村上ファンド、阪神球団上場を提案

阪神電鉄株を大量取得した村上ファンドは、大株主の提案として電鉄子会社のタイガースの株式上場を提案していることがわかりました。類似の例としてイギリスのプロ・サッカーチームのマンチェスター・ユナイテッドがあり、株式公開により広く出資者を募り、球団の活性化、財政基盤の強化、ひいては阪神電鉄をはじめとする阪神グループの価値の向上を目指す趣旨だそうです。

素直に読めばなかなかうまい提案だと思います。タイガース株が手頃な値段で手に入るなら、ファンの中には手に入れてみたいと思う人間は少なからずいるでしょうし、タイガースの株主となれば余計に阪神に愛着が湧いて応援にもより一層熱が入るでしょう。では諸手を上げて賛成かと言われれば???が残ります。

やはり気になるのは村上ファンドの本質です。あそこは言うまでもなく投資会社です。何をしているかと言えば、巨額の資金を投入して株を買占め、無視できない発言権を得る事で派手なパフォーマンスを行い、そういう行動で株価の上昇を人為的に作り出し、上がったところで差益を稼ぎ出すのが目的です。極論するもしないもそれだけを目的に利益を生み出す会社です。

今回の買占めもライブドアニッポン放送を本気で買収しようとしたのとは異なり、一部で懸念されているような阪神電鉄を完全に買収して直接経営をもくろんでいない事だけは言えます。村上ファンドの本質からして、会社経営のような地道な事は割に合わないからです。もっと手っ取り早く荒稼ぎをしてサッサと撤収して次の標的に資金を注ぎ込んだほうが儲かるからです。

今回の阪神電鉄株買収に投下した資金は1000億円にものぼるそうです。ライブドアニッポン放送買収に使った資金に匹敵するそうです。ライブドアは資金調達に高利の金を借り受けています。あの買収合戦で損はしていないようですが、一番儲けたのはライブドアに金を貸した会社やライブドアに株を売りつけた村上ファンドであったとされます。もちろん一番損をしたのは防衛戦に死力を尽くしたフジサンケイグループです。

村上ファンドは大もうけしているようですが、純粋の自己資金で1000億円を投資したとは思えません。有象無象の出資者からの資金の上で今回の阪神電鉄株買収作戦を綿密に練って実行に移したはずです。村上ファンドにしても1000億円はこれまでの買収資金と較べても巨額のものであるはずで、あそこの会社の経営趣旨からしても投入資金が大きいほど早期に結果が欲しいはずです。

あそこの会社の言う「株主利益のために」はたしかに美しい言葉ですが、今回の阪神電鉄で言えばもう4割近い株を握っており、残りの株のこれまた阪神電鉄ないしそのグループが握っているはずで、株価が上がってもうかるのは村上ファンドだけといっても良いはずです。村上ファンドの暗躍により、経営への支障に困った阪神電鉄が株を高値で買い戻し、また市場に再放出しても買い戻した額より減るのは目に見えています。結局得をするのは村上ファンド一人、損をするのは阪神電鉄となります。

べつに村上ファンドの営業目的が法に触れているわけでも、インチキでもないのは言うまでもありません。同じような目的の会社は日本だけではなく、世界中にうじゃうじゃいます。それでもうちのような零細企業から見れば「胡散臭い会社」にみえて仕方がありません。マネーゲームだけで人が汗水たらして稼いだ金をかっさらっていくハゲタカのように思えてしまいます。

ライブドアニッポン放送買収も世間で議論を呼び起こしました。それでもライブドアは真面目にニッポン放送買収を考え、フジテレビやフジサンケイグループを経営傘下に収め経営拡大を目指していました。同じように見えるマネーゲームでも村上ファンドとは本質がかなり違う印象です。

まあ阪神電鉄も企業防衛のガードが甘かったと言えばそれまでですが、おそらくこれから1年内外の間にさんざん村上ファンドに鼻面を引き回された挙句、最後に無茶苦茶高い授業料を支払わさせられて幕引きとなるのでしょうう。こういう商売が今後は日本の主流になっていくかもしれないと漠然と暗い気持ちに沈む今朝でした。