楽天のTBS株買占め

今さら買占めの法的是非はおいておきます。また野球協約抵触の件も同様にしておきます。それよりも買収戦略で「ふと」怖ろしい方法が思い浮かんでしまったので、やる気ならやれると考え込んでしまいました。

ライブドアニッポン放送買収騒動を受けて企業は防衛策を施しているところが多いです。企業防衛策には幾つか方法があるそうですが、一番ポピュラーなのはポイズン・ビルのようです。ポイズン・ビルとは敵対買収の比率がある一定に達したら、有効企業に突然大量の株式を発行し買い取ってもらい、相手側の株保有率を下げ、味方の株保有率を上げ、また株式数を増加させる事で買占めを困難にする戦略です。

TBSもあるらしく、20%を越える敵対買収があれば発動する規定になっているとの事です。ところが楽天は15%ほどの株保有ですからまだこの基準に達していないとのことです。別に15%でもポイズン・ビルを発動できないわけではないでしょうが、ポイズン・ビルは一方で関係の無い株主にも被害が及ぶわけですから、無闇矢鱈に発動できるものではありません。だから発動する合理的理由として20%が設定されていると思います。

と言う事は楽天はTBS株を19.99%まで買い占めてもTBS側は有効な対策を打ち出せないことになります。もちろん楽天も20%弱では大株主ではありますが経営権を握る事はできません。ところがここで楽天に関係ない企業、村上ファンドライブドアが同時に20%弱まで株を買い占めたらどうなるのでしょう。

グループ企業の保有株は一体と見なされるかもしれませんが、他の独立した企業であれば個別の買収と見なされると考えます。また個別の企業の買収ですからポイズン・ビルを発動する基準にも達しません。楽天村上ファンドライブドアの3社がそれぞれ20%弱の株を持って株主総会に臨み、突如連合を組んだら一挙に5割を越す株主連合体が誕生します。

企業において株主総会の決定は非常に重く、いや重くと言うより絶対の決定で、いくら大声を上げて頑張っても抵抗できるものではありません。もちろんこの場合、村上ファンドは最後に楽天に高く株を売り飛ばして大もうけですが、ライブドアは悲願の既製メディア獲得でライバル楽天に遅れを取るわけですから、現実に起こる可能性は低いと考えます。

ではライブドアではなくて村上ファンド以外のハゲタカファンドがかめばどうでしょう。ああいう投資会社の経営目的はマネーゲームであぶく銭を稼ぎ出すのが目的ですし、企業を所有して経営して利潤を上げるというような地道な事には手を出しません。となればハゲタカファンド楽天に高値で株を売りつけて去っていきます。楽天にすればハゲタカファンドに甘い汁を山ほど吸い取られる事になるかもしれませんが、最終目標であるTBS買収に成功すれば十分にそろばん勘定は合うとも計算できます。

まあ簡単に5割と言いましたが、当然TBS側株主も居る訳で、金があっても買えないことも十分想定されますので、机上の計算どおりにはいかないかもしれませんが、買収側が密かに画策すればハゲタカファンドにしても美味しい投資ですし、防衛側企業も絶対の切り札であったはずのポイズン・ビルが宝の持ち腐れになる可能性をもっています。

こんなマネーゲームに狂奔する事ができるとは、日本経済も立ち直ってきたのかしらんと感じた今朝でした。