駒鳥を殺そうとしているのは誰?

看護師内診問題の続きを書くつもりで構想を練っていたのですが、書こうか書こまいか非常に悩んでいます。と言うのもさんかい様から微妙なコメントを頂いたからです。

関係者から直接事情を聞きました。詳しく書けないのですが、心配いらないようです。毎日新聞の記事は相手にしなくていいです。むしろ、逆に、裏に読んでください。今月の学会や水面下で真相が伝わると思います。マスコミが取り上げないか、毎日新聞(それと読売の記者一人)だけが騒いでいたら、気にしなくていいということ。厚労省内部の立場があるので、しばらく大人しくして、看護協会(のある人)と(それにつながっている)毎日新聞(のある人)にネタを提供しないようにとのこと。産科医は悲観する必要はありません。これ以上の発言は控えますが、安心して学会などで事情を知っている人から話を聞いてください。医会会員にはいずれ知らされると思います。他科の先生方や一般の方は、ちょっと待っていただいて、5月に入ってから確認していただければ。

このさんかい様ですが朝のネット巡回で確認したところどうやら本当に産科医の様で、産婦人科医会のさる筋から何らかの情報を得たのは信じても良いようです。そうなるとうかつな事は書けなくなります。とは言うものの昨日からこのネタだけを一生懸命考えていただけに捨てるのも惜しいので、

    看護協会(のある人)と(それにつながっている)毎日新聞(のある人)にネタを提供しないようにとのこと。
これを出来る限り守りながらエントリーする事にします。


今日のタイトルを読まれてアガサ・クリスティを思い浮かべた人と、パタリロを思い浮かべた人がいると思いますが、ココロはアガサ風ですので、そのつもりでお読みください。今回の内診問題騒ぎの筋立てをもう1回なぞっておきます。まず発端は3/20の参議院厚生労働委員会の質疑(天漢日乗様より引用)での柳沢大臣の答弁が発端とされます。

お医者さんの監督の目もある、同僚のまた目もあるというようなそういうことの中で医療行為というのが行われている中で、少しでも看護師さんに力をかりる余地がないのかどうか、これを医政局長と話をして、専門の人に検討していただくというような可能性があるのかないのか、それはやらせていただきます

ここから「厚生労働大臣が看護師内診問題の見直し言明」と報じられこの騒動は始まります。この答弁の趣旨として、看護師の内診行為禁止通達の撤回ないし見直しを含ませているのはわかります。ただしちゃんと逃げは打ってありまして、続く言葉に

駄目ですよという答えも十分あり得るわけでございまして

この言葉も今から考えると混乱の火種になっていると思います。

この後さすがに大臣答弁ですから内診問題の再検討が医政局を中心に行なわれたようです。どういう形式、形態であったのかはさすがにわかりませんが、大臣答弁にある「専門の人」の中に産婦人科医会が含まれていたのはまず間違いありません。どんな事を話していたかも推測に頼らざるを得ませんが、HPから削除された産婦人科医会の通知とガイドラインの内容を分析して一産科医様から鋭い指摘を頂きました。これに私なりの見解も含めてまとめると、

  • 厚生労働省は看護師内診禁止通達の撤回はしない。
  • 撤回をしない上で看護師に分娩で必要な内診行為を実質出来るようにする。
ならべると矛盾した命題ですが、この二つを満たす通達を作成する検討が行なわれたと考えても良いかと思います。そのために考え出された解決策が、
    内診内測分離論
産科医が看護師にやって欲しい内診行為のうち、内測だけを内診から定義として切り離し、これは可能とする通達を作成する事としたようです。HPから削除されたガイドラインの内容は、慎重かつ丁寧に内診行為のうち、内測を定義した内容であると一産科医様は指摘しています。

シナリオとしては通達では曖昧模糊に看護師が一部の助産行為を医師の指示監督の下に行なえるように記載し、それを受けた産婦人科医会が具体的なガイドラインを発表し、厚生労働省がそれを容認すると言ったものと考えられます。姑息と言う意見も出てきそうですが、これで厚生労働省は通達撤回という失態を免れ「名」を取れますし、産婦人科医会は看護師に分娩で必要な行為を合法的に行なえる「実」を取れます。タイムスケジュールも推測できます。まず厚生労働省通達が発表され、それを受けた産婦人科医会が厚生労働省と検討する期間をある程度置き、しかるのちにガイドラインとして発表と考えられます。

ところがこのシナリオの進行を快く思わない勢力がいます。その勢力とは看護協会です。看護協会が快く思わない理由としてこれも一産科医様が説明しています

産科看護師は確かに産科医療での鬼っ子だと思います。私も産科看護師制度が出来たころのことは良くわかりませんが、助産師にすれば、助産師という資格があるのに、日本産婦人科医会が新たに産科看護師という制度を作ったのは自らの職域を侵されるという点で面白くなかったと思います。以来、数十年にわたって産科看護師廃止は助産師会及び看護協会の悲願であったわけで、その怨念・執念を甘く見てはいけないです。

看護協会の数十年以来の悲願となればこの動きに脊髄反射で反対運動を起しても不思議ありません。ここで看護協会が3/30付の通達にどれほど関与していたかになります。後の動きから推測すると通達作成会議に参加していなかった可能性が強いと思います。参加して通達内容に合意していれば動きはもっと縛られるはずだからです。ただし看護協会と医政局看護課はツーカーであり、通達の内容自体の情報は精度高く入手していたと考えられます。

事実上一体である看護協会と看護課は通達の無効化の戦略を練ったと思います。そこで行なわれた戦術が、

  1. 通達が出れば疑義照会を行なう
  2. 疑義照会には厚生労働省の公式見解である内診禁止を即時回答させる
  3. 内診禁止部分を極力強調してマスコミも含めたプロパガンダ戦術を行なう
疑義照会の回答は看護課が行なったようで、看護課が行った事を問題視する意見がありますが、厚生労働省の公式見解ですから、「内診解禁であるか」と真正面から質問されたら「内診は禁止」と回答せざるを得ない事になります。ここは通達の内診内測分離論の弱みと言えます。言質を取った看護協会はこれもおそらく打ち合わせ通りだったと考えますが、例のマスコミに過大なぐらいの煽り記事を書かせます。同時にHPにも大々的にキャンペインを展開し、看護協会員にもニュースとして周知徹底工作を行なっています。

ここでヘマをやったのが産婦人科医会です。看護協会の戦術に慌てふためき、医政局と打ち合わせなしに、通知とガイドラインを発表したと考えます。最大のヘマは医政局と水面下で合意済みであることを明記し、さらに内容に内診解禁の文字を躍らせてしまった事です。これは医政局の逆鱗に触れる事になります。逆鱗の内容も報道の通りです。

そうなるとこれから第2幕があることになります。さんかい様の情報通り、元のシナリオに戻ればまだ産科は救われるのですが。