某所という事にしておきますが、近所のヤブが困るという話で盛り上がりました。ヤブと言っても少々腕が悪いというレベルの話ではありません。医師から見て、あれは問題と言うレベルの話です。おおまかですが、そこでまとまった困るヤブの定義として、
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無謀な治療方針を強行、暴走して患者に被害をもたらし、その尻拭いを周囲の医療機関に押し付ける常習犯
ただその程度のヤブでは医道審議会で問題になったり、今検討されている事故調とも無縁です。民事訴訟は地雷の踏み方次第ですが、そういうヤブに限って踏み抜かないのは世の常です。そこで話は医師自らの自浄作用でヤブ排除はできないかに進みました。そういう風に話が進んでもどこも不自然さはありません。
自浄作用と言うか自浄システムとなると必要なステップは、
- 調査
- 摘発
- 処分
さらにと言っては悪いですが、ヤブと言っても繁盛しているヤブなんです。繁盛しないヤブは自然淘汰で消えうせるのであまり問題にはならないのですが、繁盛しているヤブにはこれを信用している患者がタップリいます。この辺は患者の視線と医師の視線の違いとしか言い様が無いのですが、現実はそんな矛盾する事が普通に起こっています。
つまり自浄システムを考えようにも、明らかに法に対し違反しているのなら自浄システムより先に関係機関が処分します。自浄システムの対象は法令違反未満が対象ですし、そのうえ熱心な支持者までいますから、手の出しようが無いということで論議が暗礁に乗り上げてしまったわけです。
それでも何か手段と言うか手立ては無いかと摸索していたら、産科の医師から冷や水を浴びせかけられるような意見が飛び出しました。
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ヤブを排除したら周囲の産科は共倒れになる
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ヤブ産出被害患者負担 > 既存ヤブ排除患者数負担
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ヤブ産出被害患者負担 << 既存ヤブ分娩数
もちろん産科が逼迫していると言っても地域差があるでしょうが、ヤブ排除の話が出来なくなるぐらい産科の危機は切迫しているかと思うと一瞬茫然となりました。最前線の産科医の声は「ヤブも不可欠な戦力」としないと既に成立しなくなっているのです。この声は複数の産科医からあがったもので、いかに事態が深刻化しているかを思い知らされました。
ちょっと話が前後しますが、ヤブ排除法としてとりあえず出た方法論として、おもしろくもおかしくもないやり方ですが、
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正しい治療方法の啓蒙
もちろんこの話は複数と言ってもたった二人の産科医からの話で、全国レベルではどうなっているかはわかりません。ただ感触として、限られた地域の特殊事情では無いと考えています。発言した産科医の身許を明言できないのですが、日本でも屈指の大都市ないしその近郊の医師だからです。今はそこまで逼迫していなくとも、産科崩壊の拡大速度は目を覆うばかりですから、これがどこでも当たり前の話になっても不思議ありません。また今回のお話は幸い産科の話ですが、他の診療科に拡大しても不思議とも何とも私は感じません。
ヤブも不可欠の戦力となる時代の足音がそこまで迫っているのかもしれません。