の常識として家族の付き添い無しで入院した場合、出来るだけ早く家族と連絡を取ろうとするかと考えます。家族との連絡を患者が拒否した場合はともかく、希望すればたとえ遠くても連絡は取ろうとするのが通常かと思われます。誰か一人でも家族に連絡をつけておけば、後はその家族から必要な範囲に連絡が回るからです。

いずれにしてももう少し情報が欲しい事件です。焦点は家族との連絡と言う点についてどんな重大な不手際が病院にあったかです。訴訟まで行なわれていますから、それに相応しい事実はきっとあるはずです。もちろん家族が不満を感じ訴訟を起す権利は誰にでも手厚く保護されていますから、これについては問題視しては『絶対』にならないと考えています。コメントをされる皆様もくれぐれもよろしくお願いします。



ところで記事なのですが、どう読んでも肝心の事実関係が極めて曖昧です。今回は狭い意味での医療訴訟と異なりますから、書くのならもう少し事実関係を明瞭にできるのではないかと考えます。どういう原因で家族への連絡が行なわれなかったのか、それがどういう不手際で発生したかです。上で分析したように「おそらく」患者とコミュニケーションを取れる時間も余裕があったと考えられ、その上で家族との連絡が行なわれなかったのですから、はっきりした理由があるはずです。

病院側への取材は医療情報、個人情報の問題で無理なのは分かりますが、訴えた家族側には取材可能なはずです。家族にしても理由を隠す必要もなく、こんな状況であったのに病院が怠慢したと詳細に説明してくれるはずです。この記事で知りたいのはどういう不手際が病院側にあったかであり、それも記者が聞いても理解できないような複雑な病状の問題ではありません。単純な事務上の不手際です。舞台が病院であっても原因は事務上の不手際ですから、記者でも理解し記事に出来るはずだと考えます。

それが極めて不明瞭かつ曖昧な記事構成です。記事に掲載されている情報としては、

「病院側は急変を予測できなかったとしているが、家族らへの連絡が遅れたのは事実だ」

これではまるで家族が駄々をこねているような印象を与えてしまいます。こんな無茶苦茶な理由で常識的には訴訟など起しません。「家族への連絡が遅れたのは事実だ」に何の嘘もありませんが、問題は「遅れたこと」ではなく「なぜ遅れた」かです。遅れた理由が妥当性のあるものなのか、それとも怠慢による不当なものなのかです。

代理人すなわち弁護士まで臨席しているようなので、取材ではっきりこれを述べたはずです。あえて隠す理由さえ思いつきません。明白な理由があるからこそ訴訟にしたのです。ところがこんな記事では、

    どんな理由があろうとも家族への連絡が遅れたら220万円の損害賠償
こんな目を剥くような理由での訴訟を起したと思われます。これは家族及び代理人への侮辱になってしまうのではないでしょうか。あの大淀事件でも18病院の搬送受け入れ不能がありましたが、遺族は「どんな理由があるにしろ、手遅れになったのは事実だから賠償しろ」などとは主張していません。主張しているのは、あくまでも手遅れにならない他の手段が講じる余地があったのではないかとのものです。

もっとも世の中の訴訟には本当に信じられない理由による訴訟は少なからず存在します。ひょっとするとこの訴訟もその一つでは無いと言い切れませんが、万が一そうであれば記者および新聞社の取材センスを疑います。またそんなトンデモ訴訟と異なるのなら取材能力のあまりの低さに仰天します。何をニュースにしても構わないと言うものの、給料もらっている仕事ですからもう少しマシな記事を書いてくれないと困ります。報道の自由と言っても何でも適当に流せば良いものではありませんからね。