後発医薬品

ゾロ品」とも言いますし、「ジェネリック」とも呼ばれるもので、薬品の製品特許が切れた後、出てくる医薬品を総称します。取り柄は開発費がかかっていないので、先発品に較べると7割程度の価格になるところで、医療費抑制に躍起の厚生労働省が普及に血眼になっている分野です。

ゾロ品も品質は向上しているようです。かつては服用した錠剤やカプセルがそのまま便の中に出てきたり、消毒薬に蛆がわくなんて話がいくらでも転がっていましたが、さすがにそこまでの粗悪品は減ってきているようです。ただし現代の医薬品は製法の化学方程式だけではなく、その溶け方や、小児科分野では味付けも重大な要素となっており、製法特許は公開となっても、その辺は企業の最高秘密ですから、先発品と全く同等と言い切れるかどうかはまだ微妙な製品もあります。私の知る限り、少なくとも日本で、先発品と後発品で薬効の臨床試験での比較をしたデータは見た事がありませんから、この辺は良く分かりません。

成人分野での薬品は詳しくないので小児科分野で話をしますと、味付けの重要性は私は非常に重視します。最近の傾向として「まずい」薬は年を追うごとに飲んでくれなくなっています。私も自分が処方する薬ぐらいは実際に飲んでみて、その味の確認をしていますし、「まずい」と定評のある薬はジュースやお茶、ヨーグルトなどとの相性をできるだけ実際に試しています。

味の確認は飲ませ方を指導する看護スタッフにも重要な仕事で、「まずいけど良く効くから頑張ってください」では今時通用しませんから、具体的にどんな方法があって、どういう取り合わせで飲んでもらうと味が少しはマシになるのかをキチンと説明する必要があります。

小児科の話は寄り道でしたが、医療費抑制のために後発品の普及を推進するのは方法論として認めるとして、なぜに先発品の値下げをしないのかがよく分かりません。先発品の値段が下がってくれれば、紛らわしい名前の後発品の名前を覚える必要もなく、他院で処方された薬を調べるのにアタフタする必要もありません。人気の高い薬品の後発品となると数十個以上になり、医療関係者が使う薬品集でも普及版程度では掲載されず、「なんじゃこれ」とばかりに医薬品大全みたいな広辞苑クラスの薬品集が必要になることも珍しくありません。

なぜ先発品の値段が下がらないかと言う素朴な疑問をMR(製薬メーカーの宣伝担当員)に聞いてみると、「下げないのではなく、下げられない」というニュアンスの返答がありました。先発品メーカーはその薬品を特許が切れるまで独占販売していたわけであり、大量生産していたわけでもあり、特許が切れる頃にはその開発費も設備投資も十分回収しているはずです。回収も出来ない薬品なら後発品は出現しませんからね。

開発費も設備投資もいらないのなら、薬品は製造コストの問題になりますから、どう考えても後発品と同等もしくはもっと安価に薬品を提供できると考えるのは、どこか発想がおかしいでしょうか。別に後発品ができても構いませんが、少なくとも先発品メーカーも後発品との価格競争に参戦すればより価格が下がると考えるのは不自然でしょうか。

よく分からないのですが、値段を下げる権利は後発品メーカーにのみ与えられた特権であるみたいなカラクリがあるようで、その詳細は私ごときではうかがい知りようもありません。いつも不思議でならないのですが、誰か詳しい人はいませんか。