自分でも煽り的なエントリーになりそうなので躊躇するところがあるのですが、これぐらいは公表しても差し支えないでしょう。5500万円の産婦人科医師の心を最後に挫いた市議会議事録です。ソースの大元は南海日日新聞ですから、記者が議事録を丸写ししたと考えられ、信憑性は高いと考えます。ただし南海日日新聞のHPには見当たりませんから、これを読まれた方がupしてくれたのものの引用で、これは8月25日午前に行なわれた生活文教常任委員の論戦の議事録だそうです。
枡田勇委員 産婦人科がどうなるのか出産を控えた妊婦の不安は大変だ。契約ができなくても3カ月ほどいてくれるのか。通院している人たちにはちゃんと説明しているのか。 湯浅英男事務長 医師との契約交渉と同時にそのことも話をしており、契約ができない場合でも相当の期間はいてくれることを確信している。妊婦の状況によって2〜3カ月は心配しないよう医師から説明している 枡田委員 医師から休みの要求があるのは当然のことで、市長の言う休日の買い上げは労基法で認められていない。 市長 医師から休日の応援がいない場合にそれに見合う手当の要求があり、買い上げの表現は適切ではないと思う。 枡田委員 休みのない労働環境をどう考えているのか。 湯浅事務長 雇用形態は常勤ではなく常駐となっている。拘束は月、水、金の外来診察、入院回診、出産で、そのほかは自由時間。院内の部屋で待機しているが、リラックスできる時間もある。常勤の休日は当てはまらない。 市長 緊急な状況でこの1年、1人で助産師とやってくれる覚悟で来てもらった。もし交渉が決裂しても3カ月ほどはいてくれると思う。議会の意見を踏まえて来週早々には医師と交渉したい。 三鬼孝之委員 現状の報酬で更新できればよいと思うが、休日分を保証すれば5520万円に上乗せとなり、6千万円以上となってしまう。他の医師との感情も出てくる。1人の医師で年間の出産数は150人が限度とされ、この1年で152人と限度を超えている。苛酷な労働が続けば医療事故も懸念される。市長が示している4800万円はともかく、粘り強く更新できるよう交渉してもらいたい。 三鬼和昭委員 昨年はいろんな状況から政治判断で5520万円となった。市長は今回4800万円を提示しているが、1人での厳しい労働条件でどの額が妥当なのかわからない。市長の交渉を見守りたい。 内山鉄芳委員 産婦人科がなくなると妊婦にとって紀南病院や松阪に行くのは大変なことを考え、5520万円を認めた。全国的に産婦人科医師が不足し、年間150人の出産が限度とされることも考えると、5520万円が高いのか安いのかわからない。他の医師との感情問題もある。4800万円に下げても他の医師との確執は避けられないと思う。院長を含めて他の医師と話し合って納得してもらえれば4800万円でも5520万円でもよい。産婦人科がなくなると患者も減る。 市長 内科を中心に医師はとにかく医療に努力してくれている。この1年、5520万円で院長に院内の医師を説得してもらった。それでも医師から「われわれは懸命に働いている。次の報酬は納得できるように」と何回か直訴を受けた。院内の感情も踏まえて慎重に検討して4800万円を提示した。 高村泰徳委員 院長給与を最大限度に抑えた交渉をしてもらいたい。 津村衛委員 市長はフェアではない。交渉中に金額を公表したのは自己防衛だ。妊婦は安心して医師の診察が受けられないし、不安を駆り立てた。 市長 報酬額が注目されている。双方の考えをオープンにして議会や市民がどう考えるのか、決して公表したことはマイナスとは考えていない。 津村委員 公表の結果、妊婦には不安を抱かせてしまった。4800万円や5520万円の報酬は10年も続かない。4800万円で1年だけでも続けてもらい、その間に三重大にも要望して存続に取り組んでもらいたい。 浜口文生委員 市長が提示した4800万円には反対だ。議会でこんな議論をしなければいけないことは不愉快だ。1年前の交渉で議会に相談もなく5520万円を決めたことがボタンの掛け違いだ。他の医師も理解しているとの説明だった。産婦人科医師を除く現在18人の医師の平均給与はどの程度なのか。 湯浅事務長 平均で年収約1500万円。 浜口委員 提示の4800万円は3倍以上だ。他の医師がむくれるのも当たり前であり、市長のやることは後手後手だ。こんなことでは他の医師が三重大に帰ってしまう。もっと早く議会に基本的な考えを示すべきだった。6万3千人の署名は三重大や県に出したもので、市長への要望ではない。4800万円を出すこと自体が話にならない。
医師がいなければ総力を挙げて探せばよいのに、1年前にそれもしなかった。仮に3千万円で医師を公募すれば大学の助教授クラスが飛んでくるという話もある。風聞として産婦人科医師の開業時の話がいろいろ入ってくる。第一に他の医師が納得できる額が求められるのに話にならない高額だ。市長 6万3千人の署名は三重大や知事に出したものだが、病院開設者の市長の責任も当然のこと。1年前に私も医師確保に努力してきたし、病院のホームページでも募集したが、自治体病院で給与額は出せない。医師が見つからない状況で、手取額から計算して5520万円で来てくれることになった。産婦人科を残すために判断した。今回は手取額の条件も踏まえた中で4800万円の提示は市として最大限の額。 浜口委員 それは市長の詭弁(きべん)であり、1億円でも出すはずだ。だから事前に議会に市長の基本的な考えを示すべきだった。自治体病院は給与額を公表できないというが、医師個人の給与は個人情報保護法に抵触するものの、個人情報でない公募額には問題はないはずだ。1年前に医師との間で報酬額を公表しない約束をして話を進めていた。4800万円はむちゃくちゃな額だ。 枡田委員 4800万円に減額したが、その根拠を他の医師や市民にどう説明するのか。 市長 医師側の希望には手取額があり、その額から逆算すれば4800万円になる。 枡田委員 4800万円に休日分をプラスすれば実質は5千万円以上になるのか。 市長 三重大からのアルバイト医師で時給7千円。産婦人科医師はそれ以上の時給を求めているので、アルバイト医師がいないと5千万円以上になる。 中垣克朗委員長 紀南には新宮を含め産婦人科医師が9人もいる。紀北は1人だけだ。この問題をどうするのか考える必要がある。9月に出産を控えて松阪の病院へ行った人もいる。里帰り出産でも家族が心配している。尾鷲市だけの問題ではなく、国レベルで対応しなければならない問題だ。市長攻撃は誰でもできる。とにかく頑張ってもらいたい。 市長 産婦人科の医師不足は国の問題であり、厚労省などに対応を陳情した。現実には妊婦の不安があり、現在の医師は責任感が強いので契約ができなくとも数ヵ月は残ってくれると確信しているので安心してほしい。 三鬼和昭委員 仮に別の医師が来ても三重大の応援は難しい。高額報酬でも市民が必要とするのなら更新できる交渉が必要だ。
大変長い引用でしたし、テーブルタグを組むのにウンザリしましたが全文です。それにしても実に興味深い論戦です。例の象徴的な発言以外にも凄い発言が飛び出しているのが分かります。再引用しますが、
枡田委員 休みのない労働環境をどう考えているのか。 湯浅事務長 雇用形態は常勤ではなく常駐となっている。拘束は月、水、金の外来診察、入院回診、出産で、そのほかは自由時間。院内の部屋で待機しているが、リラックスできる時間もある。常勤の休日は当てはまらない。
え〜とえ〜と、生まれて初めて耳にするのですがこの医師の契約は常勤ではなく「常駐」だそうです。常駐だから院内の分娩室横の生活スペースに24時間365日拘束されるのは当然という理屈が成り立つようです。また常駐であるが故に、この医師には常勤の概念の休日は存在せず、「月、水、金の外来診察、入院回診、出産」以外の待機時間が自由時間として休日相当に当たるそうです。どこかの書き込みにこの医師は院外に出る事も許されず、買い物はすべて事務員が代行していたとありましたが、常駐ならそういう扱いになるのは当然と言う論理な様です。
もしこのブログを読まれている法曹関係者の皆様、とくに社会労務士の方がおられれば理想的でしょうが、こんな労働契約の成立自体が許されるかどうかにご意見ください。私にはどう考えても監禁拘束に近いように思えてならないのですが、是非法律的解釈に基づいた意見をお待ちしています。
その後の議論は市民病院の他の医師との軋轢について語られています。他の医師の平均年収は1500万円程度のようです。3.5倍も差があれば、正直なところそれなりに感情問題があったとしても不思議はありません。ただよく考えてみれば産婦人科医師は常駐で24時間365日拘束が契約となっています。一方で他の診療科医師は常勤で、建前上は年間100日以上の休日とそれとは別に有給休暇があります。この辺りをどれぐらい他科の医師は知っていたのかが疑問です。知った上で「同じにしろ」と不満をぶつけていたのであれば、その行動に疑問を持ちます。ひょっとしたらこの病院の医師の契約は常勤でなくすべて「常駐」で、どの医師も院内のどこかに生活スペースがあり、24時間365日拘束されているのかもしれません。それならば他科の医師の不満は十分理解できますが、そうであればまさにタコ部屋病院ですね。
そんな中にさりげない発言が飛び出します。
- 院長給与を最大限に抑えた交渉をしてもらいたい。
議論は進んでこの委員会のハイライトがきます。発言したのは浜口文夫委員ですまず冒頭で、
- 市長が提示した4800万円には反対だ。議会でこんな議論をしなければいけないことは不愉快だ。1年前の交渉で議会に相談もなく5520万円を決めたことがボタンの掛け違いだ。(後略)
- 提示の4800万円は3倍以上だ。他の医師がむくれるのも当たり前であり、市長のやることは後手後手だ。こんなことでは他の医師が三重大に帰ってしまう。もっと早く議会に基本的な考えを示すべきだった。6万3千人の署名は三重大や県に出したもので、市長への要望ではない。4800万円を出すこと自体が話にならない。
医師がいなければ総力を挙げて探せばよいのに、1年前にそれもしなかった。仮に3千万円で医師を公募すれば大学の助教授クラスが飛んでくるという話もある。風聞として産婦人科医師の開業時の話がいろいろ入ってくる。第一に他の医師が納得できる額が求められるのに話にならない高額だ。
- 6万3千人の署名は三重大や県に出したもので、市長への要望ではない。
となると、この市の市長は市内でどんな問題が発生しようとも、それに一切関心を持ってはならないし、ましてや問題解決に努力しようとする事は固く禁じられることになります。市の人口の3倍もの署名運動であっても、市長宛で無い限り一切無視するのが正しい態度であるとこの浜口文夫委員は主張している事になります。なんとも凄い主張で、どう評価したら良いか言葉に困ります。
それだけ言い切ったのですから、市は何もしなくても良かったという風に議論が進むかと思えば、そうではなく、
- 医師がいなければ総力を挙げて探せばよいのに、1年前にそれもしなかった。
まあ支離滅裂の論理で市長を攻撃する浜口文夫委員ですが、有名になったハイライト発言を受けて市長が「市民が困っているのなら市長が動くのは当然で、今回の契約が検討の末4800万円として提示する事にした」と回答すると、今度は驚天動地の発言をまた行なっています。まとめるのが難しいのですが、浜口文夫委員のここまでの主張は、
- 市長が提示した4800万円は反対だ。
- 他の医師が釣り合いから悪感情を抱くのは当然だ。
- 6万3千人の署名は市長への要望でない。
- 4800万円は論外で、3000万でも助教授が飛んでくる。
- それは市長の詭弁であり、1億円でも出せるはずだ。
まったく凄まじい論戦でしたが、最後の方でようやく救われる発言を目に出来ました。
中垣克朗委員長
- 紀南には新宮を含め産婦人科医師が9人もいる。紀北は1人だけだ。この問題をどうするのか考える必要がある。9月に出産を控えて松阪の病院へ行った人もいる。里帰り出産でも家族が心配している。尾鷲市だけの問題ではなく、国レベルで対応しなければならない問題だ。市長攻撃は誰でもできる。とにかく頑張ってもらいたい。
- 仮に別の医師が来ても三重大の応援は難しい。高額報酬でも市民が必要とするのなら更新できる交渉が必要だ。