安倍800

幅広い情報収集力とその分析力、ユニークな視点で楽しませてもらっている天漢日乗様の7/11付エントリーから引用です。この話はブラックジョークですが、うっとうしい梅雨空にお似合いなので御紹介させて頂きます。

まず「安倍800」の使い方ですが例文が提示されていました。

今日学校がえりの小学生の会話聞いてたら

「俺なんか1日でゼルダの伝説クリアしちゃったぜ?」

「おまえ安倍800こいてんじゃねーよバ〜カwww」


って言ってました

皆様良くご存知とは思いますが、語源の解説をしておきます。自殺された松岡農相の後を継いだ赤城農相ですが、着任した途端に急浮上したのが経費不正処理問題。この問題は安倍政権の発足直後に当時の行革担当相であった佐田玄一郎氏が問題となり、弁明しきれずに辞職する羽目になっています。もちろん赤城農相の前任者である松岡前農相も、基本的にこの問題に取り付かれて自殺を選ばれた事も記憶に新しいところです。

辞任に追い込まれた佐田氏の手法が、架空の事務所の経費算上でした。赤城農相も同様の手法を使っているとの指摘なんですが、7/8のテレビの生の党首討論会で追及された安倍首相が、光熱費800円の架空計上疑惑に対して言い放ったとされる言葉があります。

    光熱費800円のヒトを辞めさせるんですか
テレビは見ていないのですが、翌日の新聞でもそう書かれていましたから、本当にそういう発言があったようです。私が読んだ記事では「800円で大臣を辞めなきゃいけないんですか」だった様な気がするのですが、ほぼ同じ意味と考えます。

これも書くまでも無い事ですが、簡単に反論しておきますと、安倍首相の論理は「たかが800円の事で、大臣を辞任せよとはおかしいじゃないか」ですが、選挙民の感覚はかなり違い「大臣だからこそ800円の不正でも辞任する必要がある」です。つまり安倍首相は大臣は重職だから「800円ぐらいで辞任の必要は無し」で、普通の感覚は大臣は重職だから「800円でも辞任すべし」です。180度に近い感覚の相違と考えます。

政治家は清廉潔白であるべしが大原則です。現実の政治は清廉潔白だけでは何もできないのも知らないと言いませんが、少なくとも国民に見せる姿は清廉潔白であるようにする演出が必要とされます。政治家が政治資金集めに腐心するのは新人時代は選挙資金集め、有力者になると政治勢力拡大のための資金集めです。政治家が政治資金を集めるのは政治のための必要悪としなければなりませんが、その会計処理には細心の注意が必要とされます。

前首相の小泉氏もさぞ膨大な政治資金を扱ったであろうと考えますが、どこにもボロを出していません。その前の森元首相も失言は紙面を散々賑わしましたが、政治資金の会計処理では突付かれていません。有力政治家たるもの政治資金の捻出と会計処理が完璧である事は必須の前提条件であると考えます。政治家の基本であり、それもロクロクできないような政治家は失格の烙印を押されても不思議ありません。赤城農相は佐田氏や松岡氏と同様に政治家の基本が全く出来ていないと言えます。

それにしても安倍氏は自分の言葉の重さをどれだけ自覚しているか疑問です。安倍氏は言うまでもなく内閣総理大臣であり、内閣総理大臣は日本の権力者の頂点であります。首相の言葉の一つ一つは千金の重みを持ち、一度唇から放たれた言葉は内閣総理大臣の言葉として日本中に伝えられます。

「800円ごときで・・・」の感覚は理解できなくもありませんが、私が酒場で吠えるのと、首相が公開の場で話すのとは価値が天と地ほど違います。私が首相と同じ言葉を話しても何の影響力もありませんが、首相が話すと言うのは政府がそういう方針であると同じ意味となります。つまり閣僚は800円までの犯罪行為は不問とするとの宣言です。この宣言は小学校でも高学年なら新聞を読んで知ることは可能ですし、中学生以上ならなおさらです。

たしか安倍首相は教育に異常に熱心な姿勢を見せていましたが、その首相の基本姿勢が「800円では大臣は免責である」である事を現場の教師はどうやって子供に伝えるのでしょうか。私は子供たちが「800円までの万引きは問題ないのね」と誤解することを心配します。

安倍氏が小泉氏に較べて政治手法であざとさが欠けるのは衆目の見るところです。もっとも小泉氏ほどの辣腕は類稀なる才能ですから、安倍氏が同等の才能が無い事を必ずしも責められません。それでももうちょっとマシなブレインと言うか、知恵袋が周囲にいないものかと落胆します。

私も政治に素人ですが、安倍氏は政権初期の佐田氏と経済諮問会議議長の本田氏の更迭がトラウマとなっているように思います。これ以上の閣僚の辞任は政権に関わるとの助言を受けたのだと思いますが、安倍氏の頭の中には「辞任させてはいけない」が呪縛となり、松岡氏は逃げ道がすべて塞がれ自殺、久間氏は四面楚歌になり泣く泣く辞任となっています。赤城氏も「問題なし」と強弁し、ひたすら擁護の姿勢です。

安倍氏の「辞任させてはならない」の呪縛は松岡氏、赤城氏の収支報告への対応に現れています。政治資金規正法では収支の詳細を決められた範囲のみ報告すれば良いとなっています。これを根拠に「明細は報告不要」と頑張っていますが、頑張れば頑張るほど「やっぱり隠しているんじゃないか」と疑惑が募ります。政治資金規正法に報告の義務はありませんが、報告してはならないとの規定ではありません。

安倍政権の命運は参議院選挙にあるのですから、やましくなければドーンと明細を報告させれば良いのです。そうすれば赤城問題は速やかに鎮静します。これはあくまでも赤城氏が国民の疑惑に対し身の潔白を自主的に証明するという例外にしておけば良いのです。選挙さえ近くなければ、「報告の義務無し」で時間とともに消え去るのを待つのも政治ですが、今は時期が違います。

また政治資金規正法の改正も「する」と言っておけば良いのです。選挙後に蒸し返されても総選挙まで最長で2年はあるのですから、それこそウヤムヤで骨抜きにする手法はいくらでもあるはずです。そこをひたすら言葉を中途半端に濁すものですから、疑惑だけが膨らんで選挙に突入すると言う最悪のシナリオを進んでいると見ます。

それでも安倍首相の800円発言を「安倍800」と茶化せるだけ国民はまだ健全のようです。梅雨空のブラックジョークのお話でした。