ミツルと特命課で昼間もゆっくり過ごせると喜んでたら、社長たちへの経過報告をする日だったのをウッカリしてました。もうどうして、そうなっちゃうのと地団太踏んでましたが、本来の仕事ですから文句も言えません。
会議室には社長、綾瀬専務、高野常務、そして特命課の二人が出席しています。まずは業績からの天使の実在の証明です。コトリ先輩が現在の天使である仮定したうえで、過去の不自然な業績の変動を指摘し、これがコトリ先輩の微笑み伝説との類似性の説明です。
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「なるほど、たしかにそうだ。昭和三十年代半ばぐらいから平成の初めぐらいまで天使がいたと考えて良いと思う。ところでだな、天使は居た方が良かったのか、悪いのかどちらだと思うかね」
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「たしかに短期的には被害を及ぼす事はあります。一方で長期で見ると、我が社の発展は天使の存在期間に飛躍的といって良いぐらいトータルでは伸びています。一方で平成に入ってからの天使の不在期間は、現天使が現われるまで延々たる長期低落です。ここから考えて、天使の存在は我が社にとっては非常に有益と判断します」
「うむ、君の意見に基本的に同意する」
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「佐竹君、よく調べてくれた。おそらく私が社長を引き継いだ時に、受け継ぐことが出来なかった知識だと思う。ところでだな、初代と二代の天使はそれで説明がつくとして、現天使はどうなのかね」
「そこは残念ながら調査中です。天使の能力の系譜は、明治期の教団教祖からその三女に伝わり、そこから三女の娘に伝わった後、教祖の三女の息子の娘に伝わっています。そこまでは判明しているのですが、最後の伝承者の木村由紀恵さんの後が杳として不明です」
「その木村さんから小島君に伝わった可能性はどうかね」
「否定はしませんが、木村由紀恵さんが能力を発現した頃には、小島課長は既に三代目天使です。さらに小島課長の家系が大聖歓喜天院家につながるかと言えば、現時点では否定的です」
「そうだな、天使が被っているものな。でも、天使は被ることはあるのじゃないかね」
「どういう事ですか?」
「たとえばだ、親子で能力が継承されたケースなら、親が死ぬまで能力が発現しないってことになるじゃないか」
「御指摘ごもっともです」
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「よろしいですか」
「なんだね結崎君」
「まだ仮説ですが・・・」
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「つまりだね、小島君の前に三人の天使がいたということかね」
「そう考えられる可能性があります」
「では二つの変動パターンが混じる交代期はどうかね」
「それが今までの分析結果として、混在する時期はなく、切り替わると見るのが妥当と考えています」
「ふ〜む、そうなると、もう一つの天使の源流があるかもしれないと言うことだね」
「その可能性を考えています。つまりは二人の天使が同時に社内に並立しても、真の天使として会社に影響を及ぼすのは一人みたいな感じかと」
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「この短期間でよくここまで調べ上げてくれた。君たちの努力と成果は高く評価する。そのもう一つの天使の源流について引き続き調査をお願いする」