沖縄のホメパチ装置からの芋づる

しばらく避けたかったホメパチですが、9/2付朝日新聞がまた興味深いので勢いで触れます。


とりあえず事件の概略

事件は公立中学の養護教諭が5年以上も、体調の悪い生徒に砂糖粒しか治療として与えなかった事件です。生徒の反応が面白いのですが、

一部の生徒は、このレメディーについて「思いこみ薬」と呼んでいた。

こういう冷静な者もおれば、

新型インフルエンザが流行した昨年、「インフルエンザを予防できるレメディー」を渡され、予防接種を受けなかった生徒もいる。

こういう被害を受けて者もいます。「経験談」として予防接種を受けなかった生徒が、インフルエンザを予防できたかどうかも知りたいところですが、そこまでは取材できていないようです。それでもってこの養護教諭は、

普及団体「日本ホメオパシー医学協会」が認定する療法家

それも沖縄の養護教諭では影響力の強い立場にもあるようで、

沖縄の全小中学校の養護教諭約440人が加入する任意団体「県養護教諭研究会」の元会長で、07年12月には、日本ホメオパシー医学協会由井寅子会長を沖縄に招き、養護教諭向けの講演会も開いている。

助産師会へのホメパチの浸透は有名ですが、養護教諭の世界にも浸透が行なわれていたことが確認できます。必然的にこの養護教諭はホメパチ業界の中でも有力者であろうと推測されます。たぶんこの方ではないかと推測されますが、この方でなくとも沖縄の養護教諭の中にホメパチ信者が公然と活動している事だけは確認できます。

もう一つ面白いのはこの件で取材を受けた養護教諭の対応です。

直接の取材は受けない。

新聞社の取材を受けないのは広い意味で理解します。学校の全体の問題にも波及するかもしれない問題ですから、個人としての直接の回答は避けるのはリスクマネージメントとして十分考えられる事です。しかしこのコメントには後半があります。

質問は文書でホメオパシー医学協会に

なかなか趣深いコメントで、学校の養護教諭としての問題ではなく、あくまでも医学としてのホメパチ問題として捉えているのが良くわかります。ちなみに学校側のコメントは、

同校の校長は「許可した覚えはない。砂糖玉であっても『病気が治る』と言って渡しているのであれば問題」と話し、即、中止するよう指導した。校医も「効果があるかわからないものを、生徒に勧めるのはよくない」と話した。

校長先生頑張ってください、「効果があるかわからないもの」で論難しようとすればホメパチ協会から100個以上の「効果がある」のホメパチ医学雑誌の論文が送られて来るかもしれません。御苦労様です。


ビルネルソン

寄り道が過ぎましたが、個人的に注目したのは、

  • 保健室に特別の装置を持ち込み、砂糖玉を加工していたという
  • 砂糖玉をレメディーに変換するという装置

へぇ〜、ホメパチ砂糖粒生産装置と言うのが存在するんだ! 実はホメパチ問題が始まってから疑問に思っていたことがあって、たとえば「30C」なる規格のホメパチ砂糖粒を製作するためには、原液を100倍に希釈し、これを100回振る作業を計30回繰り返すとなっています。正直なところ凄い手間と感じていました。

これまで得た情報ではホメパチは「振る」と言う作業に異常な意義付けを行なっていますから、きっと振り方に特殊な技術とか、秘伝があると考えていました。だって機械で振ってよいのなら、100倍希釈につき100回なんて慎ましい回数ではなく、1000回でも1万回でもすぐに出来るからです。まあ100倍希釈に対し100回振ると言う回数に神秘的な意味づけがあるのなら別ですけどね。

ところが装置でホメパチ砂糖粒が出来上がるそうです。どんな装置だろうと興味が掻き立てられます。ここまでの情報では、問題の養護教諭はかなり練達のホメパチ術者のようですから、装置で作るホメパチ砂糖粒もホメパチ的には「正統」なもののはずです。

そう思ってググってみたらとりあえず目に付いた情報は、

この使ってた機械は北米では詐欺罪で指名手配されているビルネルソンというやつが作ったインチキ機械
これを使ってるやつがいたら北米では警察またはFDAだかに通報もんの機械
北米では被害者の会とかも有るらしい
ビルネルソンは最近では詐欺メールとかもやってるらしい

どうもこの情報はマルチポストされているみたいなのですが、手がかりとしてビル・ネルソンなる人物が関係している可能性は調査してみる価値はありそうです。調べてみるとさすがはNATROM先生で1年以上も前にホメオパシージャパンが販売する波動機器 クォンタム・ゼイロイドで触れられています。

弱冠18歳でアポロ13号帰還の立役者となった天才科学者ビルネルソン(ウィリアムネルソン)博士(由井学長恩師)開発のクォンタムゼイロイドは、他に類をみない世界最先端のエネルギー測定修正システムです。療法関連において世界最大のソフトウェア。 Quantum Xrroid(クォンタム・ゼイロイド/略称 QX)とは、ホメオパシー理論をベースに開発された、生体エネルギーの測定&修正システムです。9000以上の様々な問題(心、感情、精神、遺伝子、臓器、病原体、等々)に対応するレメディーへ被験者がどのような生理的反応を示すかを電気的反応パターンによって測定します。抵抗だけを測定する従来の波動機器とは全くことなり、QXは3次元的な電気的反応をみるこれまでにないシステムとなっています。また、3進法プログラムにより、潜在意識をインターフェイスする世界に類をみない波動機器です。

このクォンタム・ゼイロイドはどうやら沖縄のホメパチ砂糖粒製造装置ではなさそうですが、ビルネルソンはウィリアムネルソンと同一人物である事が確認できます。この人物が本当にアポロ13号の軌道計算を行なったかどうかの真偽の確認が難しいのですが、個人的には相当眉唾と考えています。根拠はアポロ13号の本ぐらいしかないのですが、とりあえず登場していません。

アポロ13号の帰還軌道計算は本を読むとわかるのですが、一度計算されて終わったのではなく、何パターンも計算され、なおかつ途中で何度も微調整を行なっています。軌道計算自体は計算量としては厄介かもしれませんが、当時でもコンピューターに必要なデータを入れれば計算可能で、市井の18歳の天才少年に計算依頼を行なわなければならないような難題ではありません。

難しかったのは奇跡のルートを見つけ出す軌道計算ではなく、計算された軌道にいかにして誘導するかであり、軌道計算自体がアポロ13号の生還のポイントであったわけではありません。私の判断としては自称の可能性が高いと考えています。


このウィリアム・ネルソンですがNATROM様がリンクされた忘却からの帰還様のニセ医療装置EPFX (1)にも紹介されています。ちょっと長いですが重要ですから引用しておきます。

1980年代後半、コロラドの失業中の数学講師William Nelsonが、体内に特定周波数の電波を照射すること[fire radio frequenceis]で、アレルギーから癌までのあらゆる病気を診断・治療できると主張する電子装置を作った。

しかし、医療装置を監督する米国食品医薬品局(FDA)は、William Nelsonに対して、その電子装置の販売および虚偽の主張を行うことを禁止する命令を出した。彼はこれを拒否して、重詐欺容疑で起訴された。彼は国外逃亡し、決して米国に帰国しなかった。

それが、奇跡医療の売人の、注意をひくことなき終わりとなるべきだった。

今日、William Nelsonは59歳となり、ハンガリーブダペストの築後100年の建物から、米国で最も大胆な健康装置詐欺のひとつを率いている。閂をかけられた門と監視カメラと警備員によって守られて、彼は、精神的に誘惑されやすく、わずかの希望に望みをかけている患者から、お金を収奪するために使われる電子装置を販売して数千万ドルを稼いでいる。

その電子装置はEPFXと呼ばれる。米国だけでWilliam Nelsonは一万台以上を販売した。彼の会社の担当者は、特に米国北西部に多く販売したと述べた。

簡単にお金が稼げる仕事だと宣伝して、医者や指圧療法師や看護婦、そして医療免許を持たない主婦から退職者までを営業要員に採用して、William Nelsonはそのビジネスを構築した。

William Nelsonは、この電子装置による、たったひとりの不当利得者である。

Seattle Timesの調査により、効果の証明されていない電子装置を販売する製造業者と、疑うことを知らない患者を餌食にする開業医のグローバルネットワークを明らかにした。

彼らは脆弱な政府の管理体制を利用して、これらの装置を、非合法あるいは潜在的に危険な形で使用して、患者の金を吸い上げ、病気を誤診し、重篤な患者を救命医療から乗り換えさせた。

これらの犠牲者は、「身体はエネルギーフィールドを持っていて、これを健康増進するように制御できる」という信念に基づく代替医療である"エネルギー医療(energy medicine)"と呼ばれる成長中の分野の被害者である。エネルギー医療装置の大きさは、テレビのリモコン程度から、数百ポンドの重量のある巨大マシンまであり、価格も1200ドルから55,000ドルにわたっている。

多くの製造業者と治療に装置を使用する者たちは、FDA規則に従って、治療の効果が証明されていないことを明らかにしている。

これが 2007年11月19日のシアトル・タイムズの記事で、ネットにマルチポストされたものもここから引用されていると考えられます。忘却からの帰還様はこの問題を追及しているのですが、ニセ医療装置EPFX (2)には、ウィリアム・ネルソンの経歴についても言及され、

William Nelsonは自身の人生について驚異的な主張をしている。ティーンエイジャーとしてアポロ13号のミッションのトラブルを救援するためにNASAと契約して働いたと言う。彼は1968年のオリンピック体操チームの補欠メンバーだったと自慢する。彼は医学および法学を含む8つの学位を持つと言う。(履歴書参照)

どれも裏が取れない。NASAには彼を雇ったという記録はない。彼はオリンピック選手ではなかった。彼の学位は非認定校や通販会社からのものである。

実際は、大学の記録によれば、William Nelsonは33歳の時、オハイオ州のYoungstown State Universityの数学の非常勤講師(part-time mathematics instructor)だった。

熱心なスタートレックのファンとして、自閉的な息子の父親として、William Nelsonは、身体を治療するための、現代数学代替療法を混合した宇宙時代の装置を作ることに取りつかれたようになった。

1984年に、彼は家族とともにコロラド州に引っ越して、"Electro-Physio-Feedback-Xrroid System"あるいはEPFXという名の自家製医療装置を販売するようになった。

William Nelsonは自社をバイオフィードバックマシンの製造業者として1989年にFDAに登録した。それはストレス軽減装置だけを売れる登録である。法的には、その装置が病気を診断あるいは治療できると主張してはならない。

しかし、彼はいずれにせよ、そう主張した。1992年に当局は、その誤った主張を禁止し、さらにEPFXの回収を命じた。しかし、彼は治療装置の販売を続けた。

彼は1996年に重罪詐欺の9つの訴因で起訴され、米国外へ逃亡した。(訴状参照)

どうもアポロ13号の話の根拠は彼の履歴書が唯一のものであり、それ以上でもそれ以下でもなさそうであるとして良さそうです。一方で日本ホメオパシーセンター本部の健康相談案内には、

弱冠18歳でアポロ13号帰還の立役者となった天才科学者ビルネルソン(ウィリアムネルソン)博士(由井学長恩師)は1951年、米国オハイオ州生まれ。
18歳のときにNASA(米国航空宇宙局)のアポロプロジェクトに参加し、アポロ13号が地球に帰還する際に、軌道修正を行うためのナビゲーションシステムの計算を正確にやってのけたという輝かしい功績を残しています。

その後、優秀な科学者として将来を期待されながらも、武器作りなどの軍事プロジェクトに参加することを拒み、心理学の分野に進みます。ヤングスタン州立大学でカウンセリングのマスターを修得したあと、米国内の5つの大学で、医学・数学・心理学・量子力学海洋学国際法を修得し、現在はハンガリーホメオパシーのクリニックを開業しています。

明記してありますね。

    天才科学者ビルネルソン(ウィリアムネルソン)博士(由井学長恩師)
ビルネルソン(ウィリアムネルソン)間違い無くアメリカで「重罪詐欺」で起訴されている筋金入りの詐欺師です。その詐欺師を恩師とされているのがホメパチ協会の総帥の由井氏です。ネルソンと由井氏の親交は今も続いているらしく、ロイヤル・アカデミー・オブ・ホメオパシーのお知らせに、

●QX-SCIO開発者ウィリアム・ネルソン氏講義のお知らせ 
                        
  ホメオパシー理論をベースに開発された、生体エネルギーの測定&修正システムであり、他に類をみない世界最先端のエネルギー測定修正システムQuantum Xrroid(クォンタム・ゼイロイド/略称 QX)の開発者、ウィリアム・ネルソン博士が3年ぶりに来日講演会を行います。

日 時:2006年9月18日(月・祝) 10:00〜16:00

会 場:東京校(ライブ)・大阪校&福岡校(同時中継)
参加費 :在校生 5,000円/日 
    
講 師 :Dr.William Nelson     

テーマ:QX-SCIOについて

重罪詐欺師の講演らしく参加費なんと「5000円」で講演会を開催しています。素晴らしい事です。


沖縄のホメパチ装置

残念ながら沖縄の装置がビルネルソンの装置かどうかにはたどり着きませんでしたが、装置は販売場所は発見できました。なんの事はないロイヤル・アカデミー・オブ・ホメオパシー≪学生・卒業生の特典:各コース共通≫にありました。

RAHオリジナル開発のホメオパス向け携帯型レメディー作成マシンを学生特別価格にて購入することができます。

だははは、ホメパチ砂糖粒作成装置はホメパチ協会が販売していたのです。道理で沖縄の養護教諭は質問はホメパチ協会に振ったわけです。つう事はホメパチの砂糖粒は

    機械で作成できる
こういう事になります。たぶん誰が使っても良いわけではなくて、たぶん資格を得たホメパチ術者が特殊な呪文とか、秘儀のダンスでも周囲で踊る必要があるのでしょうが、人の手ではなく機械で作れる事が確認できたのは個人的には収穫でした。同時に卒業生の特典として、

クォンタムゼイロイド・スキオ“QX-SCIO”(ホメオパシー理論に基づく世界最先端のエネルギー測定修正機器)を学生特別価格にて購入することができます(RAH2年目以降に購入資格を得ることができます)。

重罪詐欺師のビルネルソンが作った装置も販売しているようです。何が凄いって単に売っているのではなく「購入資格」が与えられると言うのが感心させられるところです。


芋づる式のまとめ
  1. ホメパチ砂糖粒は「機械」で生産可能であり、機械はホメパチ・アカデミーで販売している


  2. ホメパチ・アカデミーでは他にビルネルソン作成の装置も学生相手に販売している


  3. ビルネルソンはFDAが完全否定し、アメリカ司法当局が重罪詐欺で起訴した装置を手広く販売し、現在はハンガリーに逃亡潜伏中である


  4. そのビルネルソンをホメパチ協会の総帥である由井氏は「恩師」と明言し、潜伏中のハンガリーから日本に招待し有料講演会を行なっている

由井氏がビルネルソンを恩師と仰いで何を学んだのかは不明です。何を学んだかは不明ですが、ビルネルソンを擁護する反論は簡単に推測されます。
  1. ビルネルソンは起訴されただけで重罪詐欺が判決で確定したわけではない
  2. ビルネルソンの装置で「効果のあった」経験談は多数あり、FDAの認定が間違っている
  3. 先進科学はガレリオの様に時に無理解から迫害され、ビルネルソンもまたそうである
もう一つのホメパチ砂糖粒作製器の方は近いうちにまた反論が出る可能性が高いと思われますから、待っている事にしましょう。あんまり面白いものが出てくるとは期待しにくいですけどね。


追加情報

ホメパチ砂糖粒作成器の現物がどんなものかのイメージが欲しかったのですが、うろうろドクター様から頂けました。ただしこれはホメパチ協会オリジナルのものではなく、スーリス社と言うところから出ているものです。スーリス社の製品もグレードによって三段階あるようで、そのグレードによって455〜1400ポンド(6万〜18万2000円)に分かれています。御注意ですが、日本円換算は現在の1ポンド = 130円で計算していますから、実勢としてはもう少し高目かもしれません。

まず最高級品(1400ポンド)のスーリス社のMK3プロフェッショナルですが、

なかなかの外観ですが、なんとなくホメパチ協会オリジナルは廉価品(455ポンド)のMK1A ミニに近いんじゃないかと考えています。
ただなんですがサイズを確認すると、
    MK3・・・・35cm × 30cm × 9cm
    MK1A・・・23cm × 16.5cm × 5cm
こうなっていますから、沖縄の養護教諭の使っていたとされるホメパチ砂糖粒作成器はMK3に大きさとしては近くなります。沖縄の養護教諭はかなりベテランのホメパチ術者のようですから、スーリス社の高級品を使っている可能性も考えられます。ついでに探していたらスーリス社製品のレメディー・メーカーの機能と働きがあったので紹介しておきます。

レメディー・メーカー機器は、(技術者で、ラジオニクス医師)マルコム・レイ氏が1970年代に最初の商業用モデルを作製して以来、35年間利用されつづけています。これらの機器は世界中の多くのホメオパスの方々に使用されています。

レメディー作りの基本的原理は、全ての物質がそれぞれ独自のエネルギーのパターンを持つという知識を基にしています。これをホメオパシーのレメディー作りに応用し、粉砕と震とうにより薬剤を作ります。(アボガドロの法則では、6C希釈を超えたら、その物質の分子はもはや存在しません。)

エネルギーのパターンは、独自の数字の配列、または「コード」として表されます。レメディーメーカー使用の際、このコードが機器に情報として読み込まれ、その情報に完全に一致したエネルギーのパターンが(例えば、乳糖や水の)媒体物に組み込まれます。

スーリス社のレメディー・メーカーで使用されている「コード」はベース10です。コードのリストは、新しいレメディーのコードが出来次第更新されます。一般的なフラワーエッセンス、身体構造、色、元素、貴石、ビタミン、鉱物、一般の西洋医学薬剤などの「コード」もあります。

埋め込みプロセスにデジタル技術を使用したことにより、アナログ技術の問題点であった、背景に「ホワイトノイズ」が現れることがなくなり、スーリス機器で作るレメディーには完全に純粋なエネルギーパターンのみが記録されています。

スーリス社のレメディー・メーカーには、現存するレメディーや、物質をコピーする機能があります。これらのレメディー・メーカーは物質のエネルギーパターンを読み取り、それをコピーします。また、ユーザーの方々は必要とするポーテンシーを選ぶことができます。複合レメディーは、必要とする個々のレメディーの詳細を記憶装置に蓄積し、それを最終的に錠剤にする際に同等の割合で混ぜ合わせて作ります。

なんか凄そうなメカニズムですが、笑いをこらえるのがチト大変でした。