12/12付読売新聞より
コンタクト診療報酬引き下げへ、不正請求横行で
コンタクトレンズの検査を主に行う眼科診療所(コンタクト診療所)で診療報酬の不正請求が横行しているため、厚生労働省は、コンタクトレンズ関連の診療報酬を引き下げる改定案をまとめた。
12日の中央社会保険医療協議会(中医協)に提案する。
改定案ではまず、コンタクトレンズの検査料が一般眼科の半額となる診療所の範囲を広げる。現在は、外来患者のうちコンタクトレンズを処方される患者が70%以上を占める診療所で、検査料の診療報酬が一般眼科の半額になるが、今後は、コンタクトレンズの患者が30%以上いれば、診療報酬が半額とされる。
診療所の中には、患者に虚偽の病名をつけ、コンタクト関連患者が70%未満であるかのように装って高額な検査料の診療報酬を請求するケースがあったためだ。
また、高額に設定されていた初回の検査料の診療報酬を何度も請求するような不正を防ぐため、これまで2回目以降の3倍以上だった初回の検査料を、2回目以降と同額に減額する。
このほか、同省は検査料請求の仕組みを説明する文書を院内に掲示することを義務付け、患者への情報開示を徹底させる方針だ。
同省は昨年4月の診療報酬改定で、コンタクト関連患者が70%以上なら検査料を一般眼科の半額にする基準を作った。しかし、不正が絶えないため、今月から特に問題がある百数十か所の医療機関の一斉監査を実施している。
まず不正請求を行なっている眼科診療所が悪いのは大前提です。これは動かせない事実です。どの程度の範囲で横行しているのかはこの記事では分かりませんが、問題になるほどと考えて良いかと思います。
ここで
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コンタクト関連患者が70%以上なら検査料を一般眼科の半額にする基準
D282-3 コンタクトレンズ検査料
おそらく半額とはコンタクトレンズ検査料2が適用される眼科診療所の事だと思うのですが、二つに分類される注釈も記載されています。
「別に厚生労働大臣が定める施設基準」が何だかはよくわからないですが、とにかく一定の施設基準で承認された医療機関のみが満額の検査料を、それ以外の承認されていない医療機関が半額になる事が分かります。おそらくですが、施設基準にコンタクト関連患者が70%云々があるのだと考えます。そうなると保険者側は満額請求できる眼科と半額しか請求できない眼科をあらかじめ把握している事になります。
事前に満額請求と半額請求の医療機関が分かった上で起こる不正請求とはどんな形態でしょうか。考えられるのは二通りで、
- 施設基準の承認を受けていない眼科が満額請求を行なった
- 満額請求を行なった眼科が実は施設基準を満たしていない
2.であれば施設基準の認定が甘かったとの批判も出てくるかと思います。またこの世にいかに眼科が多いとは言え、その気になればレセチェックであぶりだすのは不可能ではありません。受診延患者数とコンタクトレンズ患者の比率を算出する事は可能です。いかに、
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診療所の中には、患者に虚偽の病名をつけ、コンタクト関連患者が70%未満であるかのように装って高額な検査料の診療報酬を請求するケースがあったためだ。
とにかく現在のレセチェックでは不正請求が完全にはチェックできないとしましょう。そうなれば通常はチェックできるようにシステムを改めるのが本筋かと思います。不正を許してしまうシステム設計に不備があったのですから、その点を改めて「別に厚生労働大臣が定める施設基準」で承認される満額請求眼科の審査厳格化を行なうのが正しい方針かと思います。これはそんなに不思議な発想ではないと考えます。
ところが厚労省の発想は相当次元が違います。
- コンタクトレンズの患者が30%以上いれば、診療報酬が半額
- 2回目以降の3倍以上だった初回の検査料を、2回目以降と同額に減額
もし不正請求がなければ削減しない予定であったというのなら、これは懲罰的削減になります。不正請求を行なっていたところには同情しませんが、そうでない良心的な眼科まで連帯責任をとらせた事になります。そうなると厚労省の診療報酬の今後の設定方針には、懲罰的連帯責任を行なうが含まれる事になります。
私は不正請求を行なった眼科は悪いとまず断じます。同時に不正請求を行なう余地が生じるシステム設計を行なった厚労省にも責任があると考えます。最悪なのは不正請求があることを口実に懲罰的連帯責任を取らせるのは言語道断かと思います。