あのクソッタレに報いあらん事を

日常診療のお話です。現状のワクチン接種はバラ打ち希望が多く、インフルエンザ接種とも重なってスケジュール調整に大変な状態になっています。すくなくともうちの診療所はそうなっています。ここに「とある接種希望者」がいました。希望者と言っても小児科なので接種されるのは子供で希望するのは親であるのは適当に脳内置換してください。

その「とある希望者」はロタ接種も望みました。うちは前に書いた通りで、バラ打ち接種をやりながらロタを接種するのはスケジュール的に無理があるので現在採用しておりません。そこでうち以外の某他院でロタ接種を受けています。ここまではまあ良いのですが、問題はここからで某他院は同時接種をやらない方針だそうです。そのうえで接種スケジュールは「親が考えろ」で突き放されたそうです。

現在の予防接種のスケジュールは複雑です。とくにバラ打ちともなると難解至極のものになります。神戸はBCGが集団接種のためにさらに難解になります。これだけ複雑になった接種スケジュールを理解せよと言うのも無理があります。医学生だって実地の問題として与えたら、まともに答えが出せるとは思いにくいところがあります。

だいたいですが、ロタ接種をバラ打ちでやる事自体に無理があり、前に作った参考モデルを再掲してきますが、

週齢 ワクチン
6週 ロタ 1回目
7週
8週
9週
10週 ロタ 2回目
11週
12週
13週
14週 DPT 1回目
15週 Hib 1回目
16週 PCV 7 1回目
17週
18週 DPT 2回目
19週 Hib 2回目
20週 PCV 7 2回目
21週 BCG
22週
23週
24週
25週 DPT 3回目
26週 Hib 3回目
27週 PCV 7 3回目


頑張れば27週で終了すると読んで欲しくないところで、これだけギチギチのスケジュールで進んで行っても27週かかると読み取って欲しいところです。途中でトラブルがあればさらに伸びますし、それより何より、DPT・Hib・PCV7で最も予防したい疾患(時期)に効果を期待するための条件である「生後6ヶ月」以内をオーバーしています。「生後6ヶ月」も出来るだけ早く接種終了する方がより望ましいのも付け加えておきます。

ロタ接種を行うなら同時接種を行わないと無理です。あくまでもバラ打ちでロタ接種を望まれたらドライに断るのも一つですが、あえてやるなら、表にしたような次善のスケジュールでせめて頑張るか、他の予防接種が必然として遅れる事のデメリットを十分に説明すべきかと考えています。

この某他院はそのすべてを放棄し、そもそも同時接種はしない、接種スケジュールのアドバイスもしないなのです。そういう事情で困った「とある接種希望者」はうちに泣きついて来たと言う展開です。そりゃ困るだろうと思いますが、うちだって接種スケジュールが難解・複雑・無理になるのでわざわざロタを採用していないのに、某他院が適当に接種した後のスケジュール調整を押し付けられても迷惑千万でしかありません。

適当にロタ接種を一発やらかされた後の尻拭いを何故にやらにゃいかんのだと言う本音です。正直不満タラタラで、「うちゃ知らん」と内輪では毒づきしまくりでしたが、見捨てるわけにもいかず黙々と尻拭いをやる羽目になっています。まさしく「クソッタレ」状態です。もっと嫌なのはこれからも考えなしに適当にロタ接種をやらかして「後は知らん」を続けるのは間違いないので「クソッタレ」の上に傍迷惑極まりない存在が続きます。



「クソッタレ」ついでですから、毒づいておきますが、複数回を続けて接種するワクチン(DPTとか、Hibとか、PCV7とかです)があります。みみっちいと言えばみみっちい話なんですが、公費の設定は初回が高く、2回目、3回目が安くなります。値段の差は初診料と再診料の差ですが、結構大きなものになります。

これを初回だけ接種して、2回目以降は「忙しいから出来ない」と他所に投げられるところがあります。これも本当にやむを得ない事情の時もあるかもしれませんが、妙に目に付くところがあります。「またあそこか」の世界です。建前上は2回目以降でも接種医療機関を変更すれば、改めて初診料込みの料金を取れるのですが、取れる部分は自費となり、現実としてなかなか徴収が難しい部分があります。

料金で言えば一番美味しい初回接種だけ積極的に取って、2回目以降の安価な方を放り投げる姿勢に嫌な気分を味わっています。一度接種を始めたならば、希望者の意思で医療機関を変えた場合はともかくとして、そうでなければ最後まで責任を持つのが原則だろうと思っています。

インフルエンザでも初回だけやって2回目は「ワクチンがなくなりました」と断ってしまう医療機関は実際に存在します。小児科は2回接種が原則ですから、毎年、2回目の残りリストを常に確認し、さらに接種意思が残っているかどうかを電話で確認しながら、残りのバイアルをどれほど確保しておくかを計算するのに大きな手間をかけている者からすると信じられない「雑さ」と思っています。

ま、インフルエンザはさすがに問題になったらしく、医療機関を変えれば2回目でも初回料金を堂々と徴収できるのですが、これが患者の都合ではなく、医療機関の都合で起こる事に怒りが禁じえないところです。



もっとも医療でこの程度の事は「ささやかな事」であり、もっと物凄い「クソッタレ」はゴロゴロしています。ですから私が憤慨した程度の事柄は極めて平穏な部類に属します。それは判っていても「なに考えとるんじゃ」ぐらいの憤懣は生じます。ちょっとしたガス抜きを今日はさせて頂きました。