ある炎上

このネタを書くのは当ブログ的には下品と思うのですが、個人的に書きたいのでお許しください。もちろんネタは千葉西総合病院 院長 三角和雄のブログです。

まず問題のエントリーだけ取り上げて論じるのは宜しくないので、ある程度過去ログも目を通させていただきました。表現方法にクセが強く、そこに慣れるまでは少し苦労しましたが、内容的にはそれほどの問題は感じませんでした。ただ浮かび上がる人物像として相当アクが強そうである事はわかり、こういう人物はシンパは熱狂的に支持するでしょうが、敵も作りやすいと感じます。もっとも実際の診察での態度、振る舞いは想像の域をでませんし、この程度のアクの強い人物は医師では別に珍しくもありません。

そんな院長のブログですが、8/31のエントリーでネットの表世界に登場する事になります。問題とされている部分を引用します。

 話は変わりますが、奈良県の妊婦たらい回しは全く許せませんね。当院では、理由の如何を問わず救急を受け入れています。たとえベッドが満床だろうが医師が手術中だろうが、関係ありません。ベッドが満床でも救急処置ならできるはずです。また当直医師が手術中なら、自宅から他の医師を呼んで対応すればいいだけの事でしょう。働く気があれば、人を助ける気があれば、難しいことではありません。要は親方日の丸で、”救急の患者を受入れても自分の収入や評価が上がるわけでもないし、他の病院に行けばいいだろう。”と安易に考えるから、こんな事になるのです。自分がその患者様の立場だったらどうか、という事を考えたら、受け入れ拒否はしなかったはずです、絶対に。

これに対する反発がネット上で爆発して炎上したのですが、心を鎮めて、冷静に読めば正論です。「医師であればいかなる犠牲を払っても救いを求める患者を受け入れろ」は医師であれば理想的にはそうでありたい事です。ネット医師が反発したのは「理想」と「現実」の乖離が大きいのに「綺麗事を言うな」の本音だと考えています。建前論と本音論の論争ですから、これ自体は私は問題と考えません。

炎上状態になりましたから、コメント欄の言葉がヒートアップし、それに応える院長の反論もヒートアップしたのはやむを得ないかと考えています。院長とコメンターの論争も感情がかなり剥き出しになっていて、医師としては少し恥しい思いもありましたが、ネットの特性でもありますし、院長のキャラクターから致し方ないと思っています。

私が院長エントリーで唯一問題点と考えるのは、

    当院では、理由の如何を問わず救急を受け入れています。たとえベッドが満床だろうが医師が手術中だろうが、関係ありません。
実に素晴らしい姿勢ですし、医療者ならそうでありたいと思いますが、この発言に虚偽があれば重大問題になるかと考えます。何故ならこのブログはただの匿名ブログではないからです。

ブログに文責があるかどうかはブログにより異なる面があります。大部分のブログは匿名の個人ブログで、公序良俗に反する事が無い限り、自由に自分の主義主張、感じたこと、考えた事を発信できます。その中に多少の嘘や作り話があっても許容範囲かと考えています。そもそも匿名の発信者ですから、相手の身許も事実の確認もできないからです。

ところがブログの中には実名ブログもあります。実名でブログを書くときには、ブログ主のリアル社会での信用が加わると考えます。読み手は書き手の素性がわかっている分だけ信用を置きますし、書き手もその信用の上に自らの主義主張を発信します。匿名ブログよりも内容の評価は重いと考えます。

この院長ブログも実名ブログです。まずその点で匿名ブログよりは発言は重いとしても問題は無いかと思います。次に実名ブログであっても公的なものか私的なものかで異なると考えます。院長と言う職にあっても、院長と名乗って私的ブログを書いても構わないからです。この場合、匿名ブログでよりも実名である分だけ社会的責任は重いでしょうが、あくまでも個人としての発言主張であるからです。

たとえば政治家のブログやメルマガはその職業の性質上、公的な性格を帯びます。そこに書かれている内容は、その政治家の主義主張と同じと見なしても良いかと考えます。国会内の発言よりは軽いでしょうが、しばしば問題発言が起こる講演会程度の重みはあると思います。その点については異論は少ないかと思います。

院長ブログが公的なものであるか、私的なものであるかですが、千葉西総合病院の公式HPから院長ブログへのリンクが紹介されています。これは千葉西総合病院が院長ブログを病院の公式のものとして認めている一つの証拠になるかと思います。たとえば市長のブログがあって、これが市のHPからリンクを紹介していれば、このブログは市の公認のものであると考えるのと同じ事になるからです。

それでも、院長の私的ブログを病院が勝手にリンクした可能性は残ります。かなり指導力はありそうな院長ですから、事務局が気を回して、院長の私的ブログを病院が勝手にリンクした可能性です。勝手にリンクしても公認だろうの考え方はありますが、院長も実務では多忙であるのは間違いありませんから、勝手にリンクされたのを気がついていない可能性です。そうであれば、院長ブログがまだ私的ブログである可能性は残ります。

その点についてどうであろうかと考えていたのですが、コメント欄の混乱の収拾のために9/5のエントリーが為されました。

千葉西総合病院医局秘書です。(院長は出張中です)

根拠のない中傷などが多発しましたので、コメント欄は閉じました。
医療相談の方は、千葉西総合病院のお問い合わせフォームをご利用ください。
その他の方でコメントされたい方は、ご自身のブログで発言なさってください。

2chサイトと当ブログは意味のことなるものです。これらを混同して、匿名で悪意のあるコメントを書き込まれた場合、あらゆる手段を講じて発信元調査致し通報致します。

ご質問がありました救急の件についてのみお答えさせていただきます。

平成16年 6,486件
平成17年 6,870件
平成18年 6,948件

対策の内容自体はどうという事はありません。炎上騒動の一つの結末です。ただ注目したいのはこのエントリーを書かれた方の肩書きです。「千葉西総合病院医局秘書」の肩書きで書かれていますので、このブログは実名の公的ブログと考えざるを得なくなります。公的ブログとなれば院長のエントリーは、院長の公式発言に限りなく近い重みが生じる事になります。

公式発言となれば明らかな虚偽の発言を場合、これについて責任が問われる事になりかねません。この病院が救急医療に非常に前向きである事は、秘書エントリーで明らかです。これについては中傷に近い内容のコメントでさえ認めているところです。ただし院長が奈良を引き合いに出して「全部救急を受け入れています」は、これが虚偽なら問題発言となります。

せめて「当院ではそういう事態が起こらないように、出来る限りの努力を傾けています」なら無問題ですが「全部」という発言となれば、all or nothingの問題に変わり、救急要請を断った事が1件でもあれば虚偽発言とされてしまいます。非常に大きな問題であると考えます。

もちろん本当に全部であるならこれも問題はないのですが、どこからか断られた明らかな証拠が浮上してしまえば、院長の公式発言ですから、責任問題となる可能性さえでて来ます。また病院公認の院長ブログであっても、辺境ブログの誰も注目していないものであれば良いのですが、短時日のうちにネット医師でも知らない人間が少ないほど著名な発言になっていますし、周辺の開業医からも強い反感が出ていますので問題は複雑化する事もありえます。

仮想世界の炎上問題が、現実社会の抗議運動に変わり、この病院の運営に支障がでることがないように願っています。救急件数から推測して、この地域に不可欠な医療機関と考えるからです。感情がこじれての騒動でこの病院の機能低下が起これば、一番不利益を蒙るのは患者です。

個人的には院長が少し折れてあげるのが一番良いかと思うのですが、ここまでになると難しいですかね。