プレイング・マネージャー

ちょっと遅めの話題ですが、ヤクルトの古田です。プレイング・マネジャー(PM)は歳がばれますが、物心がついた子供のときにもいまして、阪神では村山実が投手しながらやってましたし、現楽天監督の野村克也が捕手しながら南海の監督をやってました。

野村はそれでも南海最後の優勝を飾っているのですが、村山の投手しながらはかなり無理があり、1年目は村山最後の輝きで自身が14勝3敗、防御率0.98という挙げて9連覇中の巨人と激しく優勝を争いましたが、翌年からは村山の成績が低迷してチームも沈没しています。

エースのPMなんて人事は村山が最後でしょうが、捕手なら可能かと言われれば、古田が野村の再現できるかどうかは大いに疑問です。そもそもPMという形態が監督のあり方として方法論として優れているのであれば、野村以後ももっとPMがいたはずです。野村以後にPMをした選手など多分いなかったかと記憶しています。

それなのにPMがなぜ今時分になって復活したかです。ヤクルト球団の事情として、監督をさせたくて仕方がない古田が現役にこだわったのが直接の原因でしょう。それよりも私が思うのは現役にこだわる古田の処遇を考えるうちに「PMなら話題作りができる」と安易な広告戦略にヤクルト球団が走ったためではないかと思います。

ヤクルトの経営は苦しいそうです。球団経営の微妙な点で、苦しくなるとFAの影響もあり主力選手を切り売りして台所を一時的にもしのごうとします。また補強も台所事情からしけたものにならざるを得ません。戦力低下は免れえず、成績が低下して観客動員が減る事になります。観客動員が減るとまた主力選手の切り売りと、しけた補強となります。これを典型的にやったのがオリックスで、近鉄との合併前には主力と呼ばれる選手は綺麗に払底していました。

一方で親会社からは経営改善が常に厳命されます。もちろん予算は底が見えています。そういう環境でやるのは金のかからない話題つくりです。なんとなくヤクルトの方針が見えてくるような気がします。ヤクルトは緩やかに戦力を減少させています。現在の方針として親会社挙げてのテコいれは全く考えていません。一番理想的なのは現有戦力で優勝を争う、欲をかけば優勝して欲しいです。

現有戦力を減らさず話題も作れる便法として古田のPMを選択したのでしょうが、どうも二兎を追っているような気がしてなりません。古田の頭の良さ、野球センスの良さは、グラウンド上や選手会会長として証明されていますが、それでも古田の才能を食いつぶす方針に見えてしかたがありません。

プロ野球監督の座はセパあわせて12個ありますし、毎年のように新監督は誕生しています。歴代通算すると100人近い監督がいると思います。その中で監督として成功したものはほんの一握りです。ほとんどの新人監督は最初の監督で1〜2年程度で成績不振で更迭されています。更迭された監督が他の球団で再び雇われる可能性はきわめて低いと言えます。監督として名を成した監督は就任1年目無いし2年目に目覚しい躍進を遂げないといけないのです。いかに現役時代に名選手であっても新監督でしくじれば二度と監督の座は回ってこないと言っても良いと思います。

その辺の監督業の厳しさを考えると今回のPMはあまりに思い十字架を、球団の都合で古田に架しているような気がします。まあそれを打ち破って好成績を挙げれば古田の監督としての評価は不動のものになるでしょうが、やはり引退して監督に専業した方が古田のためには良かったような気がしてなりません。

古田の師匠とも呼べる野村はPMとして一応成功し、その後も選手とした長く活躍し、監督になってからももう一度ヤクルトで成功しています(阪神は失敗しましたが・・・)。その事が古田の念頭にあるのかもしれませんが、時代が違うような気がしてならないのです。良くも悪くも今シーズンの注目点である事だけは間違いありません。