脳内お花畑

平成19年第1回経済財政諮問会議議事要旨より。全文は引用元を御参照頂きたいのですが、議論はホワイトカラー・エキザンピション(WE)についての部分で10ページの半ばあたりにあります。発言者は丹羽宇一郎伊藤忠商事株式会社取締役会長。発言全体は少し長めなのですが、その前半部分を引用します。

ホワイトカラーエグゼンプションについては、どうも風潮として経営者が悪人でいつもいじめているようにとられがちだが、そういうことではない。

ホワイトカラーエグゼンプションの本当の趣旨は、大手企業の大部分がそうだが、若い人でも、残業代は要らないから仕事をもっと早くスキルを身につけてやりたい、土日でも残業代は要らないから出社したいという人がたくさんいる。しかし、経営者がしてもらっては困ると言っている。なぜなら出社されると残業代を全部払わなければいけない。家で仕事をするよりも、会社に来て色々な資料もあるし、これで自分が人よりも早く仕事を覚えて仕事をしたいんだと。それを今は仕事をするなと言っている。ホワイトカラーエグゼンプションの制度がないからだ。だから、少なくとも土日だけはホワイトカラーエグゼンプションで、残業代は要らないから仕事をさせてくださいという人に、仕事をするなという経済の仕組みというのは実におかしい。これを何とかしてあげたい。

どこかの洋酒のCMに「これ以上何も足さない、何も引かない」なんてコピーがありましたが、これ以上書くと余計そうですが、強いて埋め草として補足します。

まず

    大手企業の大部分がそうだが、若い人でも、残業代は要らないから仕事をもっと早くスキルを身につけてやりたい、土日でも残業代は要らないから出社したいという人がたくさんいる。
この会議は日本の政策に大きな影響を及ぼす公式の会議です。記録に残され公開される公式の会議である以上、あやふやな憶測や思い込みで発言する事はされないかと考えます。そうなれば大企業の大部分の社員は若い人でも(当然年長者も含まれる)「土日は残業代無しでも出社したい」と切望している事を調査確認した事になります。大手企業とはどこまで含まれるか知りませんが、さぞ大規模な意識調査であったかと思います。

そんな大規模な調査を行なって「土日は残業代無しでも出社したい」が社員の大部分の意識であるなら、これを大威張りで公表しないのが摩訶不思議です。WEは経営者ではなく従業員が切望している制度との強烈無比のアピールになるに違いないからです。世論調査を見る限りWE歓迎派は少ないかと感じるのですが、世論調査で反対しているのは大手で無い企業の社員意識の反映なのかもしれません。

それほどの大規模な調査を行なったとの噂も聞かないので、この丹羽会長が発言の基として行なった調査はずっと小規模なものであったのかもしれません。サンプリング調査で全体の動向をつかもうとする調査方法です。これは憶測に過ぎませんが、会長自ら骨を折って何人かの社員を呼び直接聞き取り調査をした結果かもしれません。もしそこまでの熱意を持っての調査であるなら、結果も十分うなづけるものがあります。

    しかし、経営者がしてもらっては困ると言っている。なぜなら出社されると残業代を全部払わなければいけない。ホワイトカラーエグゼンプションの制度がないからだ。
丹羽会長の知る限り日本にはサービス残業は存在しないもののようです。自主的に「勉強したいから会社で休日に資料を使わせてくれ」と出社してきたものにも100%の残業手当を支払っているようです。もちろんそんな事を行なっているのは、大部分の大手企業だけとただし書きはついています。そうなると労働環境で問題になっているサービス残業は大部分の大手企業では存在せず、主に中小企業に特有の問題になります。サービス残業問題はそういう種類の問題では無かったように私は感じていましたが、丹羽会長の経済諮問会議の公式発言を読む限り、そうではなかったと初めてわかりました。
    だから、少なくとも土日だけはホワイトカラーエグゼンプションで、残業代は要らないから仕事をさせてくださいという人に、仕事をするなという経済の仕組みというのは実におかしい。
これは「大手企業の大部分の社員は土日に残業代無しでも仕事をしたいと熱望している」から「経営者は仕事をさせたくても残業代を支払わなければならない」に論理が展開し、その矛盾の救世主としてWEで社員の熱望どおり、土日に残業代無しで仕事を「やらせてあげる」WEは、経営者がばかりが望んでいるのではなく、大手企業の大部分の社員が待望久しい制度であるとの結論と解釈出来ます。

目から鱗」とはこの事で、WEが提案される社会的背景、企業事情がそうであるとは私は大きな誤解をしている事に気がつかされました。さすがに日本を代表する総合商社の経営者であるだけあって、社員の事を常に考え、その意識のあり方を常に親身になって考えていなければこの発言は行なえないかと感じます。

こういう貴重な人材には、これからも日本のこれから、美しい国の建設のためにも益々の御助言、御尽力を頂かなければなりません。おそらく東京在住もしくは東京での御勤務かと推察いたしますので、このブログで有志を募り、会長の身体精神の健康管理のためにスペシャルチームを結成させて頂きたいと思います。内科、外科はもとより、なにより精神科の先生方の全面協力を頂き渾身の管理をさせて頂きます。私は残念ながら小児科ですので参加できない事を極めて遺憾に存じます。