望む、東京情報

昨日は軽めの話題(だったはずですが)でしたが、一日足踏みした後に当面目指すべきと考える話題に触れようと思います。東京はどうなっているかという話題です。これは医療危機の問題では非常に重要なポイントです。どういうことかと言うと、医療崩壊の過程を考えればすぐに分かる事で、現実に起こっている通り、崩壊現象は僻地、地方から起こります。そこから都市部に波及していくのが順序だと考えるのが妥当です。従って崩壊の影響が最後に現れるのは首都東京だろうと考えられますし、東京が崩壊する時は日本の医療は焼野原になっているだろうという事です。

東京が崩壊して初めて医療の荒廃ぶりが知れ渡り、崩壊した医療の再生を国民的課題として論議のテーブルに上がると考えています。「そこまで」という意見もあるでしょうが、現実の医療への関心はどう考えてもその程度で、神奈川の例を見るように少々の都市の医療が傾こうが関心は低いように感じています。東京が傾いてこそ医療が真に政治問題化すると考えます。

神戸に住んでいる関係もあり、東京は漠然と安泰のイメージがありました。2chでの先鋭的な意見ですら、東京に言及するときはmildな表現にとどまり、都内の病院の崩壊については「例外的」の印象の表現に受け取っていました。安泰であるが故に崩壊に瀕している僻地から逃散すれば、安泰な都市部、とくに東京にという議論の流れがあります。つまり東京こそ医療の本丸であり、少なくとも現時点では磐石の体制であろうと言う印象です。

ところがうちのブログのレギュラーである勤務医様から「東京も危ない」という意見が寄せられました。それについてエントリーを立てたところその意見を補足するコメントを頂きました。勤務医様のコメントを疑うわけではありませんが、最後の砦であるはずの東京が危ないとなると、医療崩壊をにらんで「10年先」とか「4、5年先」というタイムスパンではなく、来年、再来年という時期で大激動が起こる事になります。

少なくとも勤務医様が勤められている都内某大学病院では大きな動きがあるということです。繰り返しますが、私はこれまでのコメント内容から勤務医様情報は信用が置けると判断しています。10/29のエントリーにも掲載したコメントを再掲します。

ついに始まりましたよ。

一人で救急指定病院で当直(バイトという立場で)の応援は嫌だとうちの医局の医師たちが拒絶し始めました。だったら医局を辞めるそうです。続出しているようです。入局説明会で実はこういった病院での当直はあるかと研修医の先生方が質問が続出し、紛糾しました。来月からそちらの病院(複数ですが)にお断りせざるをえません。

少なくとも個人病院で救急指定の看板をおろすという話は今月になり増えてきました。それがいいですと新聞を読まない連中以外もう誰も止めません。

転送を断っても警察から事情を聞かれ 書類送検の可能性ありでは仕方ないです。救急センターの集約化といっても都内の大病院の救急センターで小児科や産婦人科の先生たちが加わっているセンターは知りません。もう人を出している余裕もなくなってます。

こういったケースでどういう風に治療すべきか方針を明示できる産科の医師もいないそうです。

続いて頂いたコメントにはさらにこう記されています。

私のコメントを取り上げていただいて有難うございます。
都心の方がとっくに崩壊現象が起きているというのが私の持論です。1次 2次 3次救急といいますが、個人病院の救急は一次救急が主体でほとんどが医師が一人で夜間対応しています。大学病院でマイナー外科と卑下される眼科や耳鼻科の医師たち(私はそうは思っていません。)は病棟や外来が忙しいので平日昼間に生活費をかせぐのにバイトに出かけるのは困難です。外科や内科の医師も足りないのでそういった専門の医師にも救急当直の声がかかります。単なる病棟の管理当直(救急の診療はみなくてもよい)のみのために医師にバイト代を払う私立病院なぞありません。
人口が多いと潜在的な患者さんも多く 救急隊からの依頼もその分増加し、ひどいと一晩で一人の医師が5-10台救急車をむかえることもざらです。これとても「甘いよ!」とお叱りをうけるかもしれません。
昼間だと一見病院やクリニックだらけに見える駅前の商店街も夜間の医療状況は極めて寂しいものです。
従って眼科が当直医だからという理由でことわれないのです。ましてや昨今の風潮でしょうか 電話連絡もなく独歩にて来院し、納得されるまで帰らない患者さんも多いので一台でも救急車が来ると転院に手間取れば他の患者さんから非難の嵐です。
こういった内容を本当に公開していいのかなと思ってました。地域住民の方がパニックに陥らないのも マスコミが恣意的に情報を封印しているのかなとも疑っています。
中堅の医師だって 民間会社で医師の斡旋を行う会社の存在は皆知ってます。同じ都内の病院に逃げ出すのはとても簡単です。
派遣病院(とりわけ救急指定病院と標榜)から 来月で病院も医局もやめまーすと言われ 後任人事の手当てがつかず、それではさようならと派遣打ち切りになる例が多いのは何も私の病院だけではありません。出せたとしても 麻酔科の常勤の医師がいないと手術もできない病院もあります。
近隣の大学病院ともお互いの腹の探りあい 押し付け合いです。
派遣やバイトを拒否する彼らがまともで それでも行けよとは誰もいえません。刑事事件になるか書類送検になって誰が責任を取ってくれるんだと言われ、年長者である私どもに返す言葉もありません。

都内のど真ん中 女性が誰でも職場にしたいという神戸か青山の公的病院ですが、http://www.aoyamahosp.metro.tokyo.jp/ をよーく見てくださいね。
もう産科は閉鎖してるんです。別の大学病院(超強烈な)の医局人事をもってしても人手が足りないんです。
これが私のevidenceです。

これ以外にも貴重な情報を頂いていますし、勤務医様以外からも情報をもらっています。これはどうも東京も安泰ではないと証左ではないかと判断せざるを得ません。他の情報も合わせて東京の情勢は次のことが推測されます。

  1. 救急医療の当直バイトを支えていた大学医局がまず人数的に不足し、さらに残っている医局員もリスクの高い当直バイトを忌避し始めた。
  2. 当直医の供給を打ち切られた救急病院は人手不足のため救急の看板を下ろし始めた。
  3. 奈良事件で搬送要請を断った病院まで捜査の手が伸びる事実が、さらに上記2つの流れに拍車をかけている。
  4. 救急を実質上やめた病院の影響が、他の救急病院の過度の負担になりつつある。
  5. 療養病床削減問題でも触れた、


      一般病床→療養病床→老健→特養


    の流れが欝滞しているため、有名大病院ですら、一般病床が機能不全に陥る徴候が出始めている。端的には一般病床の病床利用率が上がる一方で手術件数の減少するという現象が顕在化し始めている。
他にもまだあるでしょうが、とりあえず思いつくままに挙げればこれぐらいです。ただもう少し情報が欲しいのが本音です。簡単に言えば、こういう現象がたまたま勤務様周辺にのみ起こっている現象なのか、それとも東京で広範囲に起こっている現象なのかの情報です。なんと言っても地方在住者ですし、東京なんて20年以上前に一度しか行ったことが無いので、情報蒐集にご協力いただけると大変嬉しく思います。よろしくお願いします。