既にカオス状態の口蹄疫関連情報なので、素人は手を出さないのが賢明かもしれませんが、あえて触れてみます。ただし質的には重箱の隅ですから、その程度と御了承下さい。取り上げる題材は口蹄疫が公式確認された4/20の赤松農林水産大臣記者会見概要です。この記者会見が行なわれたのが、
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9時45分〜10時25分
赤松大臣
まず、本当は、今日も、ちょっと記者会見遅らせていただきましたのは、ご存知のとおりに、口蹄疫が発生をいたしまして、正式に申し上げますと、4月19日月曜日、宮崎県が当該農場の牛の口蹄疫感染の可能性を否定できなかったことから、私ども、当省の担当課に連絡がございました。動物衛生研究所に検体を持ち込み、これは、昨日、19日の24時頃、夜中の12時頃でございますけれども、PCR検査を実施をしたと。今日、PCR検査、4、5時間かかるものですから、私のところは、夜中にFAXが入ってきましたが、PCR検査の結果、陽性を確認をしたということでございます。
その他の、いろいろな病気については、県の家畜保健衛生所が、例えば、ブルータングだとか、あるいは、(牛)パラインフルエンザだとか、ウイルス性の下痢だとか何とか、イバラキ病だとか、それは全てやったのですが、それは、いずれも陰性だったということで、こうした、口腔内のびらん等については、あと、残るのは、口蹄疫ではないかということで、検体の持ち込みがされたということでございます。
その結果、PCRの結果、3頭中3頭で陽性を確認したということでございます。それで、直ちに、農林水産省といたしまして、私、今朝、指示をいたしまして、口蹄疫防疫対策本部を設置をするようにと、そして、ただちに第1回会議をやるということで、閣議後に、その第1回会議をやらせていただいたところでございます。
皆さん方にお願いを申し上げたいのは、大変、感染力の強い病気でございますので、韓国の例を見るまでもなくですね、非常に、誰か立ち寄ると、足の、靴の裏から、そのあれが蔓延するとか、いろいろあるものですから、極力、情報等については、本省から、あるいは、当該県の宮崎県から流しますけれども、直接、本当は、そこへカメラを持ち込んでとかいうことも、お気持ちは分かりますが、是非、それは、厳に慎んでいただきたい。蔓延を引き起こす恐れもあるものですから、そういうご協力を、報道関係の皆さんにはお願いをしたいと思っております。
それから、あと、もう一つは、風評被害みたいにですね、「ああ、牛が危ないぞ」、「豚が危ないぞ」みたいな、牛や豚は食えないみたいなことになると、また大変なことになりますので、今、10キロ(メートル)以内、20キロ(メートル)以内ということで、制限を付けまして、10キロ(メートル)以内は移動制限、それから、あと20キロ(メートル)以内は搬出制限区域ということの、そういう区切りをいたしまして、少なくとも、10キロ(メートル)以内については、殺処分、当然、この十何頭、16頭だったかな、いるわけですけれども、全て殺処分にしますが、殺処分完了後、21日間は、そういう、移動制限、通行制限ということで、厳しく、当該農場を中心とした半径10キロ(メートル)以内の区域を、そういう扱い、制限をかけますので、その点については、これ以上、拡がることのないように、万全の措置を執りたいと、このように思っております。
あと、感染源とか、感染経路の究明等については、本日中に、そういう専門家による委員会を開催をいたしまして、その中で、これらの問題についても、しっかりと対応していきたいというふうに思っております。これについては、とりあえず、そういう報告です。あとでまた、もし、ご質問があれば、詳しくお伝えします。
まずこの大臣発言で参考になるのは口蹄疫検査に至るまでの検査手順です。4/19に持ち込まれた検体は、まず宮崎県の家畜保健衛生所で他の疾患のスクリーニングをされるようです。
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県の家畜保健衛生所が、例えば、ブルータングだとか、あるいは、(牛)パラインフルエンザだとか、ウイルス性の下痢だとか何とか、イバラキ病だとか、それは全てやったのですが、それは、いずれも陰性だったということで、こうした、口腔内のびらん等については、あと、残るのは、口蹄疫ではないかということで、検体の持ち込みがされたということでございます。
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その結果、PCRの結果、3頭中3頭で陽性を確認したということでございます
本日、宮崎県児湯(こゆ)郡において、川南町の農場13件(合計25,376頭)、高鍋町の農場1件(3,056頭)、及び、新富町の農場1件(22頭)で口蹄疫の疑似患畜を確認しました。
3つの農場から15件の感染が発見されています。同じ農場から13件発見されても、それぞれ1例と数えているのが確認できます。そうなれば4/20時点で口蹄疫発見例は3例になるはずです。ところが宮崎県における口蹄疫疑似患畜情報等にはこうあります。
- 1例目(4/20):口蹄疫の疑似患畜の確認及び口蹄疫防疫対策本部の設置について
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本日未明、宮崎県の農場の飼養牛について、動物衛生研究所で口蹄疫に関する PCR検査(遺伝子検査)を行ったところ、陽性が確認されました。
この陽性が確認された牛については、専門家の意見を聞き、家畜伝染病予防法に基づく殺処分等の防疫措置の対象となる口蹄疫の疑似患畜と判断しました。
- 2例目(4/21):宮崎県における口蹄疫の疑い事例の2例目について
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本日明け方、1例目の農場から南東約3kmの農場の飼養牛について、(独)農研機構動物衛生研究所で口蹄疫についてのPCR検査(遺伝子検査)を行ったところ、陽性を確認しました。
このため、口蹄疫の疑似患畜と判断(2例目)しました。
- 3例目(4/21):宮崎県における口蹄疫の疑い事例の3例目について
赤松大臣
幹事さんに、ちょっと、丁寧に説明いたしますと、まず、今、私どもに届いている報告では、4月9日に、飼っているうちの1頭の口腔内にびらんを確認して、家畜保健衛生所へ、その生産者が通報したと。そうすると、宮崎県の家畜保健衛生所は、立入検査をして、同居牛に異常がないために、経過を観察してみようということになったと。そうしたら、4月16日に、同居牛の、一緒の牛舎に入っている1頭が、発熱をして、食欲がないと、口腔内にびらんを確認したと、別の1頭に、よだれがたれる、流涎と言うのですかね、を確認したと。ただ、これは、発熱はなかったと。それで、17日の昼、家畜保健衛生所による立入検査をして、今度は、よだれをたらしてた、3番目の牛ですね、それに、びらんを確認したということで、19日の午前、家畜保健衛生所において、さっき言ったような、いろいろな病気の検査のPCRを実施したら、いずれも、これは陰性だったということで、その時点で、宮崎県の家畜保健衛生所から、農水省の動物衛生課に連絡があったということで、19日の午後、家畜保健衛生所は、口蹄疫の、病性鑑定のために、検体を採取して、それを、私どもの方に持って来たと。
検体は、病変部、びらん部のぬぐった液が3検体、それから、病変部のところが1検体、それから、血液の採取が16検体、これはもう全頭ですね、そこにいる牛全部、16頭全部の血液の採取、ということを持ち込んだということでございます。
そして、19日の24時に、動物衛生研究所に検体が到着して、直ちに、検査の結果、PCR、実施時間が4、5時間かかりますけれども、これと、抗体ELISA、これは48時間かかる、それから、ウイルスの分離、これには7日間かかるということですが、PCRの結果、20日の早朝、3頭中3頭が陽性だったということを確認をした、というのが経過でございます。
詳しいことは、また、必要であれば、紙にして、報道官から配らせますので、それ参照していただければと思います。 今日の、対策本部では、とりあえず、窓口といいますか、責任の部局は、平尾(消費・安全)局長のところの(大臣官房)審議官(消費・安全局担当)が幹事長としてやると、それから、動物衛生課が、庶務・事務局ということで、やらせていただくということですから、いろいろなご質問等は、そちらの方にしていただければと思います。いいでしょうか。
ここには最初の3頭の説明がなされています。具体的には、
- 4月9日に、飼っているうちの1頭の口腔内にびらんを確認
- 4月16日に、同居牛の、一緒の牛舎に入っている1頭が、発熱をして、食欲がないと、口腔内にびらんを確認
- (4月16日に)別の1頭に、よだれがたれる、流涎と言うのですかね、を確認
今となっては最初が1例であろうが3例であろうが累積例数が増えて実情に影響はありませんが、農林水産省の公式報告としては訂正しておいた方が良さそうに思います。
こちらの方が示唆深いですが、その分推測部分が大きくなり、確定的な話ではありません。
赤松大臣
出荷は一切してません。9日以降、出荷は1頭もしてません。
だから、是非、そういうことは強調していただいて、安全ですよと、病気にかかったあれは一切出てません、ということと、それから、万が一、それを食べたとしても、人体そのものには全く影響はないと、ただ、動物同士の感染力は非常に強いので、さっき言ったように、菌がですね、どんどんと、宮崎県で、それこそ牛肉が全部駄目になっちゃうみたいなことにならないように、是非、厳格に、移動禁止かけて、最小限の被害に止めたいというふうに思っております。
ただ、口蹄疫が発生したということで、対外的には、日本も牛肉を中国(香港等)やアメリカ等に輸出してますけれども、これは輸出停止ということになります、3か月間。そして、もうこれで口蹄疫は落ち着いたと、なくなったということを、相手の国が確認した時点で、また、向こうから言えば、輸入再開ということになるということで。これは、日本も同じ措置をとっておりますので、これはまあ、しょうがないことだと思います。
さらっと読めば常識的な対応に見えるのですが、ここが気になります。
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9日以降、出荷は1頭もしてません
赤松大臣が出荷していないと明言したのは「どこから出荷していない」の疑問が出てきます。考えられるものとして、
- 第1例目が発見された農場から出荷されていない
- 第1例目が発見された農場の「10キロ(メートル)以内は移動制限、それから、あと20キロ(メートル)以内は搬出制限区域」からは出荷されていない
- 宮崎県から出荷されていない
実情のソースが確認できなかったのと、赤松大臣が農林水産大臣として「食の安全」を強調した部分と考えますから、2.に準じる規模の出荷停止が行われたものと仮定します。そういう措置が行なわれた事自体は口蹄疫の重大さを考慮すると悪くはないのですが、その後の経過との辻褄に問題が残ります。
大臣記者会見ソースしか無いので推測するしかないのですが、4/9時点では疑いを持ちながらも経過観察となっています。この状態で地域全体の出荷停止をどういう理由で行なったかです。出荷停止は畜産農家にとって大きな影響を及ぼしますから、明確な理由の説明が必要でしょうし、また法的な根拠も必要です。法的根拠無しの協力であるならより詳しい事情説明が必要です。
またそういう措置を行なうからには宮崎県はもちろんの事、農水省にも連絡が行われそうなものであり、そうであれば4/20の公式報告は寝耳に水の不意討ち状態ではなく、4/9時点から危険信号が送られていたことになります。
これでは根拠に乏しいので口蹄疫に関する特定家畜伝染病防疫指針で確認してみます。まずなんですが、
家畜防疫員は、家畜の所有者、獣医師等から通報があったときは、家畜保健衛生所長に当該通報のあった旨を報告し、アの調書を都道府県畜産主務課にファクシミリ等で送信するとともに、その概要、現地到着予定時刻及びその後の連絡方法について電話で連絡する。
通報があれば家畜防疫員は家畜保健衛生所長に連絡するとともに現場に急行するようです。
家畜保健衛生所長は、当該通報のあった旨の報告を受けた後直ちに家畜防疫員に必要な用具を携行させ現地に急行させるとともに、当該農場に立ち入る家畜防疫員、家畜保健衛生所及び都道府県畜産主務課の間の連絡担当者の設置、現地周辺の家畜の飼養状況等の関連資料の準備を行う。
都道府県の畜産主務課と緊密な連絡を取るとなっています。実はこの先が微妙なんですが、「本病が否定できない場合には、家畜防疫員は次に掲げる対応を行う」とあり具体的には、
適切に病性鑑定用材料を採取し、独立行政法人農業・生物系特定産業技術研究機構動物衛生研究所(以下「動物衛生研究所」という。)に搬送する。
4/9時点では「経過観察」であり動物衛生研究所に検体を送ったのは4/19です。あくまでも指針を読む限りなんですが、怪しめば動物衛生研究所に検体を送って確認すると読めますし、怪しくなければ体制を解除するとなっています。しかし実際のところは、赤松大臣の言葉にあるように都道府県の家畜保健衛生所であれこれスクリーニングした上で、口蹄疫をどうしても否定できないの判断を行なってから動物衛生研究所のPCR検査に回されています。
防疫指針の詳細はリンク先を確認して頂きたいのですが、あくまでも私が読んだ印象ですが、
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第一段階:都道府県内での対応
第二段階:国に報告しての対応
特に次に掲げる場合には、至急、動物衛生課に電話で連絡するとともに、(2)のアの調書をファクシミリ等で送信する。
- 発症家畜が複数である場合
- 発症後数日で群内に広がりがある場合
ただしこれも基本は動物衛生研究所に検体を送った上のものとも考えられます。ここで宮崎県の怠慢の可能性も生じるわけですが、私は漠然と実務上で動物衛生研究所に検体を送るステップに重い判断が課せられている可能性を考えます。ここのステップが軽ければ4/9の時点で、そんなに躊躇する必要がなさそうに思われるからです。それこそ「否定できないから念のため」で検査すれば良いからです。
ここが良く分からないのですが、いつの時点で農水省に報告が行なわれたかです。考えられる時点としては、
- 4/9に防疫調査員が赴いた時点
- 4/16に2頭の異常が確認された時
- 4/19に動物衛生研究所に検体を送付した時
と畜場において異常畜が発見された場合の措置事項
- と畜場での家畜及び畜産物の搬出入を緊急的に停止すること。
- 異常畜の出荷農場を直ちに特定し、(ア)の指導を行うこと。
- 異常畜を発見したと畜場において、と畜検査員と相談の上、と畜場内やと畜場に立ち入った者、車両等の適切な防疫措置を行うこと。また、異常畜以外の搬入されている家畜の出荷農場の特定を行うとともに、当該農場において経過観察等の防疫措置を講じること。
4/9の「経過観察」の時点で出荷停止を行なっても措置として不思議ありませんが、ここも考えてみれば妙で、出荷を止めて経過観察するぐらいなら検体を動物衛生研究所に送付してPCR検査で確認する方が早いとも考えられます。記者会見の赤松大臣の発言から考えられえるのは、
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4/9時点で宮崎県は、疑われれば動物衛生研究所でのPCR検査で確認の防疫指針であるにも関らず、地域の出荷を停止してまで経過観察を行なった。
そうなると4/9時点では宮崎県のみの対応で国には連絡が上らず、早くとも4/16、ないしは4/19に動物衛生研究所に検体が送付された時点で初めて国に連絡が行なわれたのでしょうか。防疫指針をもう少し読み込まないといけないのですが、疑いのどの時点で農水省に報告が為されるかが、どうしてもわかりませんでした。
最後に口蹄疫関連とは別の赤松大臣発言ですが、少し興味を引いたので紹介しておきます。
記者
激甚指定の関係なんですけれども、1か月半という、発生から早い推移だと思うのですが、指定となったことのお考えというか、お聞かせください。あと、対象の区域で、今後、指定になると思うんですが、現場の浜の方では、同じ浜から養殖棚に向かうのに、市町村の区割りで、A町はOKでB町は駄目だということになりはしないかという不安が広がってるんですけれど、その辺について、ちょっと。
赤松大臣おっしゃるとおりです。まず、結論から言えば、もう、我が省は、開かれた農水省、そして、何でも早くやる省ですから、特に、この問題起こった時に、現地からも、いろいろ陳情受けたり、いろいろしましたけれども、とにかく早く結論出して、早く応援できる態勢を作ろうということで、旧来以上に早い取組みだったということを自負をしております。
それから、今ご指摘のとおりに、本来の基準でいくと、例えば、宮城県なんか入らないところ、いっぱい出てきちゃうんですね。それから、いっぱい出てくるんだけれど、ひとつの町だけはいいと、あと周辺は全部駄目みたいなことになると、これは被害額によってとかいうと、個々の漁業者はものすごい打撃受けてても、全体としての被害額が何割に行ってないから駄目ですよ、みたいなことになっちゃうものですから、これは、このままにしちゃ、やっぱりいけないということで、見直しをさせてもらったと。たぶん、これも今日正式に決まったので、これ以降は、具体的に、どこが入るみたいな表を、よろしければ、僕はもう見てますが、お見せできると思うので、水産庁に言っておきますから、見てください。
そうすると、ほぼ、ほとんどのところがカバーできているというふうになりますので、自分のところだけがあれになっちゃたとか、この県だけが外されちゃったとかいうようなことにはなっていないということで、7割弱から9割強に増えたわけですから、本当に軽微なところは、申しわけないけれども、これは、お許しをいただきますけれども、そうでないところは、ほとんど入っているというふうに理解していただいていいんじゃないでしょうか。市町村を、是非、確認してください。そうなっているはずですから。
流れがよくわからないのですが、「激甚指定」は天災による被害の補償問題の事を指すようです。あれは地域指定ですから、従来の基準では市町村の区分で補償が出たり、出なかったりの差が生じる事があるようです。これを改善したと言うお話のようです。全然詳しくない話ですから「そんなものか」にしておきますが、赤松大臣曰く、
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我が省は、開かれた農水省、そして、何でも早くやる省