12/13のエントリーの余波です。まず最後に頂いた岐阜の小児科医様のコメントを再掲します。
小児科勤務医です。いつも興味深く読ませていただいております。
この話題についても仕事柄いろいろ考えさせられるものがあります。国立感染症研究所感染症情報センターが昨年「医療機関での麻疹対応について」という情報を出しております。
これによりますと、ガンマグロブリンの予防投与は筋注用製剤では保険適応が認められていますが、静注では不可のようです。
ご参考までにURLをあげておきます。
国立感染症研究所感染症情報センターの麻疹接触患者への対応の部分を引用すると、
麻しんワクチン未接種、麻疹未罹患の者が麻疹患者と接触した場合、麻疹抗体の有無を確認することが望ましいが、その時間的余裕がないと判断した場合は、
前後を読んだのですが、麻疹接触患者の条件はとくに記されていません。私の読み落としがあるかもしれませんので、余裕のある方は検証くだされば幸いです。私が読む限り、麻疹未罹患および麻疹ワクチン未接種の人に対し、上記の対応は必要とされていると考えられます。
12/13の議論でcompromised host以外への投与の是非がありましたが、これを読む限り、麻疹未罹患および麻疹ワクチン未接種の人の全員に対し予防措置を行なうようになっていると考えられます。さらにこれは院内感染に限定されると解釈するのにも無理があると考えます。つまり外来で麻疹患者を発見したときにも準用されると考えられそうです。
そうなると外来で麻疹患者を発見した時の対応はどうなるのでしょうか。兄弟や同居家族に対して麻疹歴をチェックして検査治療を行なうのは可能だとして、それ以外の広がりです。考えられるのは、
ここまで麻疹を発見した医療機関の責任で追跡調査を行い予防治療を行う必要があるのでしょうか。待合室の患者までならまだ対応は不可能でありませんが、学校や職場関係になるとどう考えても医療機関の手に余ります。そこらあたりは「麻疹患者発生状況の継続的な把握と疫学調査」と題するところにあると考えるのですが、
- 麻疹患者発生状況の継続的な把握
麻疹発生が疑われる期間(最初および最後に把握された麻疹患者の発症日より前後に4週間)の患者発生状況を把握する。麻疹患者発生時においては、その情報を麻疹発生DB(http://idsc.nih.go.jp/disease/measles/meas0605.html)で登録し、関係者との情報共有をはかる。
- 麻疹症例定義を設定(感染症法に基づく感染症発生動向調査における症例定義****:頁9を参照し、典型麻疹例、修飾麻疹例の両者について把握する。)
- 当該医療機関の医療従事者、入院・外来患者を含め、麻疹症例の積極的探査を実施
- 欠勤者の把握:欠勤理由が麻疹を疑われるものかどうかを速やかに把握する。
- 麻疹が疑われる患者に対する注意喚起を行う。
- 患者発生を継続的に把握
- 麻疹症例の調査
- 症状、これまでに受診した医療機関、ワクチン接種歴、家族の罹患状況・ワクチン接種歴、行動に関して調査を行う。
- 対象となる行動調査の期間は、一般的に発症前2 週間から解熱後3 日を経過するまでである。
- 接触者調査
この疫学調査の但し書きに
疫学調査については、通常の院内感染対策とは異なる対応が必要とされる場合が多いため、状況に応じて、地域の保健所等に相談することが望ましい。
たしかにこれだけの疫学調査を医療機関、ましてや開業医レベルでは到底無理なんで、保健所に相談するのは妥当かと思うのですが、医療情報や個人情報の問題はどうなるのでしょうか。麻疹発生時にはすべて取り払っての情報公開ができるのでしょうか。なんと言っても保健所には「相談」ですから、調査主体は医療機関なのでしょうか。
何か読みながら、もし麻疹患者が発見されたら阿鼻叫喚の騒動が起こりそうでゾッとして来ました。