新型ワクチン卸価格雑考

オリジナルが手許に無いのでハーフドロッポ様のコメント情報に頼ります。ハーフドロッポ様のソースは、

手元の資料は近隣の保健所から発出されたFAXのコピー

こうなっており、さらに、

資料には「2009.10.8確定」との文字が見られます。

そういう資料による卸価格が

製剤 本体費 流通経費 消費税 卸値
1mlバイアル 1725円 1072円 139円 2936円
10mlバイアル 15525円 9000円 1226円 25751円
0.5mlシリンジ 863円 536円 69円 1468円


こう決定されているそうです。接種価格に比べて様々な思いを抱く医師も多いと思いますが、その点は敢えて触れずにワクチン価格に目を向けてみたいと思います。流通価格についてはこれもハーフドロッポ様の情報に10mlバイアルの方の情報として、

  • 流通経費は手元の資料では(販社―卸)と(卸―医療機関)でそれぞれ金額が決まっております。
  • 10mlバイアルについては順に5400円、3600円となっております。

ここでわかる事はワクチンの流通はおそらくですが、

    ワクチンメーカー → 国 → 販売会社 → 卸問屋 → 医療機関
こういう経路になっていると考えられます。新型ワクチンは御存知の通り国が全量買い上げにしているため、国から販売会社に売る形式になっているかと考えられます。この流通価格ですが、4年前に厚労省がインフルエンザワクチン価格を問題視した事があります。一次ソースも、当時の報道記事も無いので当時の私のエントリーから引用します。

製造原価は成人1回分350円だが、これが販売会社に600円で売られ、さらに薬品卸問屋に750円で売られる。薬品問屋は医療機関に1000円で販売する。

この時の話は原価350円のワクチンが流通経路で3倍の1000円に跳ね上がるので、これを改革すればインフルエンザ研究費が捻出できる云々でした。厚労省がその時の話を忘却したのはさておき、「1000円」と言うのは1回分の成人の接種量の価格で、1mlバイアルは2回分で2000円の価格になります。この価格は現在でもほぼ同じなので、1mlバイアルで書き直すと、

メーカー原価 販売会社 卸問屋 医療機関
700円 1200円 1500円 2000円


季節性ワクチンの場合で、原価700円の場合のマージンと卸価格からのマージン比率を計算してみます。

マージン発生場所 マージン マージン比率
メーカー → 販売会社 500円 25%
販売会社 → 卸問屋 300円 15%
卸問屋 → 医療機関 500円 25%


新型ワクチンの場合、国がまずメーカーから買い上げています。ワクチン原価は不明なんですが、仮に国がメーカー・マージンのままで販売会社に売ったとすれば、10mlバイアルの場合

マージン発生場所 マージン マージン比率
メーカー → 国 不明 25%(?)
国 → 販売会社 不明 不明
販売会社 → 卸問屋 5400円 22%
卸問屋 → 医療機関 3600円 14.7%


マージンの比率を計算する時には、消費税は医療機関の最終負担なので卸価格より引いています。もしメーカーのマージンが季節性と同様に25%と仮定するとワクチン原価は10mlバイアルの場合、9394円になります。ここで販売会社と卸問屋の中間マージンの比率は3:2になります。この比率が1mlバイアルでも同じとすると、

マージン発生場所 マージン マージン比率
メーカー → 国 不明 25%(?)
国 → 販売会社 不明 不明
販売会社 → 卸問屋 643円 23.0%
卸問屋 → 医療機関 429円 15.3%


ここでもメーカーのマージンを25%とすると、ワクチン原価は1026円と推測されます。4年前の季節性のワクチン価格調査と較べてみるとおもしろいのですが、全体の流通価格の比率は下がっているようにも見えますが、

ワクチン 販売会社 → 卸問屋 卸問屋 → 医療機関
季節性(1ml) 15.0% 25.0%
新型(1ml) 23.0% 15.3%
新型(10ml) 22.0% 14.7%


ほぼですが、販売会社と卸問屋のマージンの比率が逆転しています。新型ワクチンは現在の情報では、医療機関にメーカーの選択権はほぼなくなっています。つまり販売会社は広告宣伝費の必要が無いことになります。一方で卸問屋の手間はさして変わらないように思います。医療機関からの発注を受けて、そこに届る手間に季節性よりラクになる要素がありません。

4年前の厚労省調査時に較べて、季節性でもマージンの比率は変わってしまったのでしょうか。これも妙なお話で、全体のマージン比率は殆んど変わらないのに、販売会社の比率だけが大きくなるのもおかしな話です。もちろんありえないお話とは言えないですけどね。この辺の内幕は外部からは窺い知れないところです。

それと気になるのが海外産ワクチンの価格です。これを推測するデータとして、10/7付タブロイド紙より、

1人2回接種として4950万人分、購入額は1126億円

これだと輸入ワクチンは4950万人(9900万接種)分で1126億円。1回接種分あたり1137円、1人分(1mlバイアル)で2274円ぐらいの計算になります。そうなると同様の中間マージンが発生するとして計算すれば卸価格は、

    3691円+消費税
だいたい3800円ぐらいが1mlバイアル製剤の卸価格になりそうです。もちろんそうなるかどうかは、蓋を開けてみないと誰にもわからない話であることは強調しておきます。