厚生労働省審議官の御高見

うちのブログは報道記事のベタコピペはしない方針なのですが、じつに興味深い記事をみつけました。待っていたのですが、地方紙の悲しさでWebに上がって来ないようなので、手作業で転記します。私には相当違和感を覚える内容でしたが、皆様はいかがなものでしょうか。

ものは10/5付神戸新聞7面の「争論」に掲載された記事です。テーマは「在宅医療の在り方、課題は」と題され、基本的に一問一答形式でインタビューされたもののようです。質問の趣旨は「厚生労働省が療養病床を減らし。医療の必要性の低い入院患者に退院を促し、自宅や介護施設などで療養してもらう方針を打ち出した。背景には増え続ける医療費の伸びを抑えようという狙いもある。在宅医療の在り方や課題などを聞いた。」となっています。

争論というぐらいですから、二人の論者の意見が掲載されているのですが、ここでは厚生労働省審議官宮島俊彦氏の主張を取り上げます。ちなみに宮島氏は「一九五三年、神奈川県生まれ。国民健康保険課長などを経て二〇〇五年から現職。担当は医療保険・医政。」の略歴が書かれています。

−治療と療養を目的とする療養病床を大幅に減らす理由は何か?

「三点ある。一つは病院ではなく、自宅などで療養したり、亡くなったりする環境を整える必要があること。約50年前までは自宅で亡くなる人が全死亡者の約八割を占めていたが、今は逆に約八割が病院や診療所でなくなっている。できるだけ終末期は自宅で療養したいという人が約六割いるという調査結果もある。二つ目は医療提供体制の変換が迫られていることだ。老人医療無料化の『副作用』として、本来、福祉で対応すべき高齢者を病院で対応してきた歴史的経緯がある。高齢者の長期療養を自宅で対応できるようにすれば、長すぎる平均入院日数を短くし、医師や看護師を人材不足が深刻な小児科や産婦人科に回すことができる。」

−三点目は?

「調査の結果、療養病床にはほとんど医療の必要性のない患者が約8割もいることが分かった。介護施設や在宅に向かわせるべきだ。」

−増え続ける医療費の伸びを抑えることが大きな狙いでは?

「目的のすべてではないが、保険財政上の問題もあることは確かだ。療養病床では月に四十九万円くらいの医療費がかかるが、老人保健施設なら三十四万円、在宅サービスならもっと少なくすむ。入院が長期化して亡くなる人が増えれば、(医療保険制度は)やっていけなくなる」

−病院を追い出される患者も出る?

「計画では、介護保険の療養病床約十三万床と医療保険の療養病床約二十五万床を六年かけて再編し、医療保険の十五万床に集約する。その際、療養病床は老人保健施設などに転換するので、患者が追い出されることは考えられない」

−それでは受け皿が足りないのでは?

「現在、一年間に亡くなる人は百万人程度だが、団塊の世代(一九四七−四九年生まれ)が二十年後に亡くなると推定すると、死亡者は約170万人になる見通しだ。この人たち全員を療養病床で対応する事は不可能だ。受け皿として、老人保健施設などの介護施設だけではなく、有料老人ホームやケアハウス、安い高齢者賃貸住宅などに入ってもらい、外から在宅医療や介護サービスを利用できるようにする」

−ことし四月から「在宅療養支援診療所」(支援診療所)の整備を始めたが、どんな診療所か?

「二十四時間体制で往診や訪問看護ができる診療所のことだ。必要な医師や看護師がいることや、他の医療機関と連携して緊急入院に対応できること、介護計画を立てるケアマネージャーと連携していることなどの条件をクリアした診療所になってもらっている。既に全国で八千五百九十五の診療所が名乗りを上げている」

−患者が安心して在宅医療を受ける上での課題は何か?

「二〇〇〇年度に始まった介護保険制度で、在宅介護サービスは充実している一方、病気の治療など在宅医療の取り組みが遅れている。在宅介護サービスを利用していても、体が心配というのでは在宅療養はうまくない。入院・治療、リハビリ、在宅という流れに沿って医療に取り組むためには、在宅における支援診療所の果たす役割がとても重要だ。今後、患者が安心して在宅療養できるよう、都道府県が中心となり、在宅療養と介護に総合的に取り組む地域ケアの整備を進める必要がある」

絡みつきたくてウズウズするのですが、この争論の感想というかまとめ的な記事が良く書けておりこれも転記します。書いたのは共同通信編集委員の楢原多計志氏です。タイトルは「家族の負担は予想以上」です。

現実の問題として、終末期に至るまでの在宅医療が家族に及ぼす負担は予想以上に重い。肉体的、精神的な労苦だけではない。医療費の引き上げが続き、経済的な負担も決して軽くない。

厚生労働省の検討会がまとめた終末期医療に関する調査(2002年)によれば、自宅で最後まで療養することが困難な理由は「介護してくれる家族に負担がかかる」がトップ。「病状が急変したときの対応が不安」、「経済的に負担が大きい」が続く。

少子化核家族化で家族の介護力は低下する一方だ。医療費の伸びを抑えこもうと、現実を無視した家族の介護力を当てにするような在宅医療はごめんだ。

ご感想はいかがなものだったでしょうか。転記に疲れたので私の感想は後日機会があればにしておきます。