高齢者医療費凍結のお話

総裁選中にも出ていたお話、空約束ではなく首相はやる気のようです。9/25付Asahi.comでは、公明党との連立協議で、

来年4月から予定されている高齢者医療費の負担増の凍結について、「早急に結論を得て措置する」などとした連立政権合意書に署名した。

公明党と約束したぐらいですから本気度は高いと見ても良さそうです。具体的な内容については9/21付読売新聞にあり、

  1. 低所得者も含む高齢者(70〜74歳)の医療費の窓口負担を現行の1割から2割へ引き上げ(健康保険法)
  2. 75歳以上の高齢者向けの医療保険制度の創設に伴い、75歳以上の一部に発生する新たな保険料負担(高齢者医療確保法)
これも前回この話題を触れたときにご指摘があったように、後期高齢者医療制度自体を凍結するのではなく、後期高齢者医療制度導入に伴う自己負担分の増加の凍結だけが目的のようです。つまり後期高齢者医療制度は予定通り導入するのは変わらないと解釈するのが宜しいようです。

今国会ではテロ特措法の延長が最大の焦点で、行方によっては解散総選挙も十分ありうるとされていますので、高齢者医療凍結のお話がどれだけ国会で論戦のタネになるかは正直なところ期待薄ですが、この凍結の話が来春の通常国会で焦点になってくるのはありうることです。インド洋での海上給油については正直なところ国民の関心はさして高いとは言えず、薄ボンヤリですが国際社会の近所付き合いで「必要そう」ぐらいの人が多いと思いますし、これを焦点として総選挙を闘っても野党はさして有利とは言えません。

その辺の風向きは民主党も察しているらしく、9/26付Asahi.comに、

 民主党は26日、山田正彦「次の内閣」厚労相を中心に、党内に「医療問題チーム」をつくり、医療制度の抜本的見直しを進めることを決めた。高齢者医療費の自己負担増や医師不足など医療を取りまく課題を整理し、医療制度改革法案(仮称)の通常国会提出を視野に検討を進める。

これはテロ特措法で解散総選挙にならず、通常国会に戦場がもつれ込んだ時の準備と見ています。来春総選挙説は可能性が高いものと予測されています。現時点で焦点になりそうなもので有力なものは医療ですから、総選挙の目玉としてしっかり研究しておく算段ではないでしょうか。もちろん政治は水物で新たな焦点が急遽浮上しないとは誰も言えませんが、少なくとも次の選挙に年金は使いにくそうですからね。

少なくとも医療の現状を憂慮するものとしては、医療が政治問題化してくれることは嬉しい事です。無関心のままでは粛々と予算には大鉈が振るわれ、「予算を削って、医療は充実」の空スローガンばかりが虚しく響くだけですから、政治問題化して国民的関心が向いてくれる事をひたすら期待します。

ちょっと話が脱線しかけていますが、この首相の新方針である高齢者医療の凍結案ですが、とくに野党の皆様に期待したいことがあります。医師が反対し憂慮しているのは自己負担の増加だけではないのです。後期高齢者医療制度自体を問題にしています。後期高齢者医療制度が患者にとってメリットがほとんど無いシステムである上に、自己負担がバカみたいに高い制度である事に反対しています。

自己負担増加に関しては一筋縄では意見がまとまりませんが、負担が増加する代わりに医療サービスが確実に低下する制度である事に反対しているのです。私は小児科医ですから、この制度に造詣が深いとはいえませんから、この制度の概要を簡潔にまとめたブログを御紹介しておきます。私も尊敬する道標主人様のブログです。

医師として本当に問題にしたいのは、高齢者医療費負担の凍結ではなく、後期高齢者医療制度の導入そのものなんです。凍結なんてものは暑くなれば溶け去ります。一方で制度導入は一度なされてしまうとほぼ永遠に続き、文字通り死ぬまで続く「痛み」となります。医療が政治問題化されるのなら、そこまで掘り下げて医療制度全般を論議して欲しいと願います。