ドクターバンク・モデル例

地域医療支援中央会議の配布資料の医療法改正及び医師確保対策についてで絶賛されている2つの事業です。資料にまで書いているのですから、きっと理想的にうまく運用されているに違いありません。とはいえ長崎と宮崎の事例のため私の知る範囲ではありませんし、この2つの事業の評価を残念ながら読んだことがありません。今日のエントリーで紹介しますので、もし情報を知ってられる方がおられれば教えていただきたいと思っています。厚生労働省が推奨するぐらいですから、この事例をモデルに全国展開していく可能性が高いと考えるからです。

まず長崎の事例です。

基本システムは、

  1. 県内の離島に所在する市長からの要請
  2. 医師を全国的に公募して、長崎県職員として採用
  3. 県内の離島診療所に派遣
続いて特徴が書かれています
  1. 県職員(常勤の地方公務員)として採用し身分を保証


    • 給 与:市町村が支給、1600万円程度/年(免歴10年)
    • 退職金:県が支給


  2. 有給の長期自主研修を保証


    • 給与(自主研修期間):市町村が支給、1200万円程度/年(免歴10年)
    • 原則として2年間を1単位として、1年半の離島勤務後、半年間の有給の自主研修を保証。これを繰り返す(2単位まとめて、3年間勤務後、1年間の自主研修も可)。


  3. 24時間365日支援


    • 県の離島・僻地医療支援センター専任医師が、国立長崎医療センター協力の下、派遣医師の相談にいつでも応じる(必要に応じ、診療応援や代診医としての支援も)。
このシステムの成果として、
    上記特徴により離島勤務に際しての不安(専門外対応、離島勤務長期化、再診医学からの遅れ)を解消。現在までに5名の採用・派遣実績。

良いのか悪いのか判断し難いシステムですし、5名の採用・派遣実績が多いのか少ないのかわかりませんが、実際にこのシステムを経験ないし、経験した医師の声を聞いた人の意見を聞きたいと思います。システムを読んだ感じでは、国立長崎医療センターの負担が相当重そうな感じがするのですが、国立長崎医療センターがどの程度の規模で、どれぐらいの活動をしている病院かわからないのであわせて情報が得られれば今後の参考になります。


もう一つは宮崎県の事例です。基本システムは、

  1. 県職員として医師を採用
  2. 僻地公立病院と県立病院等の地域医療科をローテート
  3. 2年間地域医療に従事すると最長半年間の長期研修を取得できる。
特徴は、
  1. 勤務ローテーション


    • 勤務ローテーションは原則として4年間を1単位
    • 2年間僻地病院に勤務した場合、本人の希望する長期研修(半年間上限)に取り組める。残りの1年半は県立病院等に勤務


  2. 長期研修制度


    • 長期研修は半年間を上限として、医師本人の希望を反映し、先進的な取り組みを行なっている病院や研究機関等で研修を行う事が出来る。


  3. 身分及び財政負担


    • 県職員として採用
    • 4年間のローテーション期間のうち、市町村派遣期間の2.5年間は市町村が、県立病院に勤務する1.5年間については、県が、それぞれ人件費を負担
    • 研修経費は県が全額負担
成果として
    今後4ヵ年をかけて6名の医師を確保予定。現在1名採用し、H.19年4月から派遣予定

長崎にくらべると給与を明示していないのは、市長村立の負担分が各々の給与規定に従うとしているためではないかと考えています。また希望する病院や研究機関等の斡旋はどうするかと思うのですが、この短い資料からはわかりません。医師が国内ではなく海外研修を希望したらどうなるかなんて素朴な疑問も出てきますが、これもよくわかりません。

厚生労働省がわざわざ取り上げてモデルとして推奨した長崎、宮崎のドクターバンクの事例ですが、このシステムを実際に見聞きした医師の評価や、実際を知らなくとも書かれているシステム自体についての評価を寄せていただくと幸いです。