一番煎じはssd様の宇和、私の街の高齢化率高すぎ!!です。二番煎じをする者としては少し外さないといけないので、手間がかかる割りに面白くないデータ編にしてみます。我ながら誤解を招きやすい内容とは思っていますが、南宇和病院を批判すると言うより、同じような状況の地方公立病院のサンプル例を分析したつもりです。
- 愛媛県立南宇和病院HP
- 総務省
- Hospital Manegement Dashbordars(ver.0.61 2011.2.6)
- Hospital Manegement Dashbordars(ver.1.61 2012.4.1)
- 2012.8.21付愛媛新聞ONLINE「地域医療に目向けて 愛媛大生招きセミナー」
愛媛新聞の記事内容に対するレスポンスを基本にしたいのですが、
一足早く高齢化が進む愛南町は最先端の地域医療を学べる地になり得る。
愛南町の高齢化率はHospital Manegement Dashbordarsにあり、
愛南町人口 | 65歳以上 | 高齢化率 |
26636人 | 7829人 | 29.4% |
ただこのデータは2011年版も2012年版も同じなのでチト古いようです。そこで愛南町HPの人口・統計データで確認してみると人口からして平成17年(2005年)当時のものであると推定されます。国勢調査がベースのようで平成22年度(2010年度)のものが公開されており、
愛南町人口 | 65歳以上 | 高齢化率 |
24061人 | 8074人 | 33.6% |
*平成22年度国勢調査より |
平成17年から22年の間に人口は9.7%(2575人)減少し、65歳以上人口は3.1%(245人)増加している事が確認できます。典型的な少子高齢化現象が進行しているのが確認できます。ちなみに平成22年度の15歳未満人口は2690人となっています。
愛媛新聞より
記事になった時点で8人である事と、2002年には23人であった事がまず確認されます。推移を見たい所ですがまとまったデータが見つからず、断片的な情報をかき集めなければなりません。まず院長挨拶には、
平成24年4月から常勤医師が2名減少し8名となりました。
平成24年3月までは10人であった様です。後は総務省データ等からのかき集めになりますが、まずHospital Manegement Dashbordarsのデータを分析しておきます。ここのデータは公営企業年鑑のデータの孫引きなんですが、2011.2.6発表分と2012.4.1発表分があります。2011.2.6データは2010年度の公営企業年鑑、つまり2009年度データになるはずです。同様に2012.4.1データは2010年度データです。でもって、
年度 | 人数 | ソース |
2002 | 23人 | 愛媛新聞記事より |
2009 | 13人 | 公営企業年鑑より |
11人 | 病院経営分析比較表より | |
2010 | 11人 | 病院経営分析比較表より |
11人 | 公営企業年鑑より | |
2011 | 10人 | 院長挨拶より。 |
2012 | 8人 |
ここぐらいまでは確認できます。2002年度から2009年度までが五月雨式に漸減したのか、ある時期にドカンと減ったのかは興味があるところですが、残念ながらデータが発見できませんでした。それでも3年前から10人程度であったのだけは確認できます。もう少し傍証でも良いので情報が欲しいのですが、病院沿革と診療実績に病床数の推移があります。
ここから病床数と平均入院患者数の関係をグラフにして見ます。
ベタな解釈ですが現在の研修医制度施行に伴う医師引き揚げの直撃を2004年度に喰らったんじゃないかです。そのために199床を医師配置基準で維持できなくなり、160床への縮小を余儀なくされたです。この時に10人程度がドカンと減少し、この減った分が再び補充される事なく、今に至るまで漸減が続いているです。
愛媛新聞より
「自前で総合医を育てるため、地域医療の修練ができる教育体制を考えていく」と話した。
総合医は後で触れます。現在の常勤医は院長挨拶より、
特に内科医は2名だけとなり患者さんの多くを占める内科の診療業務に支障を来す状況になりました。
診療科・各部のご案内から現在の医師数を数えてみると、
診療科 | 常勤 | 非常勤 |
内科 | 2 | 0 |
小児科 | 1 | 0 |
外科 | 0 | 1 |
整形外科 | 1 | 0 |
産婦人科 | 1 | 0 |
耳鼻咽喉科 | 1 | 0 |
眼科 | 0 | 2 |
放射線科 | 1 | 0 |
脳神経外科 | 0 | 2 |
泌尿器科 | 0 | 1 |
皮膚科 | 1 | 0 |
合計 | 8 | 6 |
正直なところ相当考えないと難しそうな気がします。ここも当たり前なんですが、研修医でなくとも若い医師が集まるところは、
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必要条件:十分な数の有能な指導医と手厚い指導体制がある
十分条件:研修するだけの何らかの魅力がある
そうなると必要条件を欠いた状態で十分条件だけで勝負となります。つまり前期研修(後期もある意味同じ)を終えた若手医師がどれだけの魅力を感じるかですが、さてどうなんでしょう。言うまでもありませんが、後期研修が終っても医師はまだまだ研修状態の延長です。ある意味一番伸びる伸びる時期ですから、勤務病院の選択は後の医師人生をかなり左右します。創意工夫でどれだけ補えるかになりますが、私如きでは方策は浮かびません。
あれこれ数値を出しても良いのですが、シンプルに公立病院改革プランから引用します。このプランが策定されたのが平成21年3月30日となっています。ですから平成19年度は実績であり、平成20年度は見込みと考えられます。それでもって平成21年度以降は計画です。
年度 | 経常収支比率 | 職員給与費比率 | 病床利用率 | |||
計画 | 実際 | 計画 | 実際 | 計画 | 実際 | |
H.19(実績) | 90.9 | * | 66.9 | * | 78.8 | 78.8 |
H.20(見込み) | 89.8 | 89.9 | 73.0 | 73.1 | 70.6 | 70.0 |
H.21 | 91.6 | 93.3 | 70.4 | 71.2 | 72.4 | 75.0 |
H.22 | 92.1 | 91.3 | 71.6 | 74.6 | 74.2 | 68.1 |
H.23 | 93.6 | * | 70.3 | * | 76.1 | 65.6 |
平成21年度は頑張ったようですが、以後は元のジリ貧コースに戻っているのがわかります。なかなか経営も厳しいようです。ちなみに職員給与費比率は確認してみると、医業収益に対する職員給与費を指すようです。それと病床利用率ですが、2011年から病床数が160から120になっているのですが、2009年時点の計画では160床ですので、仮に160床で算出しています。
今日は計画通りに経営改善が進んでいない事を云々したい訳ではなく、経営に余裕が無いところはそれだけ勤務環境にも余裕が乏しくなる点を言いたいだけです。ここも「必ずしも」ではなくて、経営黒字にするためにシビアな労働環境が強いられるところがあったり、逆に赤字でも労働環境自体は比較的余裕のあるところもあったりしますから、一概には言えないぐらいにさせて頂きます。
ただ医師数がジリ貧になり、それにつれて外来患者数、入院患者数もジリ貧になるところは院内に活気が乏しくなるところは一般的に多い様に感じます。いわゆる沈滞ムードです。これが南宇和病院にもあるかどうかは、もちろん知る由もありません。
でもって最後にもう一度愛媛新聞ですが、
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「自前で総合医を育てるため、地域医療の修練ができる教育体制を考えていく」と話した。
ただなんですが「力こぶ」が入っている分だけ総合診療医認定は大がかりそうです。今年の1月時点の、しかもマスコミ情報なので信憑性もその程度ですが、総合診療医養成期間は、
- 国家試験合格後、2年間の臨床研修
- 3年程度の特別な研修
私が試算する限りでは結構な人数を養成するとも考えますから、ゴチゴチのハードルまでいかないでしょうが、それなりのハードルは設けられると思っています。その時に南宇和病院が果たしてクリアできるかです。マスコミ情報では2015年度からスタートしたいとしていますから、それまでに条件を整備しておく必要があります。どうだろうかです。
ではでは「総合医 ≒ 総合診療医」ならどうかです。総合医の定義や位置付けは未だ曖昧な部分が多いですから、総合診療医ではなく他の意味での総合医養成をセールスポイントにするです。その手もあるにはありますが、2015年度に総合診療医の国家認定が始まれば意義が乏しくなるとも見えます。そりゃ、どうせ進むなら資格が取れる方に流れます。
どこまで考えて戦略を練っておられるか、また戦略を実現させるだけの戦力整備・資金調達はどうなっているかは興味深いところです。厚労省が強く強く音頭を取っておられますから、総合医路線で若手医師を集めようの戦略は、これからライバルもドンドン増えてくるでしょう。知恵を絞っての御健闘をお祈りします。