今日は花金。サキちゃんと御飯を食べた後にバーに行こうという話になりました。ちょっと背伸びしてカクテルを楽しもうってところです。店は以前にコトリ先輩に連れて行ってもらったことがあります。
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「カランカラン」
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「いらっしゃいませ」
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「シノブちゃん、あそこの人、すっごい綺麗だと思わない」
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「ホントに。でも、どこかで見覚えが・・・」
「知ってる人?」
「知ってるというか・・・フォトグラファーの加納志織じゃない」
「えっ、そう言われたら似てる気がする」
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「シノブちゃんさぁ、隣に座っているのは彼氏かな」
「そりゃ、あれだけの美人だから彼氏の一人や、二人いない方が不思議よ」
「そうよねぇ、私もあれぐらいの美人に生まれてたら、どんなに幸せな人生を送れたことか」
「サキちゃんだって可愛いよ」
飲みながらコトリ先輩とのお話を思い出していました。加納志織はコトリ先輩の恋のライバルで、同じ男性を巡って二年越しに争っているって。そうなると、あそこに見える男性はコトリ先輩の恋の相手かもしれません。コトリ先輩はその人の写真を見せてくれませんでしたが、ムクムクと好奇心が湧いてきました。なにか情報をつかんで部長に報告すればご褒美がもらえるかもしれません。というか部長には、
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「なにかわかった事があったら報告してくれ」
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「あのぉ、失礼ですが、ひょっとしてフォトグラファーの加納志織さんではありませんか」
「ええ、そうですが、あなたは?」
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「私は『クレイエール』と言う衣料品メーカーの社員です」
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「クレイエールっていえば、コトリちゃんの会社やんか」
「えっ、コトリ先輩御存じなんですか」
「小島知江さんやろ。ボクもシオも同級生やったからよく知ってるんだよ」
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「こっちにおいで、一緒に飲もう」
「イイんですか!」
「コトリちゃんの話も聞きたいし。エエやろシオ」
「カズ君さえ良ければ、もちろんOKよ」
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「そやろな」
「私も当然そうなってると思うわ」
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「シオはコトリちゃんにいつ会った?」
「ユッキーの葬式が終わって、カズ君に報告した後ぐらいと、館長さんとこの撮影の少し後に会ってるわ」
「変わってないもんな」
「そうね」
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「ユッキーさんって、どなたなのですか?」
「それはねぇ、カズ君の前の奥様。そりゃ、もう素敵な方だったのよ」
「加納さんより?」
「私なんかじゃ、比べ物にならないって」
「シオとはタイプが違うからな」
それにしてもお二人は仲睦まじくて、どう見ても恋人同士にしかみえません。加納さんはそのカズ君と呼ばれる男性の傍にいられるだけで幸せって感じがアリアリと伝わって来るだけでなく、出しゃばらずに常に立てようとするのが良くわかります。
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「お二人は恋人同士なのですか」
「違うわよ。ただの幼馴染のお友達」
「そうは見えない・・・」
「恋人同士の時もあったけど、意地悪なカズ君は元に戻してくれないの」
「意地悪はないやろ」
「はい、はい、それは、それは大切に扱って頂いてます」
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「コトリ先輩のことを、どう思われていますか?」
「ボクにとっては雲の上の女性だよ。それを言ったらシオもそうだけどな」
「もう、カズ君ったら、いっつも、そうやってはぐらかすんだから」
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「また、一緒に飲もうよ。ご飯ぐらい御馳走するよ」
「そんなぁ、お二人のお邪魔になったら申し訳ありません」
「カズ君はね、ああ見えて、見え見えのオベンチャラは言わない人なの。今日だって、一緒に飲もうって言ったでしょ。あれはね、普段そうそうはないことなの。私も少しビックリしたぐらいよ。だから、素直に御馳走してもらったらイイよ」
「シオ、そこまで言うか」
「だって、本当のことだもの」
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「格好イイ」
「うん、あれこそダンディじゃない」
「ちょっと違うと思うけど、イイ男なのは間違いないわ」
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『お世辞抜きの世界一イイ男』
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「サキちゃん、これは誰にも内緒にしといてね」
「なんの話?」
「さっき加納さんと一緒にいた男の人だけど、コトリ先輩の恋のお相手なの」
「えっ、じゃ不倫現場だったの!」
「結婚してないから不倫じゃないよ。そうじゃなくて、今ね、コトリ先輩と加納さんはあの男の人を争ってるの」
「そうなの。でもあの二人で飲んでたってことは、加納さんが勝っちゃったの」
「それも違うの。コトリ先輩もああやって、あの人と二人で飲んでて、競っている真っ最中なの」
「そうなんだ。でもあの男の人なら、コトリ先輩にもピッタリだと思うし、加納さんも譲らないだろうなぁ」
「どっちが勝つと思う」
「う〜ん、コトリ先輩が負けるような相手なんていないと思っていたけど、加納さんの美しさは別格なんてものじゃないよ。それに、あそこまでの美人って、お高く留まって性格悪いのが多いものだけど、加納さんは全然そんな感じじゃなかったもの」
「私もそう思うの。でもコトリ先輩に勝って欲しい」
「わたしも」