金曜入院・月曜退院・午前中退院は罰金の中医協ソース

金曜入院・月曜退院・午前中退院の続編です。中医協資料は膨大なもので、ここからソースを探し出すのに私は時間がなかったのですが、皆様御協力により、それらしいものが出てきましたので紹介しておきます。

まずは平成23年11月25日付医療提供体制について(その1)です。そこのpdfベースでp39から「入院日及び退院日の曜日について」と言うのがあります。グラフばっかりなのですが、紹介しておきます。まずは金曜入院のグラフです。

ちょっと小さくて数字が読み取り難いかも知れませんので表にもしておきます。

入院曜日 月曜 火曜 水曜 木曜 金曜 土曜 日曜
入院数の比率 23.2% 19.5% 18.2% 16.3% 14.0% 5.2% 3.8%
平均在院日数 15.10 15.24 15.07 15.41 18.14 16.86 15.79


ウィークディでもっとも入院数が少ないのは金曜日である事が確認できます。勤務医の方々にはとくに診療所からの週末駆け込み紹介入院について批判が強いところですが、ウィークディでの入院比率を統計上ではとくに押し上げているわけでないようです。一方で平均在院日数はウィークデイだけではなく、一週間の中でもっとも長いのも統計データとして出ています。興味深いのは金曜日の次に長いのが土曜日となっているところで、日曜入院となると月曜から木曜とほぼ同じになっています。

次は月曜退院です。

これも表にしておくと、

退院曜日 月曜 火曜 水曜 木曜 金曜 土曜 日曜
退院数の比率 11.3% 14.3% 15.9% 15.7% 17.2% 17.4% 8.2%
平均在院日数 17.79 16.91 15.42 15.07 15.03 14.89 15.77


月曜退院は少ないんですねぇ。一週間のうちで日曜に継ぐ低さです。一方で土曜退院が一番多いのはちょっと驚かされました。退院曜日での平均在院日数が一番長いのは確かに月曜なのですが、次が火曜と言うのも面白いところです。一方で退院数の比率が一番高い土曜退院が一番平均在院日数が短いと言うのも面白いところです。

こういうデータがある事はわかりましたが、これからどういう結論を導くかです。

このグラフの見出しは、
    金曜入院または月曜退院症例割合ごとの平均在院日数
これってどういう統計処理になっているのか判り難いところです。どうもなんですが、平均在院日数の金曜入院と月曜退院の数を単純に足しているように考えます。足す事にどういう意味があるのかわかりにくいところです。強いて言えば、平均在院日数の長い金曜入院と月曜退院を意図的に行っている悪質医療機関みたいな集計でしょうか。

でもって導き出された結論が

    金曜入院・月曜退院の比率が30%以上のところは平均在院日数が長くなっている
こう読み取ったら良いのでしょうか。これも多分なんですが、示されている平均在院日数は1年間の平均と見ます。統計処理としては、
  1. 金曜入院・月曜退院の比率をまず集計する
  2. 金曜入院・月曜退院の比率が30%未満と30%以上で分類する
  3. それぞれの平均在院日数の1年間の平均を算出する
なにか無理がある統計と感じないでもありませんが、2つのグループの平均在院日数の違いが下の横棒グラフで視覚化されているように感じます。サラッと見ると30%以上のグループは平均在院日数が2倍以上に長くなっている印象を与えますが、このグラフをゼロ起点で書き直してみると、、
優秀なる医系技官が叡智の限りを尽くして創出した「最大の差」がこの統計値だと推察しますが、日数にして0.88日、比率にして5.5%しか差が出ています。これが「許しがいたい差である」は客観でなく主観の領域になりそうな気がします。たとえ0.88日、5.5%でも長いのには変わりありませんが、この差が罰金を課すほどの大問題であるなら、土曜入院とか火曜退院も余裕で問題になりそうな気がします。

それでも中医協委員の方々はこの統計数字に深く同意なされたわけです。「これは許しがたき不埒な悪行三昧」てなところでしょうか。



続いて午前中退院です。これは平成23年11月25日付医療提供体制について(その1)のpdfベースでp.47からある「入院日、退院日の評価について」にあります。

どうも食事回数が大問題として取り上げられているようです。ポイントとしては、

  • 入院日の食事回数については、0〜2回がほぼ等しく分布している。
  • 他方、退院日の食事回数については0〜1回(昼食前退院)が3/4を占める。

ここも解釈に大変頭を悩ますところですが、まず主張の前提として入院日の食事回数は「適正」の前提になっていると判断します。適正の理由は

    0〜2回がほぼ等しく分布している
回数が0〜2回に「ほぼ等しく分布」している事が重要なポイントのようです。つうか「ほぼ等しく分布」さえしていれば、0回であっても問題視していないとも言えそうです。そりゃ食事回数だけが問題となれば、午前中退院だけではなく午後入院や夜間入院が同列に問題になるはずです。

入院日の食事回数が適正であるのにな対し退院日の食事回数で問題なっているのは、

    0〜1回(昼食前退院)が3/4を占める
やはり回数ですか。どうもなんですが、入院日の食事回数を適正として並べるので理解するのが私如きでは非常に難解になります。無理やり解釈すると、退院日の食事回数も「0〜2回がほぼ等しく分布している」でなければ許しがたき悪行と定義されたぐらいに考えたらよいのでしょうか。

さすがに食事回数だけでは無理があると医系技官たちも考えたようで退院日であっても「0〜2回がほぼ等しく分布」するはずだの退院日のモデルスケジュールを示しています。

これによりますと午前中は、

  • 医師から


    • 理学所見
    • 病状等の説明
    • 退院後の療養上の留意点の説明
    • 次回外来や紹介先医療機関受診までの注意点の説明
    • 必要な検査、処置


  • 看護師から


    • 全身状態の把握
    • 退院後の療養上の留意点の説明
    • 必要な処置

これらはまあまあ理解します。モデルでは午後になってから、

患者の状態像に合わせ、退院後の療養上の留意点等を多職種で説明

これが必要に応じて行われるはずだから食事回数は「0〜2回がほぼ等しく分布」されるはずであると言うところでしょうか。だから「0〜1回(昼食前退院)が3/4を占める」ような状態では病院が手抜きをしているに違いないと定義されているぐらいに解釈すれば良いでしょうか。食い物の恨みは本当に怖いところです。

ま、「患者の状態像に合わせ、退院後の療養上の留意点等を多職種で説明」を午前中に手際よくやっても「それは手抜き」であり「許しがたき悪行三昧」であると中医協委員の方々も深くご納得された事だけはわかります。



さてさてこうやって認定された病院の悪行三昧について平成24年1月27日中医協資料「個別改定項目について(その1)」にまとめられた結論があります。pdfベースでp.97からに「効率化の余地のある入院についての適正な評価」です。長いので分割してご紹介しますが、

第1 基本的な考え方

一般病棟入院基本料算定病床、特定機能病院入院基本料算定病床について、 患者の心身の状況や医学的必要性以外の理由で入院していると推定される場合や、退院日のような入院時間が短い日の入院料といった効率化の余地のある入院について適正な評価とする。

ここにある

    効率化の余地のある入院について適正な評価
これが金曜入院・月曜退院・午前中退院になります。具体的には、

1. 金曜日入院、月曜日退院の割合が明らかに高い医療機関の土曜日、日曜日の入院基本料の適正化

金曜日入院、月曜日退院の者の平均在院日数は他の曜日の者と比べ長いことを勘案し、一般病棟入院基本料、特定機能病院入院基本料及び専門病院入院基本料算定医療機関のうち、金曜日入院、月曜日退院の割合の合計が○%を超える医療機関について、手術や高度の処置等を伴わない土曜日、日曜日に算定された入院基本料を○%減額する。

[対象医療機関]

以下のいずれも満たす医療機関

  1. 一般病棟入院基本料、特定機能病院入院基本料及び専門病院入院基本料算定医療機関
  2. 入院全体のうち金曜日に入院する者の割合と、退院全体のうち月曜日に退院する者の割合の合計が○%を超える医療機関
[対象とする入院基本料]

以下のいずれも満たす入院基本料

  1. 一般病棟入院基本料、特定機能病院入院基本料及び専門病院入院基本料のうち、土曜日、日曜日に算定されたもの
  2. 算定された日に手術、1000点以上の処置を伴わないもの
[経過措置]

上記の取り扱いについては、平成24年10月1日から施行する。

え〜と、

    金曜日入院、月曜日退院の割合の合計が○%を超える医療機関
ここの「○%」は30%になる可能性は高いと見ます。でもって減らされるのは対象病院からして7:1看護体制であると仮定すると、
  • 一般病棟入院基本料(1555点)
  • 特定機能病院入院基本料(1555点)
  • 専門病院入院基本料(1555点)
  • 1000点未満の処置すべて
それと読む限り、金曜入院・月曜入院30%規制を超えた病院は、どうやら全入院患者の土日の上記の診療報酬を根こそぎ罰金として減額するようです。こりゃ怖ろしいほどの罰金に思います。では午前中退院ですが、

2.午前中の退院がそのほとんどを占める医療機関についての退院日の入院基本料の適正化

一般病棟入院基本料、特定機能病院入院基本料及び専門病院入院基本料算定医療機関のうち、午前中の退院の割合が○%を超える医療機関について、30日以上入院している者で、退院日に手術や高度な処置等の伴わない場合には、退院日に算定された入院基本料を○%減額する。

[対象医療機関]

以下のすべてを満たす医療機関

  1. 一般病棟入院基本料、特定機能病院入院基本料及び専門病院入院基本料算定医療機関
  2. 退院全体のうち午前中に退院するものの割合が○%を超える医療機関
[対象とする入院基本料]

以下のすべてを満たす入院基本料

  1. 一般病棟入院基本料、特定機能病院入院基本料及び専門病院入院基本料のうち、退院日に算定されたもの
  2. 退院調整加算が算定されていないもの
  3. 算定された日に手術、1000点以上の処置を伴わないもの
[経過措置]

上記の取り扱いについては、平成24年10月1日から施行する。

午前中退院の罰金は、

  • 一般病棟入院基本料(1555点)
  • 特定機能病院入院基本料(1555点)
  • 専門病院入院基本料(1555点)
  • 退院調整加算(ちょっと複雑なのでセルフで調べて下さい)
  • 1000点未満の処置すべて
金曜入院・月曜退院より罰則対象はやや緩やかなようで、
  1. 対象患者は30日以上入院している者
  2. 罰則対象日は退院日に算定された入院基本料
う〜ん。午前中退院の罰金の影響はまだ小さそうですが、金曜入院・月曜退院の方はまさに「許しがたき不埒な悪行三昧」扱いになっているようです。しっかし、こりゃなんでもありの世界のように私は感じてしまいした。この調子なら
  • 厚労省の誘導政策に乗らずに政策効果が出なかったら、全医療機関の連帯責任として罰金(減算)
  • 保険医療機関でありながら厚労省の政策を批判するものは罰金(減算)
これぐらいは余裕で出てきそうな気がします。