労働組合

勤務医の間で勤務医労組を作ろうという話は意見としてよく見られます。勤務医は実質として組織化されていませんから、不満があってもそれを集団として表明したり、改善を交渉することが出来ませんから、昨今の勤務医の労働環境からして「欲しい」の声が出るのは当然でしょう。

医者の団体としては医師会がありますし、私もエントリーで医師の団体の中核として再生のエールを書いたりしてみましたが、勤務医の間の医師会不信は根強く、実態として開業医のための団体である性格は隠しようも無いところなのは確かです。これから医師会が自らの努力で勤務医と共闘できる団体に変わって欲しいのは願いですが、現状では勤務医が信用を置けないのも十分理解できます。

それでもって労働組合を作るとしたならどんな要件が必要かを調べてみました。よく知らないと言うより、縁がないので全然知らないに近い世界です。医者以外の知人で労働組合に入っている人もいますが、末端組合員では組合費を払っている以上の事に詳しい人間もなく、仕方が無いので労働組合法なるものから読み直すことにしました。法律の条文を読むのは正直辛いのですが、とりあえず理解できるところから書いてみたいと思います。

まずはどんな目的で結成されるかです。第1条に書いてありました。

この法律は、労働者が使用者との交渉において対等の立場に立つことを促進することにより労働者の地位を向上させること、労働者がその労働条件について交渉するために自ら代表者を選出することその他の団体行動を行うために自主的に労働組合を組織し、団結することを擁護すること並びに使用者と労働者との関係を規制する労働協約を締結するための団体交渉をすること及びその手続を助成することを目的とする。

句読点が少ないので読みづらいですが、勤務医に適用しても役に立ちそうな団体です。組合設立の具体的な事はひとまず後回しにして、第1条を満たすためにどうしても必要な点、すなわち労働者と使用者が誰であるかを明確にする必要がありそうです。法律では「労働者と使用者が対等の立場にたつ」となっているので、医療現場では誰が労働者で誰が使用者であるかを考えておく必要がありそうです。

労働者の定義は第3条に簡潔に書いてあります。

この法律で「労働者」とは、職業の種類を問わず、賃金、給料その他これに準ずる収入によつて生活する者をいう。

これなら勤務医はばっちりあてはまります。ところで聞いた話では、一般の労働組合では管理職になったら労組を脱退するとか言う話を聞いた事があります。これはどうやら第2条の1.に当たる事らしく、

役員、雇入解雇昇進又は異動に関して直接の権限を持つ監督的地位にある労働者、使用者の労働関係についての計画と方針とに関する機密の事項に接し、そのためにその職務上の義務と責任とが当該労働組合の組合員としての誠意と責任とに直接にてい触する監督的地位にある労働者その他使用者の利益を代表する者の参加を許すもの

これって勤務医ならどの程度の医者が抵触するのでしょうか。病院によって違うのでしょうが、年功序列がある医者の世界では、おおよそ経験10年で医長、15年〜20年ぐらいで部長になったはずです。これもまた病院で異なると思いますが、経験年数で部長になったものを年齢部長として、その上に検査部長とか、診療部長とかの役職部長があるような構造だったと思います。条文にある「役員、雇入解雇昇進又は異動に関して直接の権限を持つ監督的地位にある労働者」はどこから該当するのでしょう。

医者の感覚としては役職部長が管理職、年齢部長以下は単なる労働者であるとみなしたいところです。年齢部長は肩書きは立派でも実質権限は無いような気がするからです。ただそんな単純に割り切れないところもあります。と言うのはいかに形式上であっても、年齢部長は病院経営会議みたいなものに出席する可能性があるからです。これは年齢部長より一段下の医長であっても一人医長なら診療科の責任者として参加しなければならないこともあります。

そういう所に出席するのなら一般の労働者でなく俗に言う管理職に該当するという解釈も成立します。医長から管理職になれば労働組合に参加できる医者は医長未満の若手医師に限られることになります。う〜ん、ようわからん、誰かご意見ください。

労働者の範囲の定義でいきなり躓きましたが、次に使用者は誰になるのでしょう。労働組合法をサラサラと読んだだけでは使用者の定義はどうも明記していないようです。一般の会社では使用者とは社長のことでしょう。この辺も恥ずかしながら詳しくないのですが、取締役とか言うのも使用者になるかと思います。部長とか課長はどうなんでしょう。労働組合法の労働者に当たらないものはすべて使用者に当たると考えても良いのでしょうか。もし労働者以外が使用者になるのであれば、さきほど「わからん」けど組合員にはなれないかもしれないとした、医長や部長も使用者になるという考え方が出てきます。

いかん、いかん、どうも論理の展開が実態と余りにも乖離しすぎます。何が悲しくて医長と部長が使用者側になって労働者の若手医師と対立する構図を展開する必要があるのですが。自分で書いていてもおかしいと思います。もう一度使用者側を考え直したいと思います。

モデルを公立病院にします。公立病院の設置者、経営者は自治体です。給与も自治体が職員に払います。人事権も医局人事は非公式なものですから、公式には自治体から任命されます。院長といえども院内の委員の任命権ぐらいはあるでしょうが、公式の肩書きである部長とか医長の任命権はありません。となると自治体を使用者、医師は労働者と簡単に色分けできるでしょうか。それでも院長が労働者というのはなんとなく違和感があります。副院長や役職部長も労働者というのもどうも無理があります。

結局線引きの話が元に戻ってきます。あきません、知識が無さ過ぎです。やっぱり誰か詳しい方、教えてください。