インフルエンザ・シーズンの定番のお話

診察室に入るなり開口一番、

    熱があるからインフルエンザの検査をしてもらうように園(保育所、幼稚園)で言われました。
この手の要求は年々増えている気がします。これも診察室段階でなく受付段階で起こっている事も多々あります。でもって、これをどう解釈するかです。私は開業医ですから、そうそう無碍にはできませんので、そういうアドバイスをもらったぐらいで対応しています。インフルエンザを疑って検査するかどうかは、診察の上であくまでも医師が決めると言う体裁を取っているわけです。そいでもって、インフルエンザの可能性があり検査を行う方向に進めば角も立たないのですが、そうでないケースが少々困ります。だって、まだ37度代前半で結構元気だったりするれば、
  1. 診察時点ではインフルエンザ以外の可能性も高い
  2. もし結果的にインフルエンザであったとしても検査のタイミングが早すぎる
その旨を説明して「検査は行わない」と告げる事になります。ここもそれで話が終われば大したお話ではないのですが、終わらない時が厄介になります。曰く、
    検査をやっていないと「園に来るな」と言われてます
こういう具合に頑張られるとチト困るぐらいです。この時も、もしインフルエンザなら夜には高熱になり、どちらにしても保育所には預けられなくなるから、検査はどっちにしても明日でOKぐらいの説明でかわしますが、それでも頑張られる方がおられます。ネットの知識普及も良い面と悪い面があると思っているのですが、
    熱があんまり高くないインフルエンザもあるって言ってました。とにかくこの熱がインフルエンザかどうかを検査してくれと言われています。
間違いとは言いきれないのですが、舞台は小児科診療所です。発熱患者なんて年がら年中テンコモリ受診されます。それこそ受診患者を根こそぎ検査する必要が出てきます。たしかにインフルエンザのハイ・シーズンには根こそぎ状態に近づくのは実情として否定しませんが、なんだかなぁ? てところです。


私が違和感を感じるのは、保育所の指示が命令になっている(もしくはそういう風に保護者が受け取っている)点です。もう少し、あからさまに言うと医師の判断、裁量を越えているんじゃないかと感じるわけです。その延長線上で医師法違反まで言いませんが、保険診療の枠を超えている気がしてならないのです。分類として保険診療と言うより、検診に近い感じです。検診なら「どこそこの検査をしてもらえ」ないしは「して欲しい」はまだしも違和感が少なくなります。ただし検診なら自費診療になります。つまりは費用が数倍に跳ね上がります。乳児医療で自己負担無しの患者にしっかりと料金が発生します。でもってその料金は、指示を行った保育所に請求できるのかしらんってところです。

この話のさらに取扱いの難しいところは、そんな元気そうな微熱患者から「たまに」インフルエンザ陽性の結果が出る事です(とくにワクチン接種済の患者に多い)。率は低いですが確実に存在します。ですから強烈にシャットアウトするような強面対応がとりにくいと言うのがあります。「不要、不要」と頑張った挙句にインフルエンザ陽性(他院受診てなケースもあります)ではヤブの烙印を速やかに押されてしまいます。病院と違って診療所はそれだけの評判が、それこそ死活を制しますから非常に気を使うところです。

つう事で今年もナマクラ対応で終始することになりそうです。そういうのも医療のうちですが、時間がかかってしまうのがネックです。「そうせい公」(本来の意味と違うのはお目こぼしを・・・)の命令と割り切ってしまうのが良いのかどうかを定番のように悩んでいます。