エープリルフールじゃありません

まず3/29付キャリアブレインより、

 大阪府立病院(現府立急性期・総合医療センター)に勤務していた麻酔科医奥野恭嗣(おくの・きょうじ)さん=当時(33)=が死亡したのは過労が原因として、母親が府に損害賠償を求めた訴訟の控訴審判決で、大阪高裁は27日、約1億円の支払いを命じた1審判決を変更、約7700万円に減額した。

 判決理由で中路義彦(なかじ・よしひこ)裁判長は「業務は質量ともに過重で死亡と因果関係がある。人員不足は勤務医の共通認識だったのに、府は体制を見直すなどの対策を立てなかった」と指摘し、1審同様、安全配慮義務違反を認定。

 一方、「奥野さんは自主的な居残りなどで本来の割り当てを超えて働き、健康管理を怠った面もある」として、1審判決の10%を上回る35%を損害額から減らした。

 判決によると、奥野さんは1996年3月に急性心不全で死亡。死亡前1カ月の時間外労働時間は約107時間だった。( 共同通信)

麻酔科医の過労死裁判の結果です。賠償額7700万円を確保していますが、一審より二審の方が減額されており減額理由が、

    奥野さんは自主的な居残りなどで本来の割り当てを超えて働き、健康管理を怠った面もある
脳の血管がブチ切れそうになる理由ですし、読まれて逆上されている方もおられると思います。私もそうです。記事を信じる前提になりますが、
    (医者のくせに)勝手に働きすぎた奴が悪い
こういう事実認定が高裁で為された事になります。もちろんエープリルフールじゃありません。

今日は本当に怒っています。相手は裁判官なので怒りの持って行き場に困るのですが、下品ですが一つ見つけました。日本裁判官ネットワークブログなるものがあり、ここはまず間違い無く裁判官がブログを書いています。TBは受付けていませんが、コメントは記入可能です。ただしレスは見たことがありません。その中で少し話題になったエントリーがあります。風船裁判官氏が書かれた妻の入院・手術のことです。少し長めですが全文引用します。

 妻が入院した。もともと,先天的に股関節に問題を抱えていたようだが,結婚当初はもちろん,約20年間はそれとは感じさせず,元気に歩いていた。その後,少し無理をすると痛みが出るようになり,昨年初めころから悪化のスピードが速まった。この状態では近い将来外国旅行も不可能になると感じた私は、昨年の夏、妻をドイツ還暦(感激)旅行に誘った。ゆったりとした旅程を組んだつもりであったが、実際に彼地に着くと、どうしてもみたいところばかりで、あちこち足を運んだのがたたり、帰国後は、数歩歩くのも困難という(見ていても痛々しい)状況となったので,人工股関節手術を検討することになった。昨秋,医者の診断を仰ぐと,「即手術」状態だと宣告を受けるも,順番待ちで,5ヶ月先になるという。ほかに選択の余地はなく,ただ待つことになった。

 今年の2月になって,どういうわけか、予定より早い入院の知らせをうけた。毎日のように痛み止めの薬をのみつつ、その頻度や量が増しつつあった状態を嘆いていた妻にとっては、願ってもないことであった。

 1週間ほど,いろんな検査を経て,明日が手術という前夜,担当の医者から説明を受けた。股関節の現状や手術のやり方等についてレントゲンや図面を示しつつの懇切な説明に,親切で優しい先生だなと,好感を覚えつつ聴いていると,次に危険性について説明をします,とおっしゃる。そして,麻酔事故,出血,手術中の骨折、この3つが大きなリスク要因で、いずれも絶対にないとはいえないと,いわれた。もちろん,あくまで万一だし,相応の準備はするので大丈夫ですが,一応承知はしてくださいと念押しされた。手術を間近に控えた家族としては,今さら,考えさせてくださいとはいえない。よろしくお願いしますと,頭を下げるだけである。以上で,インフォームド・コンセント終了。

 当日は,役所を休んで待機。しかし,手術が始まってしまうと,することがない。「待機」は娘にまかせて,当方は税金の申告等に出かける。敵前逃亡のようだが,実は,あの「待つ」状態がいやなのだ。以前,子宮筋腫の手術で,手術室に向かった妻を見送って,病室で待機したことがある。予定の2,3時間をすぎても,看護婦等から何の連絡もない。5時間以上経過したあと,無事終了しましたよと,看護婦から告げられ,大手術だったのですかと尋ねると,「いえ,そうではありません。前の手術が長引いて開始が2時間遅れただけです。」とごく当たり前のような返事。「それならそれでどうして言ってくないの」と口まで出かかったが,手術が無事すんだことの安心感から,怒る気力が失せていた。
 そういうことで,病室での待機を回避して,用事にかまけたわけだが,手術は予定を少し超過したものの,無事終了。さすがに安堵した。

 ところが,麻酔の薬があわなかったのか,同日夜から,すべての飲食物を拒否し,胃液まで出るという嘔吐の連続。あたりに人声や人のいる雰囲気自体が気に触るのか,看護師さん以外は入室禁止。私も近寄り難い状況で,接近禁止命令をうけたDV加害者同然の有様で退散した。翌々日の朝,娘の「おかゆさん」でなんとか食欲が回復し,顔色にも生気が戻る。本来なら,血栓発症に伴う塞栓事故の予防のための歩行をすぐに始めなければならないのだが,上記の状況で1日目は取りやめていた。しかしその日から,医師の強い励ましと,本人のやる気で,歩行練習とリハビリが開始され,ひと安心。

 あとは,順調な回復を待つばかりと思っていたが,物事は必ずしも単純に進まない。私はあとで知ったのだが,術後縫合していたところの端が、うまくひっつかず、再度の縫合が必要となる事態となった。ひと針分だけなので、かなり痛い麻酔の注射をうつのとは変わらないということから、麻酔なしでの縫合をした模様。これを聴いて,痛がりの私の方が,がたがた震えた。
 
 妻の回復をめざす意欲は強く,その後,熱心に歩行(練習)に励んだ結果,当初の予定通り,手術後約3週間で,無事退院した。自宅復帰後,病院での節制生活の成果がでて,妻の体重は減少。一方,メタボ進行中の私の体重は,水泳に精を出すも,妻の留守をいいことに相当量の酒量を確保した生活を続けたので,やや増加。そのため、信じがたいことに、結婚以来はじめて、私の体重が妻の体重を上回ったのだ。妻にとって,減量は好ましいことなので,喜ばしいが,実は、ずっと以前に、妻との間で,「体重が逆転すれば,相当額の金員を贈与する。」との約束をしていたことを思い出した。絶対あり得ないとたかをくくっていたので、かなり高値に設定したはずだ。

 ひと息ついた今、この贈与約束を実行するかどうか,思案中だ。 

本来この程度の内容で噛み付くほどの事は無いですし、麻酔科医の過労死裁判の裁判官と同一人物の可能性は非常に低いので八つ当たりかもしれませんが、腹いせに絡みます。

次に危険性について説明をします,とおっしゃる。そして,麻酔事故,出血,手術中の骨折、この3つが大きなリスク要因で、いずれも絶対にないとはいえないと,いわれた。もちろん,あくまで万一だし,相応の準備はするので大丈夫ですが,一応承知はしてくださいと念押しされた。手術を間近に控えた家族としては,今さら,考えさせてくださいとはいえない。よろしくお願いしますと,頭を下げるだけである。以上で,インフォームド・コンセント終了。

まずここを読むだけで、もし手術の結果が悪ければ間違い無く訴訟となり、さらに確実無比に医師側が負けます。エントリー中の手術は待機手術であり、十分な熟慮時間を医師は患者側に与える事が必要となっています。十分とは半端な時間じゃなく、間違っても、

    今さら,考えさせてくださいとはいえない
こういう感想を患者側に持たせただけで不十分な熟慮時間と事実認定される可能性は「高度の蓋然性」をもってなされます。徳島乳房温存術訴訟や防衛医大コイル塞栓術訴訟あたりを参考にされれば良いかと思います。

予定の2,3時間をすぎても,看護婦等から何の連絡もない。5時間以上経過したあと,無事終了しましたよと,看護婦から告げられ,大手術だったのですかと尋ねると,「いえ,そうではありません。前の手術が長引いて開始が2時間遅れただけです。」とごく当たり前のような返事。「それならそれでどうして言ってくないの」と口まで出かかったが,手術が無事すんだことの安心感から,怒る気力が失せていた。

ここも確実無比に地雷を踏んでいます。もちろん結果が悪かった時の事ですが、手術中に予定外の返事があったときにはどんな修羅場であっても家族に説明しなければなりません。これを怠ると猛烈な非難が訴訟の場に於て行なわれます。福島事件で癒着胎盤の血の海と格闘している時でさえ、家族に説明がなかったことを口を極めて非難されています。このエントリーの手術は全然平和ですし「手術開始が遅れた」程度の事は随時素早く家族に連絡する義務があることになります。

またそういう事が結果が悪かった時に訴訟に至るかどうかは家族の感情が大きなカギを握りますが、

    「それならそれでどうして言ってくないの」と口まで出かかったが,手術が無事すんだことの安心感から,怒る気力が失せていた。
手術が成功したからこそ怒りの鉾先を収めていますが、もしそうでなかったらこの裁判官氏は爆発した事が「相当程度の可能性」で考えられます。裁判官氏は言うまでもなく法律のプロであり、訴訟の専門家ですからタダでは済まなかったのは言うまでもありません。また訴訟となれば被告の病院側は裁判官を敵に回す事になり、勝ち目は極言まで低い「高度の蓋然性」を有します。

ついでにこの部分も危ないところです。

術後縫合していたところの端が、うまくひっつかず、再度の縫合が必要となる事態となった。ひと針分だけなので、かなり痛い麻酔の注射をうつのとは変わらないということから、麻酔なしでの縫合をした模様。これを聴いて,痛がりの私の方が,がたがた震えた。

理由はどうであれ「麻酔なしの縫合」を行った事による肉体的精神的苦痛に対する慰謝料も当然考えられます。考えられるというか訴訟になれば確実にその「野蛮な行為」に請求されると考えて良いかと思います。その過失認定も「高度の蓋然性」があると考えられます。結果不良の場合は家族の感情が反映されますから、

    これを聴いて,痛がりの私の方が,がたがた震えた
必要にして十分な理由が述べられております。

怒りは収まりませんが、今日はこれぐらいで堪忍しておきます。