小さな政府は幸せをもたらすか

今朝の神戸新聞を読んでいたらこんな記事が目に留まりました。記憶に頼った引用なのですが、

    公明党防衛庁の「省」への格上げと引き換えに児童手当の拡大で与党協議に合意した模様。ただし「平和」を党是とする公明党内には異論は強く、政府内にも児童手当の拡大は「小さな政府」路線と反する事からこれまた反対論が出ている」
なぜ児童手当と防衛庁の問題が取引材料にされるのかが不思議だったのですが、この記事で今まで点と点でつながりの悪かった小泉構造改革路線の真意が、やっと線でつながったような気がしました。

国民的人気の高い小泉首相が最近力を込めて断言している「小さな政府」の実現です。私のたんなる勉強不足にすぎませんでしたが、漠然と小さな政府とは、無駄な公共投資をを減らし、余剰の人員を淘汰整理するようなものを考えていましたが、まったく同床異夢の代物である事がよくわかりました。

小さな政府の定義は人により微妙に異なりますが、政府が経済政策や社会保障になるべく関与せず、「神の見えざる手」に委ね、国民は各々の自己責任で生活するとなっています。では政府は何をするかといえば、外交や防衛、治安にのみ力を注ぐというもののようです。この辺は微妙に解釈や定義が時々により異なるのでしょうが、政府の基本路線は怖ろしいほどこれに忠実です。

引用した防衛庁の「省」への格上げ問題と、児童手当の拡大問題が等価値で論議されるのも、まさしく小さな政府路線の思考延長上からなら容易に理解できます。小さな政府路線から言えば児童手当なんて社会保障費は縮小消滅路線にしなければならず、力を入れるべき防衛のために防衛庁の格上げ問題は至上の命題となります。政府は小さな政府路線に反する児童手当の拡大なんて物は一蹴したいところなんでしょうが、衆議院では圧倒的多数を占めていますが、参議院では公明党抜きでは過半数を維持できず、政治的妥協を余儀なくされている構図と読み取れます。

その路線で考えると医療費の問題もよくわかります。財政再建というオブラートでくるんでいますが、究極目標は公的保険を廃止し、すべて民間保険に肩代わりさせ、国民は自己責任で保険料を払わそうという考えです。民間保険会社は純営利企業ですから、絶対に赤字になるような保険料を設定するはずも無く、十分な利潤で潤う保険料となりますから、負担増大は当たり前ですが、増えても小さな政府の正義からするとこれは自己責任の原則から「当然」であると考えです。

となると抜本改革に極めて不熱心な年金問題も、破綻して雲霧消散すれば政府としては目的を果たした事になり、民間の個人年金に国民が雪崩を打って流れていく事は、政府としては本音では誠に喜ばしい事になります。三位一体改革も政府の負担の重い支出を目減りさせながら地方に負担させ、地方で破綻したら関与する必要は無くなり、これもまた申し分の無い展開となります。

なにせ経済政策にはできるだけ関与しないのですから、首相が何度も漏らした「株価なんか上がったり下がったりするもんだ」の発言も、小さな政府の路線からすれば「どうでも良い事」とはっきり理解できます。

一方で憲法とか、軍事、外交とかは最重要課題ですから、どれだけ国民的反感を買おうとも強引とも言える手法で既成事実を積み重ねます。話題になっている皇室問題もまたこの延長線上で考えれば、妙に力瘤が入っているのも理解しやすいです。政府にとって景気問題や、社会保障問題ちがって全力を傾ける対象であるからです。

どうにも嫌な政府を私たちは選択したようです。こんな考えの政府に300議席ですから、国民の大多数は医療費負担増大なんて事は「当たり前」と受け取ってられる方が大多数という事なんでしょうか。もしそうなら住みにくい世の中になったものだと思います。