日本脳炎ワクチン情報 2010年9月

感染症分科会予防接種部会日本脳炎に関する小委員会は2/9の第3回会議まで追っかけいます。その時点では1期の勧奨接種の再開まで決めましたが、

  1. 2期接種
  2. 旧ワクチンを接種したものに新ワクチンの接種を認めるか
  3. 2005年5月から勧奨接種を控えた分の接種をどうするか
これらについては「秋に考える」で終っています。本当に秋までお休みかと思っていたら、6/16に第4回会議を開いています。そこの資料に「定期の第1期における3回接種が完了していない者に対する対応」としてパブコメを求めるとなっています。おそらくそれを受けた結果と考えられるFaxが8/31付で舞い込みました。平成22年8月30日付神保健予647-2号となっているのですが、少々難解な内容です。

日本脳炎ワクチン予防接種について(ご依頼)

 時下ますますご清祥のこととお喜び申し上げます。
 平素は.本市の保健行政にご理解、ご協力をいただき厚くお礼申し上げます。
 さて、見出しの件について、国が予防接種実施規則の一部を改正しました。取り急ぎ改正の内容を下記に要約しましたのでお知らせするとともに、今後の日本脳炎ワクチンの接種についてご配慮いただきますようよろしくお願いいたします。

  1. 定期接種の2期への乾燥培養細胞日本脳炎ワクチンの使用について使用を認める。

  2. 過去に接種を受けなかった者に対する接趣機会の確保について


      平成17年5月30円からの勧奨差し控えによって接種できなかった第1期の不足分(1〜3回)を、本来の第1期の期間(生後6月〜90月未満)及び第2期の期間(9歳から13歳未満)に接種できるよう改正された.

      • 1回接種後の者:残り2回接種(残り2回の接種間隔は6日以上)
      • 2回接種後の者:残りl同接種
      • 0回接種の者:残り3回接種(第1期の年齢の者は第1期の期間に現行通り接種、第2期の年齢の者は第2期の期間に接種)


      (注)第1期の期間(生後6月〜90月未満)と第2期の期間(9歳から13歳未満)の間の年齢の者(90月〜9歳未満)については定期接種の対象となりません。従って、年齢が第2期の開始年齢(9歳)に達するまでに接種した場合は、任意接種となります。


  3. 予防接種健康被害に対する救済措置について


      上記2による接種は定期接種とし、予防接種法この救済措置の対象とする。


  4. 施行日(上記1,2の接種が可能となる日)


      平成22年8月27日


  5. その他


      運用上の詳細については国に確認すると共に、別途神戸市予防接種運営協議会を開催し、その結果を踏まえてご連絡します。

うちの職員が「どう解読するのですか?」と持ってきた気持ちがよくわかります。私も一度読んだだけでは理解不能でした。何回か読み直して概略は理解出来たのですが、三宅小児科のブログ様の日本脳炎ワクチンの?期の再開(総論)が手際よくまとまっているので御紹介します。

  1. 2期は9歳から12歳(13歳未満)を対象とする。
  2. 新ワクチン(旧ワクチンは既にないので)を使用する。
  3. 自治体によって異なるのだが、今後9歳になる児童に問診表が送られてくる所もある。基本的には、9歳から12歳の方は、最寄りの保健所に電話をして、問診表を送付してもらう。
  4. 2期の接種は1回であり、1期の3回を接種していることが前提である。
  5. これまでのトラブルによって、1期を接種できていない方については、この2期の期間に1期の3回を接種することができる。
  6. 日本脳炎ワクチンは、最低でも3回接種することが基本である。
  7. 現在接種できるのは生後6か月から7歳半までと、9歳から12歳の間である。但し、基本的には3歳から7歳半、9歳から12歳であり。この間に3回から4回接種することになる。7歳半から8歳の方は、予防接種法上で、日本脳炎ワクチンの対象外である。

御紹介したのは神戸のFaxにない情報が掲載されているのもあるのですが、まず接種年齢が定められています。

  • 6ヶ月〜90ヶ月未満(7歳6ヶ月未満)
  • 9歳〜13歳未満
小児科医ならすぐわかるのですが、従来の1期、2期の接種期間です。従って7歳6ヶ月〜9歳未満の子どもは公費では接種できない事になります。それと接種の方法と言うか考え方なんですが、空白期間の子どもの場合、残っている1期の接種が優先になると言うか、3回接種しないと2期は接種できないようです。それとこれはどうやらですが、新旧ワクチンを混在して接種する事は認められたようです。明記していてくれれば助かったのですが、
    定期接種の2期への乾燥培養細胞日本脳炎ワクチンの使用について使用を認める。
乾燥培養細胞日本脳炎ワクチンとは新ワクチンの事ですから、1期を旧ワクチンで接種した者にも新ワクチンでの接種を認めると解釈できますし、1期の残りの接種を行うにしても旧ワクチンはこの世に存在しませんから、当然新ワクチンと言う事になります。


もうちょっと参考になる資料はないかと探ってみると、予防接種実施規則の一部を改正する省令 概要と言うのが出てきました。読んでみると「おそらく」そのまま適用されたと考えられそうなので引用します。まず対象者です。

 今般の措置は、平成17年5月30日から平成22年3月31日までの間、接種勧奨を差し控えていたことにより接種を受けなかった者に対して接種機会を確保するための特例的な措置であることから、対象者は限定されており、かつ、増加する見込みはない。したがって、附則において措置することが適当である。

「平成17年5月30日から平成22年3月31日までの間」の具体的な定義がこれまた難解ですが、例のQ&A方式で今後に明示されるのかもしれません。実務上で問題になるのは「○年○月生まれから、△年△月生まれ」です。細かい事を問題にするようですが、公費適用の有無の判断で料金が180度かわりますから現場としてはより具体的な表示が欲しいところです。

  • 当分の間、平成22年3月31日までに日本脳炎の第1期の予防接種のうち、3回の接種を受けていない者(接種を全く受けていない者を除く。)であり、今般の特例による接種を受けようとする時点において予防接種法施行令で定める対象年齢(6か月から7歳6か月までの者及び9歳以上13歳未満の者)に該当するものが、6日以上の間隔をおいて残りの接種を受けたときは、同条に規定する日本脳炎の第1期の予防接種を受けたものとみなす特例を規定する。
  • 当分の間、平成22年3月31日までに日本脳炎の第1期の予防接種を全く受けていない者であり、今般の特例による接種を受けようとする時点において予防接種法施行令で定める対象年齢(9歳以上13歳未満の者)に該当するものが、第15条の例によって接種を受けたときは、同条に規定する日本脳炎の第1期の予防接種を受けたものとみなす特例を規定する。

ここも難解ですが、パッと見て気になるのは

    接種を全く受けていない者を除く
一方で0回接種の場合がFaxで示されていましたから、どういう場合が「接種を全く受けていない者」になるのかの具体的な定義が欲しいところです。それと第2期の期間に特例で第1期の接種が可能なのはわかりましたが、特例で第1期終了者となった者の第2期接種はどうなるのでしょう。医師の裁量であればそれで良いのですが、特例第1期からの間隔云々が後から出てくるのなら早目にお願いしたいところです。



それにしてもですが、これもスタッフの正直な感想です。

    なんでこの時期やねん!
これは予防接種をある程度手広くやっている小児科診療所の本音です。これで2学期に入って御案内が一斉に学校で出されるとゾッとします。9月はまだ良いのですが、10月に入れば年中行事のインフルエンザの予防接種が始まります。インフルエンザの予防接種が始まれば日本脳炎の予防接種をやる余力はなくなります。季節的にはインフルエンザがどうしても優先になりますからね。

9月は運動会がありますから、それが済んでからの心理が働くとかなり辛いと言うところです。それもこれもの抑制効果を狙っての9月かもしれないんですが、ただでもHibとPCV7が増えてアップアップですから、今年の秋も大変そうです。どうなることやら。

そうだそうだ、空白期間で2期が飛んでしまった者への救済措置はどうもないようなんですが、これについての情報をお持ちの方は宜しくお願いします。